子どもの質問ぜめにどう答える?[教えて!親野先生]
子どもがしょっちゅう「なぜ○○なの?」「どうして○○?」と聞いてきます。できるだけ付き合うようにしているのですが、あまりにもしつこいときはイライラしてきます。(野菜サラダ さん:年少女子)
親野先生からのアドバイス
野菜サラダさん、拝読しました。
子どものしつこい質問ぜめの相手をするのは確かに大変ですね。
「どうして花はいいにおいがするの?」「なぜテレビは映るの?」「なんで月は光るの?」など、とどまるところを知りません。
これに対して保護者はどうするべきでしょうか? 正論としては、次のようなものがあります。
(1)これは探究心の表れだから、いい加減にしないで毎回きちんと対応しましょう
(2)すぐ保護者の考えや答えを教えてしまうのではなく、子どもに考えさせたり調べさせたりしましょう
もちろん、できるだけこのようにしてあげてほしいと思います。
でも、体験した人はわかると思いますが、現実問題として、あまりにもしつこく激しい質問ぜめのとき、そのすべてに正論どおりの完璧な対応をしようとしたら保護者のほうがまいってしまいます。
質問には完璧な対応をしたけれど、それでイライラしてしまって別のことで子どもを叱りつけるなどということになっては意味がありません。
ですから、できるだけ付き合うようにしてあげてほしいのは山々ですが、子どもの真剣度や質問の内容によって軽重をつけるということでもいいと思います。
たとえば、実のある質問ならまだしも、どうでもいいと思えることでもしつこく聞いてくることがあります。
そういうときは、たとえば次のような会話になりがちです。
「今日お買い物する?」「するよ」「なんでするの?」「食べる物がないから」「なんで食べる物がないの?」「みんなが食べたから」「なんでみんなが食べるの?」「お腹が空くから」「なんでお腹が空くの?」「うるさい! いい加減にしなさい! いちいちくだらないこと聞くんじゃありません!」
このように、イライラして叱りつけるのは一番よくないですね。
これだと、保護者に質問すること自体が怖くなってしまいますから、絶対避けましょう。叱りつけるくらいだったら、いっそこちらから話題を変えてみるのもいいと思います。
たとえば、「ねえ、今日は幼稚園で何をしたの?」とか「あ、そうだ。保育園の○○くんはこのごろどう?」などと聞いてみれば、話題が変えられます。
しかも、これなら子どもが話す立場になります。
子どもが喜んで話してくれそうなことに変えることができればベストです。
でも、ベストなことでなくてもいいので、とにかく話題を変えてみましょう。
子どもは、何でもいいからお母さん・お父さんとの会話を楽しみたくて、そのために「なんで?」を繰り返しているという面もあると思いますので、話題を変えても楽しい会話が続けばいいのです。
あるいは、いっそのこと根比べをするつもりで、また、アスリートの気分で自分の限界に挑戦するつもりで、徹底的に付き合うというのもあっていいと思います。忍耐力が養われること間違いなしです。人間として一回り大きくなれるよい機会かもしれません。
あるいは、もう頭が回らなくなってきたら、「なるほど、不思議だねえ」「なんでかねえ」「よく気が付いたね」などと一応受け止めてから受け流すのもあっていいでしょう。
または、「あー、ごめんね、もう無理。これ以上考えられない。考えすぎて頭がパンクしそう。あと5秒でパンクしまーす。1、2、3、4、5。パーン」などと笑いでごまかしながら打ち切ったりするのもあっていいでしょう。
いずれにしても、イライラして叱りつけるよりはるかにマシです。
ところで、もっと実のある質問の場合はどうしたらいいでしょうか?
たとえば、ただ会話を続けるためということではない場面で、子どもがユリの花のにおいをかぎながら「どうしてユリの花はいいにおいがするの?」と聞いてきたとします。
私は、こういうとき理由について話す前に、まずは「本当だね。とてもいいにおいがするね。ああ、いいにおいだ。幸せな気持ちになるね」と驚いてあげてほしいと思います。
もちろん、本当に心からそのにおいを味わいながらです。なぜなら、子どもはいいにおいがする理由を知りたいという以前に、ユリがとってもいいにおいのすることを発見して、それに驚いているからです。
本当はその驚きこそが一番に表現したい中身なのです。ですから、その驚きを一緒に味わい、その驚きに共感して、一緒に驚いてあげてほしいのです。こういうことは、子どもの感性を育むうえで極めて大切なことです。
子どもにとって世界は驚きに満ちています。
子どもが初めてユリのにおいをかいだとき、そのにおいの新鮮さは大人が感じるものとまるで違います。
それは生涯二度と味わえないくらい新鮮なものなのです。ですから、子どもは大いに驚き、その驚きが「なんで?」という表現になるのです。
大人はもう知識として知っています。ですから、普通はにおいをかごうともしません。でも、そこでもう一度子どもに戻って、生まれて初めてユリの花のにおいをかぐつもりでかいでみてください。
本当に幸せな気持ちになれますよ。
そして、もうずいぶん長い間本当にはこのにおいをかいだことがなかったことに気付くでしょう。子育てをしながら、子どもに導かれながら、もう一度この世界を味わい直すことができるのです。
次に、冒頭に書いた正論の「(2)すぐ保護者の考えや答えを教えてしまうのではなく、子どもに考えさせたり調べさせたりしましょう」について考えてみます。
保護者の考えや答えを教えるか?
それとも、教えないで子どもに考えさせたり調べさせたりするか?
迷うところですね。
いずれにしても、ここで一番大事なのは子どもの追究心が育つように持っていくことですが、それを前面に押し出して何でもかんでも常に「自分で考えてごらん。自分で調べてみよう」と返していると逆効果です。
これだと、そもそも会話が盛り上がらないので、子どもはつまらなく感じます。それに何のヒントも得られませんので、子どものちょっとした好奇心はすぐにしぼんでしまいます。
ですから、ときには保護者の考えや答えを教えたり、ときには子どもに「どう思う?」と考えさせたり、ときには図鑑などで一緒に調べたり、ということでいいのです。
質問の内容、子どもの関心の度合い、年齢や理解度などによって軽重をつけることも大事です。そして、軽重の≪重≫として扱うときは、ぜひ探究を応援したり一緒に探究したりしてあげてください。
たとえば、「なんでテントウムシは飛べるの?」という質問だったら、一緒に図鑑や科学写真の本などで調べてあげましょう。こういった本ですぐ調べられる環境があると、子どもの探究心は大いに伸びます。
または、ネットで「テントウムシ 飛ぶ 画像(または動画)」で検索して、テントウムシが飛ぶときの画像や動画を見せてあげるのもいいですね。
ネット上にはテントウムシが飛び立つ瞬間の動画が複数あります。赤くて硬い羽が左右に割れて、中から薄い羽が2枚出てきて飛び立つ瞬間の動画で、一目瞭然でとてもわかりやすいです。
また、できたら実際にテントウムシが飛ぶところを見せてあげられればさらにいいですね。本物体験に勝るものはありません。
このように、図鑑などの本をはじめ、子どもの探究心を満たせる環境をつくってあげて、そして保護者ができるだけ上手に関わってあげてください。そうすれば、子どもは探究することの喜びを覚えますし、その方法も身に付けられます。
同時に、課題設定力・理解力・思考力・情報処理力・記憶力・読解力・表現力など、いわゆる勉強に必要な能力が全部ついていきます。
「勉強しなさい」と言われなくても喜んで勉強する子になります。小さいときからの耕しが大事なのです。
私ができる範囲で、精いっぱい提案させていただきました。
少しでもご参考になれば幸いです。
皆さんに幸多かれとお祈り申し上げます。
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