大学生活、経済的には依然大変? ‐渡辺敦司‐
受験生のお子さんを抱えるご家庭では、残念ながら浪人を決めた受験生を除いて、ほとんど進学先が決まったころと思います。入学金を含め、さぞ教育費の捻出に苦労されたことでしょう。しかし、これで安心はできません。4年間、保護者はもとより学生自身も大変な状況は続くからです。
独立行政法人日本学生支援機構(JASSO)が隔年で実施している「学生生活調査」によると、学費と生活費を合わせた「学生生活費」は昼間部の学部学生で過去5回(10年)連続で減少していたのですが、2012(平成24)年度は2年前に比べ2.7%(4万9,600円)増の188万100円になりました。一方で学生の収入額は0.4%(8,800円)増の199万7,300円で、増えたとはいえ学生生活費の伸びには及びません。依然としてやり繰りは大変でしょう。
しかも収入額に占める割合を見ると、「家庭からの給付」が0.9ポイント減の60.8%、「奨学金」が0.2ポイント増の20.5%、「アルバイト」が0.8ポイント増の16.2%と、仕送りよりアルバイトなど学生自身で何とかする割合が高まっています。実際、不安や悩み事を尋ねても「少しある」「大いにある」の合計は「経済的問題」が51.9%と半数を超え、「学業成績」(50.9%)をも上回っています。
「生活のためにバイトを掛け持ちしている学生が増えてきた」とは最近、大学関係者からよく聞く話です。しかも今は保護者世代のように講義に出席していれば単位が取れるような時代ではなくなりつつあり、教室外での学習はもとより、校外でのさまざまな活動に参加することも増えています。授業時間以外はバイトに費やさなければならない生活では、卒業もおぼつかなくなるのではと心配になります。
一方、全国大学生活協同組合連合会が毎年実施している「学生生活実態調査」の2013(平成25)年度結果によると、下宿生の1か月の仕送り額が前年度比3.8%(2,670円)増の7万2,280円と、7年ぶりに増加しました。仕送り額が10万円以上という学生も、2年連続で増加。仕送りなしで生活する下宿生の割合も「リーマンショック」後の2009(平成21)年以降10%を超えていましたが、今回は8.8%に減っています。
JASSO調査は年末に政権交代のあった年度が対象で、全国大学生協連の調査はその翌年(10~11月実施)ですから、さてはアベノミクス効果で大学生を持つ家庭も楽になったのか……と思いたいところですが、13(平成25)年度のアルバイト就労率は下宿生でも2.7ポイント増加しながら、収入額は前年度と同じ月2万3,100円です。
以前の記事で、2013(平成25)年度入学生で教育ローン利用世帯の状況が依然として厳しいことを紹介しました。これを併せて考えると、教育費支出に比較的余裕ができた家庭と、学生本人がバイトしなければ大学生活が続けられない家庭との二極化が進んでいるのではないか……と見るのは、心配のし過ぎでしょうか。