楽勉をやりたがりません[教えて!親野先生]

【質問】

 

親野先生の楽勉の考え方に感銘を受けた夫が、学習マンガを10冊買ってきました。
でも、子どもは一、二冊読んだだけであとは読もうとしません。それで、夫は「読まないともう本を買ってやらないぞ」みたいなことを冗談半分ですが言い出しました。それもどうかと思うのですが……。(ワンポイント さん:小学3年生男子)


楽勉をやりたがりません[教えて!親野先生]

親野先生からのアドバイス

ワンポイントさん、拝読いたしました。

こういう話が私の耳にもけっこう入ってきます。
あるお父さんは小学5年生の息子に電気工作のキットを買ってきました。でも、息子は箱を開けて中身を見ただけで拒絶反応を示しました。お父さんは、「せっかく楽勉で電気の勉強を得意にしてやろうと思ったのに」と嘆いています。
あるお母さんは、子どもを本好きにしようと1日おきに図書館に連れて行きました。子どもは近所の友達と遊びたいという気持ちが強かったのですが……。
お母さんはそれも知っていましたが、1日おきなら友達とも1日おきに遊べるから大丈夫と思っていたのです。その結果、子どもは本そのものが嫌いになってしまいました。

これらの例は、いずれも親のほうにちょっとした勘違いがあると思います。
そもそも、楽勉とは生活や遊びの中で楽しみながら知的に鍛えることです。楽勉の「楽」には、楽しいという意味と「らく」という意味があります。
そして、その主体は子どもです。つまり、子ども本人が楽しくて「らく」と心から感じていることが絶対条件です。親が、「子どもも楽しいだろう。『らく』だろう」と思っても本人がそう感じなければ楽勉ではありません。

それでも親が強制すると、もはやそれは楽勉でなく苦勉です。苦しくて苦労してやる苦勉です。そして、苦勉には弊害がたくさんあります。
歴史の学習マンガを読みたくない子に、無理に読ませれば歴史が嫌いになります。電気工作を無理にやらせれば電気の勉強が嫌いになります。友達と遊びたい子を無理に図書館に連れて行けば本が嫌いになります。当たり前のことです。

子ども本人が心から楽しくて「らく」と感じるという、楽勉の絶対条件を常に頭に入れておいてください。
もちろん、親が「この楽勉はよさそう」「これは効果がありそう」「これをやらせてみたい」というものを紹介したりトライさせてあげたりするのは良いことです。良いどころか、ぜひやってほしいと思います。
でも強制はいけない、ということを言いたいわけです。この辺りのバランスが必要です。

我が子に良さそうな楽勉を紹介したりトライさせてあげたりするのは、大人である親にしかできません。子どもが自分でそれを見つけるのは無理です。子どもの世界は非常に狭いものであり、身の回りにあるものしか目に入りません。ですから、自分から世界を広げることは難しいのです。
それに対して、大人はいろいろな情報を得ることができます。メールマガジン、ブログ、本、雑誌、新聞、書店、おもちゃ屋さん、専門家やママ友達の話などから楽勉に関するいろいろな情報を得ることができます。
ですから、親が紹介したりトライさせてあげたりすることは大切なことです。それによって、今までまったく縁がなかったことに興味を持ったりいろいろな知識が増えたりします。子どもの新しい可能性が開けるのです。

でも、このとき大事なことを忘れないでほしいのです。それは子どもの反応をよく見て理解し、子どもの気持ちを尊重するということです。
もし嫌がるようなら無理強いはやめましょう。また、あまり乗り気ではなく渋々やっているというときも要注意です。というのも、子どもは常に親に気を使っていて、やはり親の喜ぶ顔を見たいという気持ちがあるからです。
もちろん、最初は嫌がっていても、やっているうちに好きになってくることもないわけではありません。でも、そうならないこともあります。親がいくら良いと思っていることでも、いさぎよく諦めることが必要な場合もあるのです。

この辺はマニュアル化できないものです。
ですから、常に子どもの気持ちを思いやりながら進めることが大切なのです。
親の思い込みよりも、子どもの気持ちを大切にしてください。

このことは楽勉だけでなく習い事などにも当てはまります。子ども本人が楽しくて「らく」と感じて、自ら進んでどんどんやるのが最高の状態です。楽勉でも習い事でも同じです。
これなら毎日楽しいですし良い結果も出ます。弊害もありません。弊害がないということはとても大切なことです。ぜひ、このことを頭に入れておいてほしいと思います。

ところで、楽勉と各種の早期教育の違いにも触れておきたいと思います。最も大きな違いは、早期教育にはカリキュラムがあり、楽勉にはそれがないということです。そして、カリキュラムは必ず何らかの理論に基づいてつくられています。世の中にはいろいろな早期教育がありますが、この点ではすべて共通しています。
そして、これが早期教育の長所であり短所でもあります。カリキュラムがあることで系統立てた指導が可能になります。ですから、うまくいけば良い結果が得られます。
また、カリキュラムのとおりにやればよいわけで、親がいちいち考えなくてもよいということになります。
でも、常に長所と短所は表と裏の関係です。指導者や親はどうしてもカリキュラムを優先するようになるので、子どもの気持ちや実態は二の次になりがちです。カリキュラムがあるので、子どもが嫌がっても進めなくてはならないと考えがちです。そして、指導者も親もそれが子どものためだと自らに言い聞かせます。そして、その結果として弊害が出ることが多いのです。

嫌なのにやらされていることがあると、それが子どもにとっての大きなストレスになります。それで気持ちが荒れたり、他のことにもやる気が出なくなったりします。また、カリキュラムどおりに行かないことで叱られて、自信をなくす子もたくさんいます。
また、カリキュラムが優先なので子どもは受け身になります。つまり、やらされる状態です。やりたいことよりもやらされることが多い子は、小さいときから一種諦めの境地に至り、無力感を感じて受け身的な生き方が身に付きます。
これによって、がまんする力、つまり忍耐力がつくと考える人もいます。でも、本当はその反対に無気力になることが多いのです。これは何においても言えることです。

たとえば、ある男性は小さいころから強制的にバイオリンを習わされていました。バイオリンのレッスンが土日にあったので、毎週木曜日くらいから暗い気持ちになって何もやる気になれなかったそうです。成人した今では、クラシック音楽自体が嫌いだそうです。
また、早期教育で次から次へと瞬間的に変わるカードを連続的に見せられていた子が、食欲をなくしたり無気力になったりしたという研究報告もあります。早期教育のCDやDVDを無理に視聴させられた子どもについても、同じような報告があります。
これらのような無理なインプットは、子どもの脳に過重な負担を強いるとも言われています。
また、ある人は、小学3年生のとき父親に強制されて野球のスポーツ少年団に入れられました。嫌で嫌でたまらなかったのですが、やめさせてもらえず4年間がまんしました。中学校では、前からやりたかった吹奏楽の部活に入り野球とは一切縁を切りました。成人した今でも、テレビで野球の話題になるとすぐチャンネルを変えるそうです。
こういう例は至る所にあります。強制の内容や年齢が違っても本質的には同じことなのです。

そして、早期教育のようなカリキュラムのない楽勉においても、親が強制すれば同じことになるのです。
楽勉においては、子ども本人が楽しくて「らく」と心から感じていることが絶対条件です。これに徹する限り弊害はありません。

私ができる範囲で、精いっぱい提案させていただきました。
少しでもご参考になれば幸いです。
皆さんに幸多かれとお祈り申し上げます。

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プロフィール

親野智可等

親野智可等

教育評論家。23年間の教員生活のなかで、親が子どもに与える影響力の大きさを痛感。その経験をメールマガジンなど、メディアで発表。全国の小学校や、幼稚園・保育園などからの講演に引っ張りだこの日々。

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