夏休みを有意義に過ごすには?【前編】[教えて!親野先生]

今週の相談

 

子どもが有意義な夏休みを過ごせるようにするには、どうしたらいいでしょうか? 去年も一昨年も、ダラダラしているのを見て叱ることが多かったです。宿題以外にも勉強させたいのですが、いつも宿題すらイヤイヤやる状態です。子どもがやる気を持って有意義な夏休みを過ごせるようにするには、どうしたらいいでしょうか?(ベスさん)


夏休みを有意義に過ごすには?【前編】[教えて!親野先生]

 

【親野先生のアドバイス】

ベスさん、拝読いたしました。

子どもにとって夏休みはうれしいものですが、親にとってはそうでもありませんよね。
特に専業主婦のお母さんのほとんどは、苦痛に感じていると思います。
ましてや、「有意義にしよう」という気持ちが強いとなおさらです。

私は、あまり「有意義にしよう」と考えないほうがいいと思います。
というのも、そもそも夏休みは休みだからです。休みは休むためのものですから、「十分休めた」と感じられるようにすることが大切なのではないでしょうか?

それで初めて気持ちも頭もリフレッシュして、次にがんばることができるというものです。
それがメリハリというものです。
「よく射る弓はよく弛ませなければならない」という格言もあります。
いつもいつも張りつめていたのでは、伸びきったゴムのようになってしまいます。子どものころからずっとがんばりどおしでは、大人になるころには燃え尽きてしまいます。
自分のやりたいことならまだしも、親の望むことをがんばり続けるというのでは、そうなる可能性は極めて高いと言えます。

以前、テレビでドイツの子どもたちの夏休みを紹介する番組を見たことがありますが、本当にうらやましく感じました。夏休みの間、子どもたちは一切勉強しません。一切です!
もちろん、学校からの宿題はまったくありません。
夏休みの友(敵?)という問題集もなければ、日記も自由研究も読書感想文もありません。
プリントも書き取りも計算ドリルもありません。

宿題がないから家で親が勉強させるのかというと、それもありません。
テレビのリポーターが、一人のお母さんにそういう質問をしました。質問されたお母さんは、初め質問の意味すらわからなかったようです。
やっと意味がわかって答えてくれたところによると、「そういう親は見たことも聞いたこともない」「あり得ない」とのことでした。
なぜかというと、家族みんなで約1カ月間のバカンスに出かけるのが普通だからです。 特権階級でなく、ごく一般的な家庭がそうなのです。
大人が休むのだから子どもも休んで当然というわけで、勉強など一切しません。

では、バカンス先で何をするかというと、もちろんバカンスです。バカンスですから、みんな自分が本当にやりたいことをやるのです。
大人はひたすらボーッとする人も多いようです。
子どもは、もちろん、遊びまくったり自分が興味あることをやりたいだけやったりします。

「バカンス」とはフランス語で、もともとは「真空」「空白」「何もない」「空っぽ」という意味でした。
ですから、頭を空っぽにして、何もしないでボーッとするのが一番正しいと考えている人が多いようです。
ドイツだけでなく、ヨーロッパはどこも同じような過ごし方をするようです。フランスは、もっと徹底しているという話も聞いたことがあります。
夏休みだけでなく、土日についてもこれと同じ考え方です。ですから、土日にも宿題などないのです。

私は、このように、休みは休みとして取ることが大事だと思います。
それによって、次に新しい気持ちでがんばることができるわけですから。
それが休みの意義なのですから。
もちろん、ドイツにもフランスにもそれぞれの問題はありますから、すべていいというわけではありません。
でも、休みの過ごし方については、私たちが学ぶべきことはとてもたくさんあるようです。

現在の日本の子どもたちには、休みがほとんどありません。月曜日から金曜日まで、学校や塾や習い事や宿題でいっぱいです。土日も、塾や習い事や宿題でいっぱいです。夏休みもそうです。
このうえ、さらに、学校の授業時間を増やす決定がなされているのですからたまりません。
大人の価値観から見た「有意義な時間」で、子どもたちの時間は埋め尽くされています。
特に、首都圏や地方の都市部などでこの傾向が顕著です。
子どもが頭を空っぽにしてボーッとしたり、本当に自分がやりたいことに熱中したりする時間などありません。

「賢い子」は、親が望むものをいつの間にか自分の望みと思い込むことで、何とか生き抜いていこうとしています。
でも、その反動はいつか出ます。
「正直な子」は、ダラダラしたり自分のやりたいことをやったりして親を困らせます。
でも、そういう子のほうが健全なのではないでしょうか?

日本も、以前はこれほど子どもが忙しい国ではありませんでした。
私たちが子どものころは、今よりもっとたくさん子どもの自由時間がありました。私が教師になりたてのころも、今ほどではありませんでした。
今の日本の子どもたちは、とにかく忙しすぎです。そのうえ、さらに「有意義な夏休み」を求めてしまうのが、日本の親や教師なのです。

というより、日本の社会そのものがそうなのですから、親や教師だけの責任ではないのです。
私たちの社会、生き方や働き方、人生や生活のすべてが、休むことのない駆け足状態です。
時間を有意義に使うこと、ムダなことはしないこと、効率よく成果を上げること、数字を上げること、経済的に豊かになること、よい立場につくこと、これらが最優先されています。

その基本にあるのが、競争に勝ちたい、人に後れを取りたくない、負けたくない、こういう価値観です。意識していなくても、この価値観が根底にあるのです。
この価値観があまりにも当然のごとく根底に居座っているので、自分たちがこの価値観に突き動かされているということに気付いてすらいないのです。
この価値観は、他人の評価を基準にするものです。
他人が基準なので、自分らしい生き方ができないのです。
社会がそうであり親がそうなので、当然子どもたちもそうさせられます。

でも、これでいいのでしょうか?
「本当に自分がやりたいことは何か?」「本当の幸せとは何か?」「本当の豊かさとは何か?」「自分はどういう人生を生きたいのか?」
私たちは、こういうことをもっと真剣に考える必要があると思います。
それは、自分の人生を自分の価値観で自分らしく生きることです。
私は、今、本当にこういうことを真剣に考えてみることが必要だと思います。
特に、子育て中の親たちには必要だと思います。
それでないと、自分ばかりか子どもも他人の基準で生きる人生になってしまいます。

年端もいかない時から受験の準備に膨大な時間を費やし、与えられた過去問をたくさん解き続け、複雑怪奇なペーパー問題に精通し……。
頭を空っぽにして思い切り遊んだ経験もなく、自分のやりたいことに時間を忘れて熱中したこともなく、偏差値の高い学校を目指し、ステータスの高い仕事を目指し……。
その挙げ句に、「さて、これから自分はいったい何をしたらいいのか?」「特にやりたいこともないから、取りあえず与えられたレールに乗っていこう」となり……。
職場では職場の価値観に影響され「○歳までには係長に」と思い込み、結婚して子どもができれば「○○幼稚園に入れなければ」と思い込み……。

こういう人はけっこういます。
もしかしたら、これはあなたのことではないですか?

いったい誰の人生なのでしょう?

自分の人生は自分のものであり、子どもの人生は子どものものです。
私は、親がこの真実をもっと真剣に受け止め、心から理解する必要があると思います。

……この続きは次回で紹介します。



「共感力」で決まる!(単行本)親野智可等(著) 講談社 ISBN-10: 4062152797
【お知らせ】
こちらの親野先生のコーナーから単行本第三弾が誕生!

大人気のこちらのコーナー、[教えて! 親野先生]が、本になりました。『「共感力」で決まる!』です。子育てが激変する親子関係の新ルールが相談例をもとにわかりやすく提案されています。

プロフィール

親野智可等

親野智可等

教育評論家。23年間の教員生活のなかで、親が子どもに与える影響力の大きさを痛感。その経験をメールマガジンなど、メディアで発表。全国の小学校や、幼稚園・保育園などからの講演に引っ張りだこの日々。

おすすめトピックス

子育て・教育Q&A