子どもに物を買い与え過ぎる親がいて、心配です【前編】[教えて!親野先生]

今週の相談

 

~今回は、親野先生が今までにいろいろなかたからご相談を受けたなかでとくに気になる事例を総合した問題について、ご回答をいただきました~

 

私の姪には小学4年生の娘がいます。心配なのは、母親(姪)が娘の欲しがる物をすぐに買い与えてしまうことです。バッグ、人形、カードゲーム、帽子……。買い与えたものが家の中にごろごろあります。最近、ろくにやりもしないのにボウリングのマイボールを買ってやったので驚きました。これでは、がまんできない人間になってしまうのではないかと心配です。
「お金の余裕はなくて生活自体厳しいはずなのに、どうしてこんなに買い与えるのか」と姪に聞いたら、「たしかに、このままではいけないと思ってはいる。でも、自分は子どものころ欲しい物をまったく買ってもらえなくて悲しい思いをした。友達がいろいろなおもちゃや人形を持っているのが、すごくうらやましかった。我が子にはそういう思いをさせたくないという気持ちがある。それに、小さいころからこうやってきたので、今さら急に変えるのは難しい」という返事でした。親野先生はどうお考えですか?(姪の伯母 さん)


子どもに物を買い与え過ぎる親がいて、心配です【前編】[教えて!親野先生]

 

【親野先生のアドバイス】


姪の伯母さん、拝読いたしました。

何ごとも、極端なことには問題が生じてきます。
この場合で言えば、買わなさ過ぎも買い過ぎもよくないということです。

まず、前者についてですが、前者の買わなさ過ぎの場合にも問題が生じてきます。
現に、姪御さんは「子どものころ欲しい物をまったく買ってもらえなくて悲しい思いをした」とのことです。
やはりこういう状態だと、心の中で満たされない部分が出てくることはあるわけです。

一種の飢えです。

とは言っても、親子の信頼関係が良くて親の愛情を十分実感しているとか、物やお金と違うもっと別のことで子どもの気持ちが十分満たされているとかいう場合は、その限りではありません。
つまり、親子関係の在り方や子どもの精神的満足度によっても変わってくるのです。
ですから、一概には言えない難しさもあるわけです。

でも、それらも十分でないうえに、欲しい物もまったく買ってもらえないという状態では、親からの愛情不足を感じるということになります。

親子関係の在り方によっては、「物を買ってもらえないのは、自分が愛されていないからではないか」と感じる可能性もあります。
子ども時代をこういう状態で過ごすと、かえって物やお金に対する執着心が強くなる可能性もあります。

大人になって自由に使えるお金が手に入ると、やたらに物を買うということになるかもしれません。
お金がない時は借金しても買う、ということになる可能性もあります。

また、物やお金をあげたりもらったりすることこそ愛情の証明だ、と感じるようになるかもしれません。
もちろん、それもある程度は真実ですが、そういう意識があまりに強いといろいろなところに問題が出てきてしまいます。
姪御さんにも、そういう意識があるのかもしれません。

ここまで、買わなさ過ぎの場合を見てきました。
次は買い過ぎの場合です。

欲しがる物を何でも買い与えていると、「がまんできない人間になってしまうのではないか」と姪の伯母さんは心配していらっしゃいます。
そういう可能性は、かなりあると思います。

自分が欲しいと言った時親がすぐに買ってくれるという状態では、がまんする必要がないわけです。
がまんする必要がなければ、がまんする力は身に付きません。
つまり、欲望をコントロールする力が身に付かないということです。

それに、物を手に入れるための苦労をしていないので物のありがたみもわかりません。

物を買うためにはお金が必要で、それを稼ぐのは本当に大変なことですが、そのこともまるでわからないわけです。

お金を稼ぐ大変さもわからず、物のありがたみもわからず、欲望をコントロールする力も身に付かないまま大人になれば、どうなるでしょう?

生活が破綻(はたん)するのは明らかです。
生活が破綻しても、生きていくにはお金が必要です。
それに、「お金がないからがまんする」というコントロールもできないので、「お金がなくても物は買う」という状態になります。
そこで借金に頼ることになります。
気が付いたら、あちらこちらに借金があるという状態になる可能性もあるわけです。

もちろん、必ずこうなると断言することはできません。
子どものころから物質的に恵まれていた人は、お金や物への執着心が強くならなくて済むということもあり得ます。

つまり、お金や物に恵まれていてがまんした経験がない場合でも、親子の信頼関係が良くて親の愛情を十分実感しているとか、物やお金と違うもっと別のことでも子どもの気持ちが十分満たされているとか、そういう状態なら特に問題なく成長すると思います。
要するに、親子関係の在り方や子どもの精神的満足度によっても変わってくるということです。
(子どもの精神的満足度とは、何か熱中することがあって満足している、それによって自分に自信も持てている、なども含みます)。

こういう場合は、そもそも子どもが親に「あれ買って、これ買って」とおねだりしないものです。
というのも、もう十分満たされているからです。
ご相談のケースのように、子どもがかなりおねだりする場合は、やはり心配と言わざるを得ません。

このようなわけで、買い過ぎも買わなさ過ぎもともによくないのです。

……この続きは次回で紹介します。



「共感力」で決まる!(単行本)親野智可等(著) 講談社 ISBN-10: 4062152797
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プロフィール


親野智可等
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・『子育て365日 親の不安がスーッと消える言葉集』(ダイヤモンド社)
・『反抗期まるごと解決BOOK』(日東書院本社)


長年の教師経験をもとに勉強法・家庭教育・親子関係などについて具体的に提案。
Instagram、Threads、X、YouTube「親力チャンネル」、Blog「親力講座」、メルマガなどで発信中。ドラゴン桜の指南役としても著名。最新刊『子育て365日』などベストセラー多数。全国各地の教育講演会でも大人気。詳細は「親力」で検索

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