中学受験させたいが子どもにやる気がない【前編】[教えて!親野先生]

今週の相談

 

いつも先生の寛大な心に感銘を受けております。今回は我が家の小4男の子の件で相談させてください。3年の終わりころから中学受験を目標に塾に通っています。志望校も既に決まっており、学校見学をしてさらに行く気になってはいるのですが、勉強をしていても、わからないとそのままで、平気な顔で手を付けません。毎週出される問題の答え合わせは母がしていますが、「バツの所をやり直せ!」と言ってもそのまま。塾の先生も主人も私も「できなかったら次にできるように練習したら良いよ」とアドバイスしても「うん、うん」と口だけで、実際はなかなか行動に移せません。昨日も、問題の考え方を教えてあげてもあまのじゃくで言われた事をやりません。素直に人の話を聞けないのは育て方が曲がっていたのでしょうか? もう、すっかり親もやる気がなくなってきてしまいました。中学受験しなくても高校受験はあるし絶対逃げられないのに、「めんどうくさい」と、何でも簡単に処置している我が子に対してどうしたら良いかわからなくなってしまいました。先生教えてください。(泣きたいっ子 さん)

 

【親野先生のアドバイス】

泣きたいっ子さん、拝読いたしました。

中学受験の異常なブームのなかで、「泣きたいっ子」さんと同じような状況になっている親子がかなりたくさんいると考えられます。
中には、もっとつらい状況になっている親子もたくさんいるようです。
もっとひどく叱りつけて暴言を浴びせたり、子どもを叩いたりというケースです。

雑誌・新聞・テレビなどのマスメディアが取り上げないので、表面に出てこないだけです。
これらのマスメディアが取り上げるのは、中学受験に起因する大きな事件が起きてしまった時だけです。それぞれの家庭という密室の中で問題が密かに進んでいる段階では、取り上げられることはないのです。
でも、水面下で事態は深刻化しているのです。

親がいくら言っても子どもが勉強しない、子どものやる気が出てこない、なかなか偏差値が上がらない、ライバルは伸びているのに我が子は成績が下がっている、志望校は無理だと言われてしまった……。

こういう状況のなかで、感情的に叱りつけたり暴言をぶつけたりしてしまう親がたくさんいるのです。
頭に来て子どもを家の外に追い出し、しばらく家に入れなかったという親もいます。
「勉強しないなら、こんなのいらないね」と言って、机の上の勉強道具をゴミ箱に捨ててしまった親もいます。
成績が上がらないからといって、子どもが楽しみにしていた夏休みの旅行を取りやめにしてしまった親もいます。
親に「この中学校に入れなければ、うちの子じゃない」と言われて、うつ状態になってしまった子どももいます。
中には、子どもの態度に切れて叩いてしまったという親もたくさんいるのです。

「受験までがんばって勉強するって約束したでしょ! やる、やるって、口ばっかりじゃダメでしょ」
「これから塾のテキストを毎日2時間勉強するって、あなた自分で言ったよね。やるって言ったことはやりなさいよ。毎日サボってばっかりじゃないの」
「間違えたところをやり直すことで実力がつくんだって、塾の先生も言ったでしょ。あんたは間違えっぱなしだから、○○君に負けっぱなしなんだよ!」
「○○中学校に絶対行くって、説明会の時にあなた言ったでしょ! 言うだけで努力しなきゃ行けるわけないでしょ」
「あなたのために言ってるのよ。将来のことを考えたら、今がんばらないでどうするの!」

みなさんの中に、このような言葉をぶつけてしまっているかたはいませんか?
少しでも心当たりのある方々は、これからは本当に気を付けてください。

小学生の後半は、その後の親子関係の在り方を決めるとても大切な時期です。
中学生になる前の、つまり本格的な思春期の反抗期を迎える前のこの時期は、子どもが本当に子どもらしい子どもでいる最後の時期だからです。
つまり、親からの働きかけに対して子どもが素直に反応してくれる最後の時期なのです。

この時期に、親子のいい関係を作り信頼関係を確かなものにしておくか、それとも台無しにしてしまうかは極めて大きなわかれ目です。

このあとは、思春期の反抗期になり、親の言動に対して客観的で冷めた見方をするようになります。
それに、子どもにとっては、親との関係よりも友達関係が最優先になります。
つまり、親が相手にされなくなってしまうのです。
ですから、親のほうから働きかけていい関係を作りたいと思ってもなかなか難しい時期になってしまうのです。

このようなわけで、小学生の後半は、親子関係にとってとても大切な時期なのです。
その時、過度な要求をしたり、無理なスケジュールで勉強させたり、叱責したり暴言をぶつけたり、さらには手を上げてしまったりということは、非常にマイナスです。
少しでも心当たりのある方々は、本当に気を付けてください。

さて、泣きたいっ子さんの場合、お子さんは小学4年生とのことです。
この時期は、発達段階から見ても遊びたい盛りの真っ最中です。
友達とつるんでいたずらをしたり、秘密基地を作ったり、自然の中で遊び回ったり、とにかく、自分でやりたいことを見付けて時間を忘れて没頭する、そういう時期なのです。
いわゆる黄金の少年期の最終段階で、人生で二度とない掛け替えのない時期なのです。


それは、子どもたちがとても大切なものを身に付ける得難い時期でもあります。
友達づきあいを学び、自然の不思議を感じ、好きなことに熱中する楽しさを味わい、生きる力を身に付ける、そういう時期なのです。洋の東西を問わずはるか昔からずっと、そのようにして子どもたちは成長の大事な段階を踏んできたのです。

本来そのようなものであるこの時期に、中学受験に向けてのハードすぎる勉強をしなければならないのです。これは、極めて不自然な状況なのだということを、まず理解してほしいと思います。

……この続きは次回で紹介します。



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プロフィール

親野智可等

親野智可等

教育評論家。23年間の教員生活のなかで、親が子どもに与える影響力の大きさを痛感。その経験をメールマガジンなど、メディアで発表。全国の小学校や、幼稚園・保育園などからの講演に引っ張りだこの日々。

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