正義感が強すぎる(?)娘【後編】[教えて!親野先生]
成績も良く授業にも積極的で先生の信頼も厚い小学4年生の長女。正義感が強く、授業中に騒いだり悪いことをしたりする子に注意をします。そのため3年生の時は男子の集中砲火を浴びて泣かされたことも何度か。「他人のことを注意するのやめなさい」と口を酸っぱくして言っていますが、本人は「やってない」と言いながら、懲りもせず注意している様子です。優しくて面倒見が良いのですが、裏目に出ているよう。最近は一部の女子に物も隠されました。謝ってくれたようですが、もうすぐ5年生だし、今後心配です。どのように言い聞かせていけばよいでしょうか?(とんとんまま さん)
【親野先生のアドバイス】
とんとんままさん、拝読いたしました。
前回に引き続き、とんとんままさんへのアドバイスです。
親が受容的共感的に聞いてやると、子どもは安心してたっぷり話すことができます。たっぷり話して、親への信頼感も高まったところで、初めて、次の段階に進めるのです。
というのも、気持ちが落ち着いているので、冷静に振り返って考えることができるからです。
そうならない前に、こちらが別のものを入れようとしても入っていきません。
「あまり注意しすぎないように」とか「どうしても言いたい時は言い方に気を付けるように」という話をしても、心の中に入っていかないのです。
ですから、気持ちがすっきりしたところで、次のように言ってみてください。
「注意してみてどうだった?」「注意してもうまくいかないこともあるよね」「あなたが注意しなくても済むような他の方法なかった?」
このようにして振り返ることで、注意することが良かったのか、他に方法はなかったのかなどを考えることができます。
言い方を考えさせたい時は、「あなたの言い方はどうだった?」「言われたほうはどう思ったかな?」「もっとうまい言い方はなかったかな?」「どう言えばみんなが素直に聞いてくれるかな?」などと聞いてみてください。
そうすれば、「ちょっと怒って言っちゃったから、良くなかった」「言われたほうもむかついたかも」「みんなもうすぐ給食だからがんばろう、って言えばいいかも」などと、振り返ることができます。
このように、自分自身を冷静に振り返る時間を持つことはとても大事です。
自分自身を冷静に振り返ることができれば、その一回一回がとても良い成長の機会になります。
親からの一方的な話として、「あまり注意しすぎないように」とか「どうしても言いたい時は言い方に気を付けるように」と何十回言われるよりも効果があります。
それに、せっかく子どもが持っている正義感ですから、それを生かしつつ伸ばしてやれるといいと思います。
そのためにも、他人のことを注意するのをやめなさいと言い切ってしまうより、じっくり自分で振り返る時間を持ったほうがいいと思います。
もう一つ、注意する時の言い方を上手にするために、ロールプレーで練習するという方法もあります。
ロールプレーのロールとは役割で、プレーとは演技のことです。
それで、役割演技とも呼ばれています。
動作化とか、シミュレーションと呼ばれることもあります。
これは、予想される問題場面を何人かで実際に演じてみるなかで、適切な対応や言い方を練習するというものです。
たとえば、演技する場面は、先生がいない自習時間の出来事と決めます。
そして、お父さんがA君で子どもがB子さんでお母さんがC子さんというように決めて、次のようにやってみるのです。
A君(お父さん)「おれ、もう、ドリル終わっちゃった~」
B子(子ども)「私も、終わっちゃった~。もうやることなくて暇だな~」
A君(お父さん)「あ~暇だ暇だ~」
C子(お母さん)「あんたたち、終わったら読書って先生が言ったでしょ! 先生いなくてもしっかりやんなきゃだめでしょ!」
このあと、子どもに、言われたB子さんはどう感じるか考えさせます。
そうすると、C子さんのような言い方では、言われたほうはとても嫌な感じがするということがわかります。
次に、では、どういう言い方をすればいいか考えさせて、または一緒に考えて、実際に子どもにC子さん役をやらせてみます。
A君(お父さん)「おれ、もう、ドリル終わっちゃった~」
B子(お母さん)「私も、終わっちゃった~。もうやることなくて暇だな~」
A君(お父さん)「あ~暇だ暇だ~」
C子(子ども)「A君B子さん、さすが、早いね。もう読書できるなんていいな~。私も早く読書したいよ」
このように、考えさせたり実際に言わせたりして練習するのです。
場面を変えたり役割を変えたりすれば、いろいろなパターンを練習することができます。
これは、親が口で話して聞かせたり、子どもに頭の中だけで考えさせたりするのに比べて、はるかに実際的な効果があります。
このロールプレーは、友達に「入れて」と言えない子、友達に「イヤ」と言えない子、仲直りができない子、ちょっとしたからかいを軽くいなせない子、などなど、いろいろなケースで効果があります。
これについては、拙著『「友達力」で決まる!』に書きましたので、詳しくお知りになりたいかたは是非そちらを読んでいただければと思います。
学校ごっこや友達ごっこという名前にして、遊びの一種として日常的にやってみるといいと思います。
上手な人間関係の作り方を学ぶのに、かなりの効果があるはずです。
また、これ自体が親子のコミュニケーションにもなります。
さて、このようなことと同時に、私は、ぜひ担任の先生とじっくり話し合う時間を持つことも大切だと思います。
これまでの経緯も含めて、心配していることを腹を割って話してください。
そうすれば、先生もそれを踏まえた対応ができるようになります。
たとえば、こういう子は先生受けがいいので、つい、先生も「○○さんを見習いなさい」と言ってしまいがちです。
そうすると、他の子どもたちに「先生のお気に入り」のような感じで見られてしまいます。
でも、先生が問題を理解していれば、そういうことが防げます。
また、この子が他の子を注意しそうな場面で、先生が止めたり、うまく状況を変えたりすることもできます。
また、日頃の友達関係にも配慮してもらえます。
さらに、日頃から担任の先生との連絡を密にしていれば、親の知らない学校での様子も聞けます。
学年が変わった時は、できるだけ早い時期に新しい先生と会って話すようにしてください。
このように、子どもの気持ちを受け入れ共感しつつ、少しずつ導いていけば大丈夫です。
そうすれば、子どもは、親の愛情を実感しつつ、いろいろな経験を消化して心の栄養にしていくことができます。
そして、時には子どもに必要な練習をしたり、必要な手を打ったりしてください。
このようにしていけば、大丈夫です。
私ができる範囲で、精いっぱい提案させていただきました。
少しでもご参考になれば幸いです。
とんとんままさん親子に幸多かれとお祈り申し上げます。
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