正義感が強すぎる(?)娘【前編】[教えて!親野先生]

今週の相談

 

成績も良く授業にも積極的で先生の信頼も厚い小学4年生の長女。正義感が強く、授業中に騒いだり悪いことをしたりする子に注意をします。そのため3年生の時は男子の集中砲火を浴びて泣かされたことも何度か。「他人のことを注意するのやめなさい」と口を酸っぱくして言っていますが、本人は「やってない」と言いながら、懲りもせず注意している様子です。優しくて面倒見が良いのですが、裏目に出ているよう。最近は一部の女子に物も隠されました。謝ってくれたようですが、もうすぐ5年生だし、今後心配です。どのように言い聞かせていけばよいでしょうか?(とんとんまま さん)

 

【親野先生のアドバイス】

とんとんままさん、拝読いたしました。

どんな集団にもルールやマナーがあります。
そして、それをどの程度守るかということについては、建て前と本音の部分があります。


たとえば、小学校で「掃除中はしゃべらないこと」と先生に言われたとします。
ほとんどの子は、それを適度に守ります。
つまり、休み時間ほどのおしゃべりはしませんが、それでも少しくらいはおしゃべりするわけです。
そういう子に、「掃除中おしゃべりしていいの?」と聞けば「だめ」と答えます。
つまり、建て前で答えるわけです。

でも、しばらくすれば、また同じ程度にはおしゃべりするのです。
つまり、「掃除中も、ちょっとくらいならおしゃべりしていい」と感じているわけで、これが本音です。
そして、人間はこれくらいでちょうどいいのです。

このように、適度にルールやマナーを守る人は集団の中でうまくやっていけます。

この程度が普通より低かったり高かったりすると、うまくいかくなります。

ご相談のお子さんは後者に当てはまるのですが、こういう子はけっこういます。
私も何人か知っています。
私の経験による実感では、まじめで気が張っていて勉強のできる女子に多いような気がします。
もちろん一概には言えませんし、これに当てはまらない場合もあります。

さて、ご相談のケースですが、私は基本的にはそれほど心配しなくて大丈夫だと思います。
というのも、異常に正義感が強すぎて病的にこだわるというほどではないようだからです。
人よりほんの少し正義感が強いという、よくあるケースのように思えます。
それに、「優しくて面倒見が良い」ということですから、これも安心材料です。

それに、人は誰でも、いろいろな経験をしていくなかでだんだんわかっていくということがあるからです。
みんな、いろいろな友達といろいろな人間関係を経験するなかで、少しずつわかっていくのです。

自分の「正しい」が、すぐ誰にでも通用するわけではない。
自分が正しいと思っても、言わないほうがいいこともある。
注意するだけが解決方法ではない。
自分のあの言い方では、相手も頭に来るかもしれない。
思ったままに注意するのではなく、言い方に気を付けることが大切だ。

こういうことが、だんだんわかってくるのです。
そして、これは、実際に経験を積み重ねていくなかでわかることが多いのです。
人に言われただけではわからないことも多いのです。

もちろん、親としては心配だと思います。
たっぷり言い聞かせて、二度と同じ目に遭わないようにしてやりたいと思うのが親心です。
でも、言い聞かせるだけですべてわからせようとしても難しいのです。

それに、言い聞かせてわからせようとすると、ついつい口調が強くなってしまいます。

というのも、いくら口で言っても、子どもの心に本当に届いていないということが感じられるからです。
それで、親はさらに焦って、「ここでしっかりわからせておかなければ」ということで、どんどん口調が強くなってしまうのです。

そうすると、余計に子どもの心に届かなくなってしまいます。
それどころか、子どもは、「自分の気持ちがわかってもらえてない」と感じるようにもなります。

「他人のことを注意するのやめなさい」と口を酸っぱくして言っているとのことですが、この辺の言い方が、本当に難しいのです。
子どもに向かって、頭ごなしの言い方をしないことが大切です。
懲りない子にイライラするかもしれませんが、言い方には気を付けたほうがいいでしょう。


強い口調やきつい言い方は、そういう言い方を子どもに教えるようなものです。
子どもは、親の言い方を知らないうちに真似して身に付けてしまうからです。

親が「ちゃんと○○しなさいよ!」「○○しないとだめでしょ!」「○○しないと□□だよ!」などの言い方が多いと、子どももそうなりがちです。
そうすると、学校で友達に言う時も、そういう言い方になってしまいます。

ですから、この件についてだけでなく、日頃の子どもへの言い方も気を付けたほうがいいでしょう。
「○○しよう」とか「○○するといいよ」などの、プラス思考の言い方で言うようにするといいと思います。

お子さんが友達に注意する時も、そのような言い方で言えるようになるといいですね。

同じことを言うにしても、言い方次第で印象はまったく違ってきます。
実際子どもたちの中でも、けっこう他の子を注意しているのに、特に嫌がられないという子もいるのです。
こういう子は、言い方がうまいのです。
「ものも言いようで角が立つ」という諺(ことわざ)のとおりです。

ですから、まずは、親の言葉遣いに気を付けてください。
そして、「あまり注意しすぎないように」ということと同時に、「どうしても言いたい時は言い方に気を付けるように」ということも教えてやるといいでしょう。

そのためには、子どもが学校での出来事を話した時が良い機会です。
たとえば、子どもが「今日、○○君と□□君が騒いでいたから注意したら、『うるせえ』って言ってきて言い合いになっちゃった」と言ったとします。

そういう時、「まだ懲りないの? 他人のことを注意するのはやめなさいって言ってるでしょ!」と言いたくなると思います。
でも、そこはぐっと我慢します。
そして、まずは、たっぷり本人の話を聞いてやります。
しかも、受容的共感的に聞いてやるのです。

頭では「なんでこの子は懲りないんだろ? まったく、もう!」と思っていても、それは口には出さないことです。
「騒いだらみんな迷惑だよね」「『うるせえ』なんて言われたら頭に来るよね」「せっかく注意しているのにね」などと、共感してやってください。

共感しながら聞いてやることで、子どもは安心してたっぷり話すことができます。
たっぷり話せば、たまっている不満やストレスを吐き出して、すっきりしてきます。
そして、「わかってくれた」ということで、親への信頼感も高まります。

そうなったところで、初めて、次の段階に進めるのです。

……この続きは次回で紹介します。



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プロフィール

親野智可等

親野智可等

教育評論家。23年間の教員生活のなかで、親が子どもに与える影響力の大きさを痛感。その経験をメールマガジンなど、メディアで発表。全国の小学校や、幼稚園・保育園などからの講演に引っ張りだこの日々。

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