何度もいけないと説明しているのに、お金や物を盗ってきてしまう……[教えて!親野先生]

今週の相談

 

小学校2年生の息子は、今までに何度も、お金や物を盗みました。お金は私の財布や、主人の小銭の貯金箱から何度か盗りました。金額は、50円や100円ですが、学校にある売店で、お菓子を買うなどしたそうです。たまに、学校のカバンをチェックしたときに、小銭が出てきて、問い詰めてわかりました。1日10円をあげて、学校の売店では30円くらいから何かしら買えるので、貯まったら好きな物を買いなさいと言っていました。でも、先日200円貯まっているのに、それは使わず、主人の小銭の貯金箱から100円盗ったんです。カバンの中から50円を見つけ、問い詰めると100円を盗って50円をすでに使ったと言いました。以前クラスメイトのトレーディングカードを束で持ってきて、もらったと言うので、問い詰めたらその子の机から持ってきたのでした。翌日、先生に返しに行きました。その後はトレーディングカードは一切持つことを禁止して、今持っているカードも取り上げてしまいました。その都度、盗みはいけないと説明してわかってもらえたと思うのですが、また繰り返します。スーパーでお菓子を盗ったことは今まで3回あります。そのときには息子とお金を払いに行って謝りました。(霜月さん)

 

【親野先生のアドバイス】

霜月さん、拝読いたしました。

我が子がお金や物を盗んだとわかったときの親の気持ちは、想像するにあまりあるものです。
信じていたのに裏切られたという気持ち、まだほかにもあるのに隠しているのではないかという疑い、自分の育て方が間違っていたのではないかという不安、このまま大きくなったらどうなるのだろうという心配……。

しかも、何回か繰り返しているとなると、親としては心配でたまらない状態だと思います。
でも、こういうときこそ冷静になることが大事だと、私は敢えて言いたいと思います。

なぜなら、親のなかには、あまりのショックに理性を失った対応をしてしまう人もいるからです。
子どもに「泥棒」とか「犯罪者」などと言ってしまう親もいます。
このような人格を否定する言葉は、子どもの心を深く傷つけ、親子の信頼関係を大きく損なうことになりかねません。

その点、霜月さんは、トレーディングカードを返しに行ったこと、盗みはいけないとしっかり話していること、スーパーにお金を返しに行って謝ったことなど、適切な対応をしているのではないかと思います。

それに加えてやってほしい大事なことがあります。
でも、この先は、もしかしたらこのケースに当てはまらないところもあるかもしれません。どうしても推測で書かなければならないところもあるからです。
一般的にはこのようなことが考えられる、ということで参考にしてください。

まず、頭に入れておいてほしいのは、子どもがお金や物を盗むのは何かのサインである可能性が高いということです。別の言い方をすれば、子どもが本当に欲しいのはお金や物ではない可能性が高いということです。
つまり、心の中に満たされない部分があるのです。それが本人にも止めがたい衝動になって、そのような行動をさせているのです。

もっと自分の気持ちを共感的に受け入れてほしい、もっと安心させてほしい、もっと自分にかまってほしい、もっと親の愛情を実感させてほしい……。

本人も気が付かないこのような気持ちが衝動となり、その子の行動を突き動かしている可能性が高いのです。このような観点から、親子関係を見直してみることも必要かもしれません。

子どもは、まだ自分をコントロールする力が不十分ですし、盗むということへの善悪の判断力もまだ不十分です。それで、そのような衝動があるとき、つい行動に移してしまうことがあるのです。

ですから、子どもの盗みを見て、大人になってからもずっと同じようなことをするのではないかと必要以上に心配しなくていいのです。
ましてや、我が子を泥棒を見るような不審の目で見る必要はないのです(そういうことは、子どもに必ず伝わりますから、気を付けてください)。
子どものサインを受け止めて、子どもの心を満たすようにしてやれば自然にそういう衝動は消えていきます。

次に、子どもがお金をすぐ取れるような状態にしないということも大切です。
これは、大人が気を付けるべきです。
子どもを信じる信じないには関わりなく、ぜひやってほしいと思います。
子どもがある種の衝動を感じたとしても、すぐにお金を取れない状態なら実行はできません。
お金を取りやすい状態なら、すぐに実行できてしまいます。

最後に、お願いですが、子どもがお金や物を取ったということをあまりにも過大に考え過ぎないでほしいと思います。
親のなかには、あまりに過大に考え過ぎて、その子の人格全てを疑ってしまう人もいます。それ以来我が子を信じられなくなったとか嫌いになったとか、そうなってしまう人もいます。
そうではなく、これは、子どもが成長する過程で出てくるいろいろな問題の一つに過ぎないのです。
子どもというものは、成長過程で本当にいろいろなことをしでかしてくれるものなのです。
親を悩ませ苦しめるありとあらゆることをやってくれるもの、それが子どもです。

これも、その一つに過ぎません。
満たされない衝動、自己コントロール力の不十分さ、盗むということへの善悪の判断力の不十分さ、そのほかもろもろの複合によって引き起こされたものです。
つまり、成長過程特有の問題なのです。
大人がお金を盗ったのと同じレベルで考えるべきではありません。

それに、今、この問題が表面化したのはとてもいいことなのです。
親が気が付かなかった問題を、子どもが表面化してくれたとも言えるのです。
この問題に正面から向かい合い、子どものサインを真っ正面から受け止めていけば、必ずいい方向に行きます。

私ができる範囲で、精いっぱい提案させていただきました。少しでもご参考になれば幸いです。霜月さん親子に幸多かれとお祈り申し上げます。

プロフィール

親野智可等

親野智可等

教育評論家。23年間の教員生活のなかで、親が子どもに与える影響力の大きさを痛感。その経験をメールマガジンなど、メディアで発表。全国の小学校や、幼稚園・保育園などからの講演に引っ張りだこの日々。

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