小5の息子が自己中心な性格で困っています[教えて!親野先生]

今週の相談

 

小学5年生の息子が自己中心的な性格です。1年生の妹が自分の言うことを聞かないと「あげたカードを返せ」などと脅すようなことがあります。気が向くと家の手伝いや妹の世話、塾の勉強もしますが、気に入らないことがあると、家具を蹴ったり、物を投げたりもします。担任の先生にもわがままだと言われました。理科の実験でも、自分の興味のままに勝手にいろいろといじってしまったことを、班の友達からたしなめられ、腹を立てていました。4年生の2学期には不登校になったこともあります。共働きではありますが、手をかけて育てたつもりです。どうしてこうなってしまったのでしょうか。また、なおす方法はないでしょうか?(まりまりおさん)

 

【親野先生のアドバイス】

まりまりおさん、拝読いたしました。

どうしてその子は自己中心的な性格になってしまったのか? 今ここでそれに答えることはできませんが、可能性としては二つのことが考えられると思います。それは、後天的な理由と先天的な理由です。

後天的な理由とは、生まれてからの環境や育て方によるものです。新生児期や乳幼児期、またはそれ以降に自分が求める生理的要求や必要をあまり叶えてもらえなかったとか、愛情を注がれなかったなどによるものです。

先天的な理由とは、もって生まれた性格によるものです。小さいときから親が十分な愛情を注いで育てていても、自己中心的な子になるということはあり得ます。実際、私はそういう女の子を受けもったことがあります。

A子さんはとても自己中心的な子で、クラスのなかでいろいろなトラブルを起こしていました。私は、親に原因があるのではないかと思っていましたが、お母さんは穏やかで優しくてとても愛情深い人でした。それに、A子さんのお姉さんは、A子さんと全く違って、とても優しくて思いやりのある子でした。そのお母さんが言うには、「二人とも同じように育てたはずなのに……」ということでした。

「今はそうしているつもりでも、もっと小さいときに何か育てる環境が違ったとか、A子さんが不安を覚えるような一時期などはなかったですか?」と私は聞いてみましたが、思い当たることはないとのことでした。

さらに、「お母さんは同じようにしているつもりでも、何か自然に差別しているということはないですか?」と聞いてみましたが、それも思い当たることはないとのことでした。

私にも、とてもそういうことをするような人には見えませんでした。ですから、私は、A子さんの場合は、生まれつきではないかなと思ったのです。そして、私は、そのお母さんと話していて、この子はだんだん良くなっていくのではないかと思いました。

それは、そのお母さんがとてもいいお母さんだと確信がもてたからです。とても穏やかで優しくて愛情深い人だと思えたからです。本当に心からA子さんに愛情を注いでいて、A子さんのことを心配していたからです。 それに、A子さんがクラスの子と問題を起こしたときも、対応がとても的を射ていたからです。

A子さんが自己中心的だということをお母さんも感じていたのですが、決してそのことで頭ごなしに叱りつけるなどということはしませんでした。A子さんの言い分を、まずきちんと聞いてやっていました。

自己中心的な言い分が多かったはずですが、うなずきながら、肯定しながら聞いて受け入れていました。A子さんが、自分に非がなくて相手に非があることをずっと話していても、それを受容的かつ共感的に聞いていました。

明らかに自己中心的な言い分に対して、「そうだね。悔しかったんだね」などと言いながら聞いてやるのは、なかなかできるものではありません。普通なら、「何を勝手なことばかり言っているんだ」と言ってしまいがちです。でも、A子さんにはそれが必要だとお母さんはわかっていたのです。そして、たっぷり聞いたうえで、初めて相手の気持ちも考えさせようとしていました。それが、この場合は必要な手順なのだとそのお母さんは知っていたのです。そして、とても粘り強くやっていました。

それと、そのお母さんは、A子さんにクラス以外にもいろいろな人間関係の経験をさせたいと考えてスポーツ少年団に入れました。運動がもともと好きだったということもあって、A子さんは、そこで仲間たちと汗を流すのを楽しみにするようになりました。そのスポーツも気に入って、毎日の楽しみができて、いきいきと生活できるようになりました。

私が受けもっている間は、自己中心的な性格を直すという点では目立った成長は感じられませんでした。でも、私は、きっとA子さんは成長すると思っていました。

その7年後、A子さんの噂を聞きました。話してくれたのは、A子さんと同じ高校に通っているB子さんです。私が「A子さんはどう?」と聞くと、「ああ、あの子変わったよ」という答えが返ってきました。そして、A子さんがだんだん自己中心的な性格でなくなってきたことを話してくれました。

「7年前とは全然違うよ」と言っていろいろ教えてくれました。それによると、A子さんは高校生になって大きく変わったということでした。一言で言えば自己中心的性格が直ってきたということでした。私は、とても嬉しかったです。同時に、あのお母さんのやり方は、やはり的を射ていたなと思ったのでした。

いかがでしょう? この話を参考にしてやってみてください。今、親である自分にできることを考えてやってみてください。とても根気がいることだと思います。でも、親が正しい対応をし続けることが大切です。

その子の現状を受け入れ、共感的に理解してやってください。その子にはそうせざるを得ない理由があるのです。決して頭ごなしに叱りつけてはいけません。孫悟空を手の平にのせたお釈迦さまのような気持ちです。

気長にやってください。正しい対応を続けていれば、いつか子どもは変わります。


私ができる範囲で、せいいっぱい提案させていただきました。少しでもご参考になれば幸いです。まりまりおさん親子に幸多かれとお祈り申し上げます。

プロフィール

親野智可等

親野智可等

教育評論家。23年間の教員生活のなかで、親が子どもに与える影響力の大きさを痛感。その経験をメールマガジンなど、メディアで発表。全国の小学校や、幼稚園・保育園などからの講演に引っ張りだこの日々。

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