小学3年生の娘の書く字があまりにも汚いので困っています【前編】[教えて!親野先生]

今週の相談

 

小学3年生の娘の書く字があまりにも汚いので困っています。ただ汚いだけでなく、日本語にすらなっていないことも多く、「アメリカ」が「アめりカ」という具合に途中からカタカナとひらがなが入り乱れます……。口を酸っぱくして言っても直りません。どうしたら丁寧に書くようになるのか、アドバイスをお願いいたします。(ひなこもちさん)

 

【親野先生のアドバイス】

ひなこもちさん、拝読いたしました。

親としては、心配になるのももっともだと思います。先生から注意されることも多いことでしょう。学力や成績への影響も心配になることでしょう。何とか今のうちに直してやりたいという気持ちになってのご相談だと思います。

このようなタイプの子は、必ずクラスに何人かいます。なかには、一体何を書いているのか判読できないほどの字を書く子もいます。理解力にも記憶力にも優れているのに、とにかく字や文章を書くことを嫌う子もいます。たとえ書いたとしても、殴り書きの字にしからならない子もいます。

でも、私の経験だと、はっきり言って、これを直すのはかなり難しいことです。字が雑な子と整理整頓が苦手な子を直すのは、かなり難しいことなのです。親も先生も含めて、これを直したという人を私はいまだに一人も知りません。

ものすごく厳しい先生が受けもって、徹底的に指導すれば一時的に直ったように見えることもあります。機会あるごとに口を酸っぱくして注意し、少しでも雑に書いたら叱りつけたうえで全部書き直させる、というように徹底的に指導した先生を私は実際に知っています。

そのとき、そのクラスの子はみんな字をものすごく丁寧に書くようになりました。それが、その先生の自慢でもありました。でも、その次の年に先生が替わったら、みんな見事に元通りになりました。それは、あっという間のできごとで、1カ月はかからなかったと思います。

そのクラスの子たちは、その先生が嫌いでした。いろいろなことでガミガミと言う先生でしたから、当然です。その先生は、使命感に燃えていたのかもしれません。「今のうちに直してやりたい」「今私が直さなくて、この先一体誰がこの子たちを直してやれるのか?」いろいろな点でそういう思いが強い先生でした。

そして、機会があるごとにガミガミと注意し、徹底的に指導したのです。一日中、ガミガミと叱ってばかりの先生でした。子どものいいところを見つけてほめるなどということは、ほとんどありませんでした。

ものすごく徹底した先生でしたから、子どもたちは字も丁寧に書きましたし、トイレのスリッパの整頓も完璧でした。

でも、だんだん元気がなくなっていき、子どもらしい活力は見られなくなりました。そして、子どもたちはその先生が嫌いになりました。新しい年に、担任の先生が替わったとき、子どもたちは大喜びをしました。そして、新しい先生になって1カ月後、子どもたちの字は見事に元通りになりました。

この先生の努力はいったい何だったのでしょうか?

以前はこういう先生がけっこういました。今はかなり少なくなりましたが、それでもときどきいます。こういう先生に受けもたれる子はかわいそうです。でも、もしこれを親がやるとなると問題はさらに深刻です。なぜなら、担任は1、2年で替わりますが、親は替わらないからです。

それでも、もし次のような人が取り組むとしたら可能だと思います。人徳も品格も優れていて、行いも立派で、見識も高く、発する一言にもあらがい難い説得力が備わっていて、いながらにしてすばらしい教育力を発揮できる人……。

このような人が先生または親でしたら、ガミガミと言わなくても子どもは字をしっかり書くようになるかもしれません。

でも、普通の人でしたら、このような字の雑な子を直そうと思えば、先程の先生と同じように機会あるごとに口を酸っぱくしてガミガミと注意しなければならなくなるのです。

それは、親にとっても子どもにとってもとても辛い毎日です。そして、そのことばかりが気になるようになります。その一つのマイナス面が、その子への注目ポイントになってしまうのです。その子を見るとき、すぐにそこに目がいくようになってしまうのです。

その子には、いろいろな側面があり、それこそ100も200も、いえいえ、無数にあるのです。もちろんいい側面も無数にあるのですが、そういう測面をなかなか見ることができなくなってきます。無数にあるその子の測面のなかで、字が雑というところだけにやたらに目がいくようになるのです。

すると、それに引きずられて、その子のほかのマイナス面も目につくようになります。たとえば、整理整頓も苦手、カバンの仕度も言われないとやらない、食事をするときの姿勢や行儀もなってないなどなど、いろいろなマイナス面がどんどん目につくようになります。

それに、子どものほうとしても、いつも叱られることが多くなると、自分がだめな子だという気持ちが強くなっていきます。自分に対するいいイメージがもてなくなるのです。これは、非常に大きな問題です。

なぜなら、人は自己イメージに合致するように自分をつくっていくからです。たとえば、自分は能力が高いという自己イメージをもっている人は、実際にだんだん能力が高くなっていくのです。自分は能力が低いという自己イメージをもっている人は、自分の能力を高めていくことはできません。

字が雑ということでいつも叱られていると、いい自己イメージをもつことができなくなります。その結果、自分に自信がもてなくなってしまうのです。そうなると、何をやってもうまくいかないような気がしてくるのです。一度こうなると、取り返すのはなかなか難しくなります。

私は、この相談を読んだとき、このことを強く憂えました。多くの先生や親たちが、このような道を進んでしまうのを見てきたからです。でも、私は、だからといって放っておきなさいと言いたいわけではありません。もちろん、親ができることはやるべきです。いろいろ工夫して、合理的な方法を考えて実行してほしいと思います。

決してガミガミと叱るのではなく、叱らないで少しでもよくなっていく方法を工夫することが大切です。また、そのとき大切なのは、効果を期待し過ぎないで淡々とやるべきことをやるということです。効果を期待し過ぎると、だんだんイライラしてきますし、ガミガミと言うことが多くなるからです。

プロフィール

親野智可等

親野智可等

教育評論家。23年間の教員生活のなかで、親が子どもに与える影響力の大きさを痛感。その経験をメールマガジンなど、メディアで発表。全国の小学校や、幼稚園・保育園などからの講演に引っ張りだこの日々。

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