多様化する不登校 その子にとっては何が最善?

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新型コロナウイルス感染症の影響で制約がある生活が長引いていることは、子どもたちの心身にも影響を及ぼしています。
文部科学省が公表した調査によると、2020年度中に学校を年間30日以上休んだ「不登校」の児童生徒数は、小中学校で20万人近くに上り、前年度に比べても8.2%増えました。
ただ、コロナ禍を通して、不登校の意味合いや考え方にも変化が迫られているようです。

この記事のポイント

小中学生2万人が「感染回避」

小中学生の不登校数は、8年連続で上昇し、過去最多になりました。児童生徒1,000人当たり20.5人(前年度は18.8人)が不登校という計算です。

ただし、他にも30日以上欠席した児童生徒がいます。今回、長期欠席の理由に「新型コロナウイルスの感染回避」を追加したところ、約2万人がこれに該当しました。ここには、本人または保護者の意思で出席しない者や、医療的ケア児や基礎疾患児で登校すべきでないと校長が判断した者が含まれています。

さらにコロナ禍での出席の扱いをめぐっては、校長が「合理的な理由がある」と判断した場合には「出席停止・忌引き等の日数」に分類され、出席にも欠席にもなりません。
合理的な理由とは「生活圏において感染経路が不明な患者が急激に増えている地域で、同居家族に高齢者や基礎疾患がある者がいるなどの事情があって、他に手段がない場合など」だと文科省は示しています。

不登校が増えているのは確かです。しかし単に日数だけでは測れず、単純な分類もできない、多様な「不登校」があるようです。

一斉休校明けに登校できた子も

不登校の子どもに、心理的な変化があったことも見逃せません。
感染拡大の第1波を受けて、2020年の3月から5月まで、全国一斉の臨時休校措置が取られました。そうしたなか、学校が再開された際、不登校率が下がった自治体があったのです。

スクールカウンセラーが聞き取りを行ったところ、「登校しないのが自分だけでないことで、少し気持ちが楽になった」「新しい学習形態に興味を持った」「周囲の子どもの目を気にしなくていい」という声があったといいます。

一方で、それまで登校できていた子どもが学校再開後に登校できなくなったり、登校できても精神的な不安を抱えていたりすることもあります。一人ひとりの心身の状態を丁寧に見ていく必要があります。

オンラインやハイブリッドでも授業に参加

不登校はかつて、「登校拒否」とも呼ばれていました。一斉休校では、逆に子どもが登校を「拒否」されたともいえます。

また、一斉休校をきっかけに広がったオンライン授業や、対面とオンラインを組み合わせた「ハイブリッド」の授業によって、別室や自宅からでも授業に参加できる環境が現実のものとなりました。

対面による指導や子ども同士の交流によって、全人的な発達を目指すのが「日本型学校教育」の特長です。ただし子どもの状況によって、さまざまな学校への関わり方ができるようになったのも、コロナ禍での前向きな変化だといえるでしょう。

まとめ & 実践 TIPS

出席しなければ学校教育が享受できない、というのは、コロナ前の姿なのかもしれません。
学校や児童生徒一人ひとりがどんな状態にあっても、できる限りの方法で学びを止めるべきではない、との認識が広がったのも、コロナ禍の意外なメリットといえるかもしれません。
登校か不登校かという二者択一ではなく、その子にとって何が最善かという視点から、学びの在り方を考えていきたいものです。

文部科学省「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」
https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/seitoshidou/1302902.htm

遠隔授業が不登校の子どもにどう影響をもたらしたか第11回オンラインシンポ「青森市教育長に聞く~不登校の子どもたちへの対応について」レポート・前半
https://lot.or.jp/project/2371/

プロフィール


渡辺敦司

著書:学習指導要領「次期改訂」をどうする —検証 教育課程改革—


1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。初等中等教育を中心に、教育行財政・教育実践の両面から幅広く取材・執筆を続けている。

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