学校と子どものことがよくわかる! 授業参観のチェックポイント【後編】
学校での子どもの様子を見ることができる授業参観。授業参観後の保護者のフォロー次第で、子どもの学びへの意欲をぐっと伸ばすことができると言います。私立の小中一貫校に長年勤め、現在は作家、教育評論家として活躍されている中井俊已先生にうかがいました。
よかったところをまずほめて
授業参観に参加すると子どもの言動で気になることが見つかるかもしれませんが、それらを注意するよりも先に、まずはよかった点からほめてあげましょう。その際に注意したいのは、「○○ちゃんよりよく手を挙げていたね」などと、人と比較しないということです。子どもが周囲の人との順位ばかりを気にするようになり、失敗を避けたり、1番以外はダメだという思考になったりしてしまうからです。
比較するのであれば、過去の子ども自身がよいでしょう。「去年の授業参観よりも、たくさん手を挙げられたね」「今年は、大きな声で発言できたね」というように、その子の成長が自分でもわかるように具体的にほめてあげることがよいと思います。そうして、よかったところをほめたあとに、子どもの様子で気になることがあった場合は、まず理由を聞いてあげましょう。
例えば、手を全く挙げなかったのが気になった場合は、まず本人にそのときの気持ちを聞いてあげるのです。「わかっているけど手を挙げるのが恥ずかしかった」のであれば、「ほかの保護者もたくさん来ていたから緊張しちゃうよね」と子どもの気持ちを受け止めてあげたいですね。そのうえで、「ノートにはきちんと答えが書けていたね」「よい姿勢で授業が聞けていたね」などと、違う角度からの視点で子どもの様子のよいところをほめて、子どもに自信をつけてあげましょう。そうして自信をつけることで、子どもは「もっとがんばって授業を受けよう」と思えるのです。
もう1点、注意していただきたいのは、授業中、わが子や友だちが間違えたとしても、失敗を責めないでほしいということです。教員は、授業中、みんなで協力し合い、よいところを伸ばし合う雰囲気をつくろうと努力しています。誰かが間違ったことは、クラス内で共有して、みんなで理解できればよいのです。「間違いを恐れずに自分の考えを言おう」「みんなで協力して正解にたどり着こう」というクラスの雰囲気に、保護者は水を差さないようにしたいですね。
「挙手しないので授業が理解できているか心配」「休み時間にひとりぼっちだった」など、授業参観時に気になることがあるかもしれません。そのときは、慌てて子どもを問い詰めずに、まずは個人面談の機会や連絡帳などを使って、担任にふだんの学校での様子を聞いてみるとよいと思います。
先生のよかったところもほめて学校をもっと好きにさせよう
新卒1、2年目の先生は、保護者からすると頼りなく思えるかもしれません。確かに経験の面ではベテランの先生には劣るかもしれませんが、若い先生だからこそのよさもたくさんあります。はきはきとしている、体育が得意、笑顔がすてきといった、子どもにとって魅力的に映ることをどんどん子どもの前で言って、ほめるようにしましょう。「あなたの学校や先生には、こんなによいところがあるのね」と保護者がほめてくれたら、子どもはもっと学校や先生を好きになるでしょうし、毎日楽しく学校に通えるはずです。また、低学年のうちに、先生の言うことに、素直に耳を傾ける習慣を身につけることで、学習の基礎をしっかり押さえることにつながり、それが高学年の学習にも生きてきます。
もし、先生に気になることがあったとしても「あの先生は○○だからよくない」などと、子どもの前で悪口を言うのは避けたいですね。特に女の子は、保護者のひと言に影響を受け、「自分の先生はよくない」「あの先生はダメな先生」と思い込んでしまい、真面目に授業を受けられなくなるかもしれません。それは、伸び盛りの子どもにとって大変損なことです。
一方、子どもが「A先生は宿題が多くてイヤだ」などと担任の先生について否定的なことを言う場合は、子どもの気持ちは理解しつつも、「A先生はそれだけ熱心なのよ」と先生の味方をしてあげてください。そして、「自分は悪くないのに先生に怒られた」など、子どもから先生に関する発言で気になることがあれば、子どもと同調して先生の悪口を言うのではなく、直接担任の先生にその意図を聞くようにしましょう。先生の意図を子どもが誤解している場合は、できるだけ早く誤解を解いて、先生に対する子どもの信頼を回復し、子どもの学校生活を楽しいものにしてあげたいですね。