最初の社会人モデルは保護者自身 家庭で始めるキャリア教育
従来、職業観や勤労観を教えることを意味したキャリア教育が、「一度きりの人生をどう生きるか」を考える内容に変わってきている。「保護者は子どもにとって最も身近な社会人モデル」と話す法政大学キャリアデザイン学部教授の宮城まり子氏に、家庭だからこそできるキャリア教育について伺った。
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大学の講義の一環として、学生に保護者インタビューをしてもらっています。ある学生は「子どものころ、父は土曜日、ほとんど家にいなかった。今回話を聞くと、土曜日は仕事に関する勉強のため、図書館にこもっていたとのこと。そんな父を改めて尊敬するとともに、いかに自分が父の仕事について何も知らなかったかを実感した」とレポートに書いてきました。ほかにも多くの学生が、「今回のインタビューで、親がどのように仕事と向き合ってきたかを初めて知った」と書いています。
日本の親子は、キャリアについて語り合う機会がほとんどないようですが、これでは子どもは仕事に夢を持てず、職業観を養うこともできません。働くことの喜びや大変さ、仕事を続けることの意味などを、子どもが小さいうちから積極的に話してあげましょう。今は仕事をされていないかたも、以前の仕事の体験談など、語れることはたくさんあります。こうした会話から、子どもは「自分はどんな仕事につけば、親のような喜びを感じられるだろう」「そのためにはどんな勉強をすればよいのだろう」と、自然と考えるようになります。
ここで気を付けたいのは、子どもが「働くことはつまらない」と、将来を否定的にとらえるような、ネガティブな内容を話すのはやめること。仕事の愚痴や同僚の批判などがそれに当たります。保護者の「仕事をすることは楽しい」という姿勢は、結果として「生きるって楽しいこと」というメッセージにつながります。これは、子どもがその子らしい人生を送る大切なきっかけにもなるのです。
出典:家庭だからできるキャリア教育【前編】スタートラインは保護者から -ベネッセ教育情報サイト