「保護者世代や今までと全然違うの!?」新課程入試のモヤモヤに答える

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5月は多くの高校で、PTA総会や保護者会が行われます。
高校1年生は「新課程」の初年度の学年で、大学入試も変わる、という話を聞かれたかたもいるでしょう。
何かが変わるそうだけれども、どう変わるのかよくわからない、というモヤモヤ状態のかたも多いと思います。
「新課程入試」は今までの、あるいは保護者世代の入試とどう違うのか、保護者にできることは何か、一緒に考えていきましょう。

※「新課程」についてはこちらを参照
<新高1~高校新課程~>教科書が変わった! 学び方も変わった!

この記事のポイント

変わらないこと

大学入試では、基本的に高校で学習したことが問われます。
高校のカリキュラムや授業に沿って努力を続けていくことが良い結果につながる、という構造は昔も今も変わりません。
まずは学校の勉強を第一に考える、ということを保護者も生徒本人も鉄則にしてください。
特に、今回のような「制度の変わり目」の時にはさまざまな情報が飛び交いますが、この鉄則は変わりません。

また、強い志望の気持ちをもつことが合格につながるということも変わりません。
「これをやりたい」と思うきっかけはさまざまなところに転がっています。
コロナ禍で行動しにくい時だからこそ、机にへばりついて勉強する姿を理想とせず、特に1、2年生のうちは意識して幅広い体験を積み、さまざまな見聞を広げるような高校生像を描いてください。
やりたいことを見つけることで早期に志望を描くことができ、勉強のモチベーションにもつながっていきます。

既に変わりはじめていること

高校教育も、大学入試も、新課程でガラリと一気に変わるのではなく、時代の変化に合わせる形で、既に変化は始まっています。
その変化が「新課程入試で加速する」と考えましょう。では、どのような変化が始まっているのでしょうか。

「探究」と大学入試

大学では、ゼミ活動や卒業論文など、学生自身が課題を設定して研究を行います。
そのなかでは、知っている知識を総動員し、また必要な知識やデータを調査、獲得して考察し、レポートや論文にまとめます。
保護者世代のかたにとっては、このような学び方は大学独自のもののように感じられるかもしれません。

しかし、実は高校でも同様のプロセスで学ぶ「探究」的な学習が新課程以前から広がっており、新課程においてはすべての高校生が「探究」的な学習を行うことになっています。
知識を定着させる教育から、課題を解決するための教育への転換が図られており、学ぶ力や考える力を育むことが重視されています。

※「探究」についてはこちらを参照
これからの学びのカギ「探究」とは?

そういった高校での学びの変化とともに、大学入試では、「探究」を通じて学んだことを問う「総合型選抜(旧AO入試)」などが、既に増えてきています。

※詳しくはこちらを参照
「楽な入試?」総合型・学校推薦型選抜のススメ

もちろん、従来の教科学力を問う、試験当日一発勝負の結果で決まる「一般選抜」がなくなるわけではありませんが、「総合型選抜」の増加はさらに加速すると予想されます。
大学入試で問われるのは「高校で何を学び、何ができるようになったか」であり、そのなかでも「探究」に関しては大学入学後に研究を進めていく力に直結していますので、大学としても注目しています。

教科のテストで問われること

新課程で学習項目として新たに追加されたことが入試でも新たに問われるのは当然ですが、実は新しい学習項目自体はそれほど多くありません。
それよりも、「出題傾向」としての変化が既に始まっていることに注目しましょう。

2021年度入試で「大学入試センター試験」が「大学入学共通テスト」に変わりました。その時から出題傾向が大きく変わっています。
たとえば、国語で、文章を読んでどのようにノートにまとめるかが問われたり、日本史で、生徒同士が授業中にディスカッションしている対話文から出題されたり、学校での現実の学習場面が設定された出題がなされています。
保護者のかたがもつ「入試問題」のイメージからは変化しており、この傾向は、今後個別大学の試験にも影響を与えていくと考えてよいと思います。

資料(ノート)をまとめたり、議論をしたりするような、将来、社会に出てから求められる力が高校で育まれ、また大学入試で問われるようになってきたといえます。
前述の「探究」もそうですが、高校では、将来役に立つ学ぶ力や考える力を意図して育てるようになっています。
保護者としても、高校生を子どもと見ずに、たとえば職場の新人を育てるような目で見て、物事の考え方や取り組み方について、人生の先輩として話をしてあげてもらえたらと思います。

変わること

現在、各大学は新課程入試でどの科目を課すのかを検討しており、2022年度中に予告・公表することになっています。
新課程入試の最大の変化は、「情報Ⅰ」が共通テストで出題され、国立大学では課すことを原則とするという方針を出したことです。
ただこれも、現時点では学校で学ぶ「情報Ⅰ」をしっかり理解できれば対応可能な出題内容となりそうです。
少なくとも今、「学校以外で何か対策をしなければ」と慌てる必要はありません。

※「情報Ⅰ」についてはこちらを参照
<新高1~高校新課程~>「情報Ⅰ」って何? 大学入試でも課される「情報Ⅰ」とは

それ以外の入試に課す教科・科目は、大学・学部として求める人材像が変わらない限り、大幅に変更されることはありません。
ただし、最近の傾向として、私立大学の大学入学共通テストを利用する入試で、3教科ではなく、4教科、5教科を課す大学が徐々に増えています。
高校での学習を(「探究」も教科も)幅広くがんばっておく、というのが、志望の選択肢を広げる良い方法だと思います。

まとめ & 実践 TIPS

新しい入試に変わるということで、対応が難しくなるのではないかという保護者のかたの不安もわかりますが、全面的に変わるというわけではありません。
また、制度が変わる前の年度の(1学年上の先輩の)入試では現役合格者(進学者)が増え、次年度に残る既卒生は少なくなります。
入試そのものに対して深刻に心配する必要はありません。
それよりも「やりたいこと、追求したいことを見つける≒志望を明確にする」ためにさまざまな体験を積むことを応援してあげてください。

プロフィール


西島 一博(にしじま かずひろ)

ベネッセ文教総研所長。株式会社ベネッセコーポレーションで、高校、中学校、小学校対象のさまざまな教材開発に携わる。2016年度より高校用教材・生徒手帳などの制作・販売を行うグループ会社、株式会社ラーンズの代表取締役社長を務め、2021年度より現職。ベネッセ文教総研では、主として中高接続、高校教育、高大接続の領域での研究、情報発信を行っている。

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