「楽な入試?」総合型・学校推薦型選抜のススメ

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大学進学を考えて入試制度を調べてみると、いろいろな方式があることに驚かれることでしょう。

なかでも「総合型」「学校推薦型」という名称を見て、「これって、どんな入試?」と戸惑った保護者も少なくないはず。
ここでは、「総合型選抜」「学校推薦型選抜」の特徴をご紹介するとともに、その方式を確認しながら実践できる大学選びのポイントについてもお伝えします。

この記事のポイント

「一般選抜」「総合型選抜」「学校推薦型選抜」の違いは?

今の大学入試制度は、おおむね「一般選抜」「総合型選抜」「学校推薦型選抜」の3つに区分されています。

まず「一般選抜」は、1月に実施される「大学入学共通テスト」や、その後に行われる各大学が実施する個別試験といった、教科学力を問う試験の総合点によって合否が決まる入試です。
このため、この入試への対策は「教科学力を高めること」であり、「高校での日々の授業を大切にする」など、受験生がとるべき行動もわかりやすいと思います。

一方で、「総合型選抜」は、9月1日以降に願書受付が始まりますので、一般選抜と比較すると早い時期に行われる入試です。
かつては「AO入試」という呼び方をしていましたので、ひょっとするとその言い方のほうがわかりやすい保護者のかたもいらっしゃるかもしれません。
「総合型」というぐらいですから、入試の合否も、学力試験の結果だけではなく、さまざまな方法で決定されています。その分、対策の立て方も大学ごとに異なるのが特徴です。

最後に、「学校推薦型」は、これも読んで字のごとく、校長先生から推薦してもらうことで受験が可能になる入試です。
11月1日から願書の受付が始まりますので、これも一般選抜より前に行われることになります。
学校での成績(≒評定平均)や部活動・ボランティアなどの実績などが推薦の基準となりますが、出願後に小論文や面接などを課すところも多いため、総合型選抜同様、受験する大学に合わせた対策が必要となります。

「総合型・学校推薦型選抜=楽な入試」は誤解!

ここ数年で、この「総合型・学校推薦型選抜」での大学入学者数は年々増加しています。

「一般選抜よりも早く合格通知がもらえる」ことに魅力を感じた受験生が数多く受験するようになっていることに加え、国公立大、私立大ともにこの選抜での合格者数を増やしていることがその要因です。大学進学を考える時、一般選抜同様にチャレンジしたい選抜方法と言えるでしょう。

その際、注意していただきたい点は「総合型・学校推薦型選抜は、必ずしも『楽な入試』というわけではない」ということです。

たしかに、合格枠は拡大していますので、チャンスは広がっています。
しかし、「学力がいらない入試」というわけではありません。
たとえば、東北大学の「AO入試」では、筆記試験や大学入学共通テストの受験が必須です。

筑波大の「推薦入試」で課されるのは「小論文」ですが、そこでは数学や英語などの教科学力も問われています。

お茶の水女子大の「新フンボルト入試」では、文系学科では附属図書館などを活用した課題レポートとグループ討論や面接、理系学科では実験や自主研究の結果に基づく発表や質疑応答などが課されますが、いずれも「その場しのぎの対応」で合格することは難しく、高校時代の教科での学習や、「総合的な学習の時間(2022年度の高校1年生からは「総合的な探究の時間」)での研究活動を通じて十分な実力を身に付けておく必要があります。

「学力が求められるのは一般選抜だけ」と誤解されているかたもいるようなのですが、総合型や学校推薦型選抜でも「高校での学習で身に付けた成果」をしっかりと評価する大学が増えてきているのが、今の大学入試なのです。
ですから、総合型であっても学校推薦型であっても共通する対策としては、「学校での日々の授業や定期テストをきちんと受ける」ということになるのだと思います。

「総合型・学校推薦型」こそ、進学後の授業をチェック!

このように書くと、「総合型でも学校推薦型でも学力を求めるのなら、すべて一般選抜にしてしまったほうがよいのではないか」と思われた保護者のかたもいらっしゃるかもしれません。

では、そもそもなぜ大学はこのような「総合型・学校推薦型」を拡大させているのでしょうか。

その最大の理由は「学生の多様性の確保」です。
大学での学びは、知識を確実に身に付けるだけにとどまりません。
時には正解のないようなテーマについて、その知識を使って議論したり、その議論で出てきた仮説をもとに調査や研究を重ねたりすることが求められます。

その際、同じようなタイプの学生ばかりでは、議論は深まりません。
「豊富な知識のある学生」だけでなく、「リーダーシップのある学生」や「裏方としてみんなを支える学生」など、多様なタイプの学生がいてこそ、議論も学びも深まります。
そんな多様性のある学生を確保するために、総合型選抜や学校推薦型選抜の方法を大学は工夫しているのです。

これは、見方を変えれば、総合型選抜や学校推薦型選抜で「どのような力を評価しようとしているか」が、「大学入学後に必要となる力」に直結している、ということにもなります。

ですから、仮に一般選抜のみでその大学を受験するつもりでも、どんな総合型・学校推薦型選抜を課しているのかをチェックすることをおすすめします。
さらには、そこで求められている力がちゃんと発揮できる授業があるかどうかを確認することも重要です。

たとえば、「強いリーダーシップ」を総合型選抜で求める大学があったとして、入学後にそれを発揮できるようなグループワークや課題解決型の研究活動などがなく、ただ講義を聞いているだけであるようなら、せっかく合格できてもその力を生かす場面がないということになってしまいます。
その意味では、総合型・学校推薦型選抜で求めている力と、入学後の授業で必要な力が一致しているかどうかを確認することで、「自分が入学したら本当に成長できる大学かどうか」を判断することにもつながり、志望校を選ぶ判断基準の一つにもなるのではないでしょうか。

まとめ & 実践 TIPS

総合型・学校推薦型選抜は、合格できるチャンスが拡大している一方で、「どんな力が求められているのか」「大学入学後の学びにつながっているか」をしっかりと確認することが重要です。

それは大学選びにも直結しますので、もし受験を考えている大学が複数あるのであれば、早めに情報収集を始めるようにしましょう。
まずは通っている学校の先輩の「合格体験記」などをチェックすることから始めてみてはどうでしょうか。

最近は大学もWebなどを活用しながら積極的に総合型・学校推薦型選抜の詳しい内容を発信しています。
その入試で合格した学生がどんな学びをしているかなどのリアルな声などを公開している大学もありますので、ぜひ保護者の皆さまも一緒にのぞいてみることをおすすめします。

総合型・学校推薦型選抜に共通する対策は「学校での日々の学習や探究活動、定期試験をがんばること」ですが、「大学が求めている力」や「それが入学後にどうつながるか」が明確になれば、「何をどうがんばればよいのか」もわかるので、より効果的な学習を進めることができるでしょう。
単なる受験対策ではなく、毎日の授業を充実させるためにも、総合型・学校推薦型選抜の情報に触れてみてください。

プロフィール


村山和生

ベネッセでは進研模試等を通した高等学校への進路指導支援、大学入試分析、進路説明会講師等を担当。2012年からはベネッセ教育総合研究所・高等教育研究室のシニアコンサルタントとして大学の教学改革支援や入試動向分析、「VIEW21大学版(現:Between)」編集長等を担当。16年からは「ベネッセ i-キャリア」にて大学生向けアセスメント分析や大学IRのための統合データベース開発などを担当。17年からは一般財団法人大学IR総研の調査研究部にて、研究員として高等教育全般の調査・研究と教学改革支援、ならびにIRの推進支援に携わる。
ベネッセコーポレーション帰任後は、学校支援事業の経営企画業務に従事。21年からベネッセ文教総研の主任研究員として、高等教育を中心に「学修成果の可視化」「IR」を主なテーマとして調査、研究、情報発信を続けている。

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