英語教育見直しで大学入試も変わる!? ‐渡辺敦司‐

2020(平成32)年の東京オリンピック・パラリンピックまでに英語教育を充実させることを目指して、文部科学省の有識者会議が議論を始めています。月1回ペースで会合を開き、秋までに報告書をまとめる予定です。その後、学習指導要領の改訂作業に着手しながら、並行して段階的に充実策を講じていく見通しです。初会合では委員から大学入試についての問題点も相次いで指摘されており、英語の出題に代えて外部検定試験の活用を促進するよう提言されるかもしれません。

文部科学省が2013(平成25)年12月に発表した「グローバル化に対応した英語教育改革実施計画」(外部のPDFにリンク)によると、現行では小学校高学年で必修化されている「活動型」の英語教育(外国語活動)を中学年に前倒しするとともに、高学年では読み書きも含めた「教科型」の学習を始めます。これを受けて中学校でも、2013(平成25)年度から高校で行われている「授業は英語で」を前倒しで実施。高校では発表や討論、交渉など活動を高度化し、英語を使って何ができるかを重視したい考えです。指導要領の改訂(2016<平成28>年度)によって18(同30)年度から段階的に先行実施を行い、東京五輪が行われる20(同32)年度に全面実施したい考えです。

振り返ってみると、現行指導要領の改訂時にも小学校英語を教科にするかどうか検討されたのですが、「英語より国語」といった世論が沸き起こり、立ち消えになってしまいました。しかし今回は以前紹介したように、下村博文文部科学相が小学校英語の教科化を打ち出すなど「政治主導」で議論が進められています。社会・経済のグローバル化が急速に進展する中、五輪を待つまでもなく、英語教育の充実が待ったなしの状況にあることは間違いありません。有識者会議の座長に選ばれた吉田研作・上智大教授も初会合終了後、「(前回の改訂を論議した)10年前とは切迫感が違う」と話していました。
初会合では、石鍋浩・東京都足立区立蒲原(かばら)中学校長が「(コミュニケーション重視の英語教育をしたいと思っても)中3になると『入試問題をたくさんやってほしい』という声が多くなる」と嘆くと、英語を社内公用語にしている楽天の三木谷浩史社長も「大学入試を世界標準にすることも極めて重要だ」として、同社でも社員に求めている代表的な英語能力試験TOEFLを入試に取り入れることを提案。一般財団法人実用英語推進機構の安河内哲也代表理事も「大学受験が変われば英語教育が変わる。先生の努力は大学受験に阻止されている」と訴えました。

外部の資格・検定試験の活用は「読む」「聞く」を含めた英語の技能をバランスよく測ることに優れており、政府の教育再生実行会議第4次提言(外部のPDFにリンク)や先の実施計画でも推奨していました。文科省でも2014(平成26)年度予算で、GTEC for STUDENTS、 英検、TOEFLなど外部試験の実施団体と連携した英語力調査事業(外部のPDFにリンク)に乗り出すことにしています。こうした外部試験が英語の授業や入試で使われることが当たり前の時代が、遠からず来ることになるかもしれません。


プロフィール


渡辺敦司

著書:学習指導要領「次期改訂」をどうする —検証 教育課程改革—


1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。初等中等教育を中心に、教育行財政・教育実践の両面から幅広く取材・執筆を続けている。

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