高校の「垣根」が低くなる? 全・定・通や学校の枠

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入学した高校で、すべての単位を取って卒業する……。そんな普通の姿が今後、より柔軟になるかもしれません。中央教育審議会(中教審、文部科学相の諮問機関)のワーキンググループ(WG、作業部会)がまとめた論点整理で課題に挙げられ、2023年3月に発足した第12期中教審(任期2年間)で本格的に議論されるからです。これからの高校は、どうなるのでしょうか。

この記事のポイント

国公私の別も超えて

第11期中の2022年2月に発足した中教審の学校教育特別部会では、教科書・教材・ソフトウェアの在り方WG(22年3月発足)に続き、22年10月に「義務教育の在り方」「高等学校教育の在り方」で二つのWG設置を決定。特別部会との合同会議も含め各6回の会合を開き、次期中教審に引き継ぐ論点をまとめました。
このうち高校WGの論点整理では、都道府県や学校設置主体(国公私立)の別を超えた全国的な連携・推進体制の構築、学期ごとの単位認定や実効的な単位制の移行促進、全日制・定時制・通信制という課程区分の在り方などが挙げられました。

地域存続にも支障

背景の一つには、少子化の進行による学校統廃合があります。
2021年度、全国で公立高校がゼロの市町村は28.1%を占め、1校だけを加えると64.8%に上ります。近隣の高校と統合するにも遠く、廃校すると地域そのものの衰退につながりかねない市町村も少なくありません。一方で小規模化が進めば、科目開設にも支障をきたします。
そうした状況に対して、文部科学省は2015年度から「遠隔授業」を制度化しています。高校側に免許を持った教員がいなくても双方向型の配信授業により科目が開設できるため、地域の小規模校でも十分な教育が保障できるというわけです。

「勤労青少年」向けだった課程も変化

もう一つの背景には、生徒の多様化に加え、新型コロナウイルス感染症による休校措置の影響でオンライン授業が一気に進んだことがあります。
かつて定時制・通信制の高校は、日中に仕事をする勤労青少年を主な対象としていました。しかし今や定時制は、不登校や外国にルーツを持つ生徒など、多様な生徒の受け皿になっています。時間を自由に使いたいと、積極的に通信制を選択する生徒も増えています。
オンライン授業が日常化した結果、全日制と、メディアを活用した通信制の違いも曖昧になってきました。一方、通信制であっても、学習指導要領が求める「主体的・対話的で深い学び」(アクティブ・ラーニング=AL)を、しっかり行ってもらう必要があります。
こうしたことから、全定通の在り方も論点に浮上したわけです。

まとめ & 実践 TIPS

日常の授業でも、遠くにいる専門家や高校生などとオンラインでつながる風景が珍しくなくなりました。都道府県の枠を超えて1年間または3年間の国内留学を推進する「地域みらい留学」(一般財団法人地域・教育魅力化プラットフォーム実施)には、2022年4月時点で全国98校が参加しています。
今後とも対面での学びは重要ですが、学校や地域の枠を超えた学びは、高校教育の質をさらに高めてくれる可能性を秘めています。今後、第12期中教審の審議動向に注目する必要がありそうです。

(筆者:渡辺 敦司)

中教審 個別最適な学びと協働的な学びの一体的な充実に向けた学校教育の在り方に関する特別部会・義務教育の在り方ワーキンググループ・高等学校教育の在り方ワーキンググループ合同会議 配付資料
https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo3/087/siryo/1416449_00002.htm

地域みらい留学
https://c-mirai.jp/

プロフィール


渡辺敦司

著書:学習指導要領「次期改訂」をどうする —検証 教育課程改革—


1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。初等中等教育を中心に、教育行財政・教育実践の両面から幅広く取材・執筆を続けている。

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