次の教育の目標「ウェルビーイング」って? 入試に出るかも…

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政府が3月にも閣議決定する次期教育振興基本計画の策定作業が、中央教育審議会で大詰めを迎えています。そこで打ち出されているのが「ウェルビーイング」です。まだ一般にはなじみのない言葉でしょうが、教育界には徐々に浸透しつつあります。もしかすると「持続可能な開発目標(SDGs)」のように、入試などでも定番テーマになるかもしれません。

この記事のポイント

個人と社会が精神的・社会的にも幸福で健康に

Well-beingを直訳すれば「よく生きること」になりますが、『Eゲイト英和辞典』(ベネッセコーポレーション)では「満足な生活状態、幸福で健康な状態;福利、福祉」と訳されています。
古くは1947年採択の世界保健機関(WHO)憲章の前文に、健康の定義の中で「病気でないとか、弱っていないということではなく、肉体的にも、精神的にも、そして社会的にも、すべてが満たされた状態にあること」(日本WHO協会仮訳)として登場。その後も国連などの文章で、さまざまに使用されています。
2015年の国連サミットで採択されたSDGsにしても、進歩とウェルビーイングに向かうための、今までと違った在り方を探る努力として提唱されたものです。17の目標にも「すべての人に健康と福祉を(GOOD HEALTH AND WELL-BEING)」(目標3)が掲げられています。
近年では経済界でも、企業の社会的責任や働き方改革といった観点から、ウェルビーイングに注目が集まっています。

OECDが学びの在り方としても提唱

日本の教育界で最初にウェルビーイングが注目されたきっかけは、経済協力開発機構(OECD)が2015年の「生徒の学習到達度調査」(PISA)に関して出した『生徒のwell-being』と題する報告書(邦訳は国立教育政策研究所)です。そこでは「生徒が幸福で充実した人生を送るために必要な、心理的、認知的、社会的、身体的な働き(functioning)と潜在能力(capabilities)」だと定義しています。
さらに注目を集めたのが、OECDが新しい時代にふさわしい教育の在り方を提唱する「Education 2030 プロジェクト」です。そこでは人間の学びを登山になぞらえ、子どもがコンピテンシー(資質・能力)を羅針盤(コンパス)としながらエージェンシー(変革を起こすために目標を設定し、振り返りながら責任ある行動をとる能力)を発揮して、さまざまな人たちと協力しながら歩み、個人と社会のウェルビーイングという理想の目的地を目指すイメージが示されています。

子どもや教師にも不可欠

教育振興基本計画は2006年の改正教育基本法に基づき、政府が5年ごとに策定する計画です。自治体にも同様の計画策定が努力義務とされており、国はもとより地方の教育政策にも大きな影響を与えます。2018~2022年度は、第3期計画に基づいています。

まとめ & 実践 TIPS

次期計画では、個人のウェルビーイングを支える要素として学力や学習環境、家庭環境、地域とのつながりなどを整備する施策を講じていくよう求めるとともに、子どもたちのウェルビーイングを高めるためには教師のウェルビーイングを確保することも必要だと指摘しています。「日本発」(中教審の審議経過報告)であるとともに、教育発で日本社会の在り方を問い掛けるようなウェルビーイングの提唱であってほしいものです。

(筆者:渡辺 敦司)

次期教育振興基本計画の策定に向けたこれまでの審議経過報告に関する意見募集の実施について
https://public-comment.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCM1040&id=185001282&Mode=1

プロフィール


渡辺敦司

著書:学習指導要領「次期改訂」をどうする —検証 教育課程改革—


1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。初等中等教育を中心に、教育行財政・教育実践の両面から幅広く取材・執筆を続けている。

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