教員採用試験はどうなる? 「早期化」で人気は回復するのか

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倍率低下に悩む公立学校の教員採用試験をめぐり、文部科学省や都道府県教育委員会など関係団体が協議会をつくり、改善策に取り組むことになりました。民間企業などに流れる優秀な人材を引き留めたい考えですが、これで教員人気は回復するのでしょうか。

この記事のポイント

3倍を割る深刻な状況が続く

文科省の調査によると、公立小学校の採用倍率は全国平均で2019年度に2.8倍と、3倍を割りました。その後も過去最低を更新し続け、22年度は2.5倍です。
しかも小学校の採用区分を設けている57道府県・指定都市のうち3倍を下回るのは、約4分の3に当たる42道県市。17県市では1倍台です。
優秀な人材を採るには3倍以上が必要だ、というのが採用担当者の経験則です。既に採用段階では、思うような教員がずっと確保できていないというわけです。
一方、中学校は4.7倍(前年度比0.3ポイント増)、高校は5.4倍(同1.2ポイント減)です。一見、3倍を超えているから大丈夫なように見えますが、これはあくまで教科ごとの採用も平均したものです。5年前(2017年度)には中学校が7.4倍、高校が7.1倍でしたから、やはり急速に低下していることがうかがえます。

協議会で検討、2024年度にも実施へ

状況を深刻に受け止めた文科省は2022年10月19日、都道府県・政令指定都市教委や大学関係団体などでつくる協議会の初会合をオンラインで開催し、採用試験を1~2カ月、または3カ月前倒しすることなどを検討することにしました。23年5月をめどに議論を取りまとめ、早ければ24年度採用試験から適用したい考えです。
これまで教員採用試験は、4~5月に出願、7月に1次試験、8月に2次試験、9~10 月に合格発表・採用内定というのが一般的でした。しかし、これでは早期化する企業の就職内々定が出てからになってしまいます。教育実習を大学4年生の前期に行う場合、採用試験時期と重なったり、企業の就職活動に支障をきたしたりするという問題も抱えていました。

教育実習も一部代替へ

採用試験の早期化は、2022年10月5日に公表された中央教育審議会(中教審、文部科学相の諮問機関)の特別部会中間まとめの提言によるものです。採用試験ではこの他、年複数回実施(複線化)も提言しています。
採用試験だけではありません。3~4週間という短期集中型の教育実習を、通年で決まった曜日に実施するようにしたり、一部を早い年次の「学校体験活動」(学校ボランティア)で代替させたりすることも提案しています。
一方で中間まとめは、教職大学院で行われてきた手法である「理論と実践の往還」を学部段階から行うなど、教員養成の高度化も求めています。

まとめ & 実践 TIPS

大学関係者によると、教員養成学部では近年、優秀な学生が採用試験を避ける傾向がみられるといいます。早期にボランティアなどで多忙化する学校現場の実態を知るにつけ、「自分には務まらない」と思うのだそうです。
単に民間に合わせて早期化すれば問題は解決する、という単純な話ではないようです。中間まとめも指摘しているように、教師人気の回復には「学校の働き方改革」が不可欠です。

(筆者:渡辺 敦司)

中央教育審議会「令和の日本型学校教育」を担う教師の在り方特別部会 中間まとめ(2022年10月5日)
https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo16/mext_01239.html

2022年度(21年度実施)公立学校教員採用選考試験の実施状況について
https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/senkou/1416039_00006.html

プロフィール


渡辺敦司

著書:学習指導要領「次期改訂」をどうする —検証 教育課程改革—


1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。初等中等教育を中心に、教育行財政・教育実践の両面から幅広く取材・執筆を続けている。

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