2030年、授業も教科書も教室も「大改革」!?

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文部科学省の伯井美徳・初等中等教育局長が講演で、学習指導要領を改訂する準備の議論を、秋にも始めると表明しました。高校では2022年度の新入生から、ようやく「新」指導要領が全面実施に入ったところです。それなのに、もう「次」の議論を始めるというのは、なぜでしょうか。どうやら「2030年」に向けて、指導要領にとどまらない大きな改革を考えているようです。

この記事のポイント

指導要領の改訂に向け「特別部会」で議論

指導要領は、時代の変化などに合わせて、おおむね10年に1度、改訂されてきました。新指導要領は、小中学校が2017年度に、高校が2018年度に改訂(告示)され、周知期間を経て、小学校は2020年度から、中学校は2021年度から、全学年一斉に全面実施となっています。
伯井局長は講演で、「仮に10年後」に改訂するなら、次は2027年度からになり、小学校は2030年度から全面実施になるという見通しを示しました。

その上で伯井局長は、2022年2月に発足した中央教育審議会(文部科学相の諮問機関)の「学校教育の在り方特別部会」で秋ぐらいから本格的な議論を始め、2024年か2025年に方向性を出してもらってから、改めて中教審に改訂を諮問したい考えを明らかにしました。
※「個別最適な学びと協働的な学びの一体的な充実に向けた学校教育の在り方に関する特別部会」

学校の役割や教員配置も含めて

「次」の改訂をめぐっては、政府重要会議の一つである総合科学技術・イノベーション会議(CSTI)が「政策パッケージ」(6月に正式決定)で、指導要領の方向性はもとより、学校の役割や教職員配置、多様な学びの場の確保、教育支出の在り方なども含めて、中教審の特別部会で検討すると位置付けています。
※「Society 5.0の実現に向けた教育・人材育成に関する政策パッケージ」

新型コロナウイルス感染症への対応をきっかけに、小中学校では1人1台のICT(情報通信技術)端末を整備する「GIGAスクール構想」が一気に実現しました。デジタル教科書・教材の普及と相まって、授業の風景もずいぶん変わりました。

また、増加する不登校や発達障害、外国にルーツを持つ子ども、特異な才能など、多様化する児童生徒一人ひとりに対し、「個別最適な学び」で、きめ細かな対応をすることも課題です。1クラス35~40人という固定化したクラスの在り方そのものが問われています。
一方で、多様な人々で構成させる社会の担い手を育むには、多様な児童生徒が共に学ぶ「協働的な学び」も欠かせません。
これらの課題を一体で考えよう、というのが、政府・文科省の考えなのです。

「資質・能力」さらに重視、入試も変わる?

「新」指導要領では、「学力」の概念をさらに拡張させて、(1)知識・技能(2)思考力・判断力・表現力等(3)学びに向かう力・人間性等……という「資質・能力(コンピテンシー)」を育成する方向性を打ち出しました。「何を学ぶか」だけでなく、「何ができるようになるか」までを問うものです。
「次」の指導要領では、こうしたカリキュラム改革をさらに推し進めるものとみられます。

まとめ & 実践 TIPS

旧来のカリキュラムは、極端に言えば「何を知っているか」が重視される傾向にありました。今後、「何ができるようになるか」がいっそう問われることで、入試の在り方も当然、変わってくるでしょう。
2022年度に幼稚園の年少組の子は、2030年度には小学6年生で指導要領の切り替えを迎えます。年長組の子は中2で指導要領が切り替わり、高校進学時に全面実施が始まります。今の子どもたちにとって、決して先の話ではないのです。

(筆者:渡辺 敦司)

総合科学技術・イノベーション会議「Society5.0の実現に向けた教育・人材育成に関する政策パッケージ」
https://www8.cao.go.jp/cstp/giji/giji_r4.html

中央教育審議会 初等中等教育分科会「個別最適な学びと協働的な学びの一体的な充実に向けた学校教育の在り方に関する特別部会」
https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo3/087/index.html

プロフィール


渡辺敦司

著書:学習指導要領「次期改訂」をどうする —検証 教育課程改革—


1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。初等中等教育を中心に、教育行財政・教育実践の両面から幅広く取材・執筆を続けている。

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