大学は既に「脱・文理分断」へ動き出す

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高校生が大学進学を考える際、まず文系か理系かを選択することが一般的になっています。しかし大学の側では、「文理分断」を脱して「文理横断・融合」の教育へと転換する動きが広がっています。背景には、何があるのでしょうか。

この記事のポイント

複数の専門領域から学ぶ学部も

文部科学相の諮問機関である中央教育審議会は、2022年6月に発足した大学分科会の「大学振興部会」で、文理横断・融合の在り方を検討しています。7月の会合では、4大学が事例を発表しました。
九州大学は、2018年度に「共創学部」(定員105人)を創設しました。「共創」とは「複数の専門領域を結びつけて課題解決の知へとつなげる協働知創造」(共創学部ホームページ)のことで、(1)課題構想力(2)協働実践力(3)国際コミュニケーション力(4)共創的課題解決力……を育みます。
「複数の専門領域」と言うからには、文系・理系といった区分には当然こだわりません。実際、共通基礎科目として「データサイエンス基礎」「科学論」「グローバル・エシクス(倫理)」など、文理横断の授業を用意しています。

全学生にSTEAMやデータサイエンスを必修化

全学的に文理横断・融合を進める例も増えつつあります。
金沢大学は2008年度、それまでの8学部25学科から、幅広く学ぶ「学域・学類制」(当時は3学域16学類)へと移行しました。現在、学域には「融合学域」「人間社会学域」「理工学域」「医薬保健学域」があります(19学類)。20年度には、全学生に「STEAM(科学、技術、工学、芸術、数学)教育」を必修化するとともに、専門教育でも「リベラルアーツ(教養)教育」を拡充しました。
両大学のような国立大学に限りません。仏教系の大正大学は、地域課題を解決するリーダーとしての「地域戦略人材」育成を掲げ、2021年度から全1年生に「探究科目」「データサイエンス科目」を必修化しました。
東洋大学の経済学部経済学科では2022年度、半数以上が数学必須型の入試を経て入学したといいます。「どこの大学にもある普通の学科」ながら、女子や進学校からの受験生比率が上昇するなど、意外な効果もあったといいます。

高校でも文理両方をしっかり

こうした大学が文理横断・融合に取り組んでいるのは、社会からの要請に応えようとするためです。
データサイエンスをはじめとして、仕事をするには、文系・理系にこだわっている時代ではなくなっています。文系にも理系の素養が、理系にも文系の素養が求められます。

まとめ & 実践 TIPS

高校では、大学入試科目を意識して、早くから文系クラスか理系クラスに分けることが一般的です。ただし進学後には、文系・理系にこだわらない学びが待っていることも、自覚しておかなければなりません。
これからは科目の好き嫌いで文理選択をするのではなく、何を学び、どんな資質・能力を身に付けて社会に貢献したいのかを考えて、大学選びをすることが求められるでしょう。受験科目に限らず、どの授業もしっかり勉強しておく必要があることは、言うまでもありません。

(筆者:渡辺敦司)

中央教育審議会大学分科会大学振興部会(第2回)会議資料
https://www.mext.go.jp/kaigisiryo/mext_00403.html

プロフィール


渡辺敦司

著書:学習指導要領「次期改訂」をどうする —検証 教育課程改革—


1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。初等中等教育を中心に、教育行財政・教育実践の両面から幅広く取材・執筆を続けている。

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