日本の高校生、コロナを正しく怖がれている!?

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新型コロナウイルス感染症の下で3度目の夏を迎え、学校でマスクを外していいかが議論になっています。日本は他国に比べ、過剰にマスクを着ける傾向にあるとも指摘されます。コロナ禍に対する子どもたちの意識は、どうなっているのでしょうか。国立青少年教育振興機構が毎年行っている、日米中韓4か国の高校生比較調査から見ていきましょう。

この記事のポイント

マスク着用率は4か国で断トツ

2021年9月から2022年2月にかけて行われた今回の調査は、「コロナ禍を経験した高校生の生活と意識に関する調査」と銘打って、感じたことやメンタルヘルス(心の健康)、ライフスキル(日常生活に効果的に対処する能力)なども調べました。
マスクを「常にしている」と回答した高校生の割合は、日本95.3%、韓国83.9%、中国70.6%、米国51.5%と、やはり日本が最も高くなっています。
一方で、常に「距離をとって話す」のは16.4%と、米国(11.3%)に次いで低い数値でした。その代わりマスクに依存しているというわけですが、引き続き密接なコミュニケーションを大事にしたい、という気持ちの裏返しと捉えることもできそうです。

情緒は比較的安定

メンタルヘルスをめぐっては、「神経がたかぶり、心が安定しない」「なんとなくいらいらする」「眠れない」「ものごとに集中できない」と回答した割合(「よくある」「ときどきある」の合計)が4か国の中で最も低くなる(微差も含む)など、情緒は比較的安定しているようです。
同様に、「家族」「友達」への信頼感が高くなったり、自分の感情を素直に表現でき他人への思いやりも持っていたりする、と報告書はみています。国際的に見れば、コロナ禍とうまく付き合えているといえそうです。

恐怖感は将来への意識と関連

日本の青少年は将来への希望を抱きにくいことが、同調査を含めた各種国際比較調査から指摘されています。
今回の調査を2018年と比較すると、「自分の将来に不安を感じている」が74.6%→78.6%に増える一方、「将来への希望を持っている」が64.6%→76.1%となるなど、変化の兆しもみられます。
ただし、将来の希望や不安を意識している者ほど、新型コロナへの恐怖も強くなっているといいます。コロナ禍に柔軟に対応しながらも、影響を受けている可能性は否定できません。

まとめ & 実践 TIPS

報告書の中でも指摘されている通り、コロナ禍は、嫌でも私たちが「VUCA(不安定、不確実、複雑、曖昧)の時代」にあることを意識させました。これから何が起こるかわからない時代を担う子どもたちを、どう支え、どんな力を付けさせていけばいいのか。大変な状況がなかなか終息しない時だからこそ、大人も子どもとコミュニケーションを取りながら、一緒に考えていきたいものです。

(筆者:渡辺 敦司)

コロナ禍を経験した高校生の生活と意識に関する調査報告書-日本・米国・中国・韓国の比較-
https://www.niye.go.jp/kenkyu_houkoku/contents/detail/i/161/

プロフィール


渡辺敦司

著書:学習指導要領「次期改訂」をどうする —検証 教育課程改革—


1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。初等中等教育を中心に、教育行財政・教育実践の両面から幅広く取材・執筆を続けている。

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