これからの時代、子どもたちが科学を知るメリットは? 教育系YouTuber市岡元気先生に聞く

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AI学習ツールに宇宙旅行も実現……? 身のまわりに新しいテクノロジーがあふれるなか、正しい科学知識をもつ重要性が増しています。子どもに身に付けてほしいと思うものの「情報が多くて何が正しいのかわからない」ととまどいを感じている保護者も多いのではないでしょうか。

そこで、「300実験生配信」などYouTubeの実験動画が子どもから大人まで大人気、『おうちでできるオモシロ実験!』(講談社)も出版されたサイエンスアーティストの市岡元気先生に「気軽に取り組める科学の学び方」「科学の魅力」を伺いました。子どものうちから正しい科学知識にふれるメリットとは?

この記事のポイント

科学知識は自分を助けてくれる身近なもの

──「科学」というと、ノーベル賞をとるような難しい学問のように聞こえます。

市岡元気先生(以下元気先生):そうですね。真鍋淑郎先生のノーベル物理学賞受賞がニュースになりました。物理学と聞いて自分たちとはかけ離れた世界の印象をもったかたもいるかもしれません。

ところがそうではないんです。真鍋先生のつくった「気候モデル」は、二酸化炭素の増加が地球温暖化の原因だと証明しました。それって、今の僕らの生活に無関係ではないですよね。

──そうですね。子どもたちも学校で気候変動について学んでいます。

元気先生:科学は私たちのまわりにたくさんあります。それに関心をもつかもたないかで、生活が変わってくることがあるんですよ。

少し前に、東京の地下鉄駅構内で硫酸が使われた事件があり、YouTubeチャンネル「GENKI LABO」でも硫酸についての動画を公開しました。もちろんあってはならないことですが、「硫酸とはどんなものなのか」「硫酸が付いてしまった場合はどうしたらいいのか」などの知識をもっていれば、少しでも対策することができます

逆に科学の知識がないと、生活に支障をきたすことも考えられます。

正しい情報を得るために、メディアリテラシーと科学リテラシーが必要

──どういうことですか?

元気先生:今はネットからいろんな情報が入ってくるので、いわゆる陰謀論みたいなものを耳にすることもあると思います。「地球は温暖化していない」など、事実をねじ曲げたものやうわさに過ぎないものも情報としてたくさん流れているんですね。正しい科学知識をもっていれば「この情報はまちがっている」とわかります。逆に知識がないとニセ情報に騙されたり、人の意見に左右されて不安になったりしてしまいます。

──大人にも子どもにも正しい知識が必要ですね。

元気先生:子どもたちの周りにも、怪しい情報やまちがった情報が常に忍び寄ってきます。そんななか何を信じればいいのか、そこから自分がどういう判断をするか。取捨選択するためにも正しい情報を手に入れることが重要だと思っています。

メディアリテラシー、科学リテラシーの両方を身に付けて、ちゃんと自分の中での正解をもてるようになることが大切です。

科学実験で、知識と論理的な考え方が身に付けられる

──子どもたちがメディアと科学のリテラシーを身に付けるにはどうしたらよいでしょうか。

元気先生:論理的で科学的な考え方を身に付けることが有効です。そのためにおすすめしたいのが、僕もよくやっている科学実験。実験をすることで科学的な知識を体験として得られるだけではなく、事実を元に正しい結果にたどり着く習慣付けもできるんですね。

『おうちでできるオモシロ実験!』で紹介した「ペットボトルに出入りするたまご」は、固体・液体・気体の≪水の三態変化≫を利用した実験。うずらのゆでたまごが吸い込まれることで、目に見えない水蒸気の存在が確認できます。事象を自分の目で見ることで理論を実感し「なるほど」と腹落ちさせることができれば、それは決して忘れない知識となるわけです。

失敗から学ぶことも多い。恐れずチャレンジしよう

──実験が実体験になるということですね。自宅で実験をしてうまくいかないときはどうしたらいいですか?

元気先生:実験には失敗がつきもので、それはある意味チャンスです。「なぜ失敗したのか」「成功させるにはどこを変えたらいいのか」を検証し再チャレンジすることで、より深く理解することができます。

ちょっとした条件の違いで2回、3回と失敗が続くこともあるかもしれません。それでも原因を考えながらトライ&エラーをくり返す経験は、勉強だけでなく生活、人生そのものに役立つと信じています。子どもたちには恐れずチャレンジしてほしいですし、保護者のかたはそういう機会をたくさん与えてあげてほしいなと思います。

──元気先生にとって、科学はどんなものでしょうか。

元気先生:ホウキでは無理でも飛行機を使えば空を飛べます。これから僕たちも簡単に宇宙旅行に行けるようになるかもしれません。

科学は人の生活を豊かにし、ファンタジーを現実にできるもの。そんな科学に興味をもつ人が増え、夢を叶えてくれるものがもっともっと生み出される未来を楽しみにしています。

まとめ & 実践 TIPS

実体験で得た正しい科学知識は自分を助けてくれるというお話は、子どもの教育だけでなく、保護者自身にも参考になるもの。まずは身のまわりの「科学」を見つけて、子どもと一緒に実験・検証してみてはいかがでしょうか。

編集/樋口かおる 執筆/橘川麻実


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『おうちでできるオモシロ実験!』(市岡元気著、講談社刊)

「マジックゼリー」や「宝石せっけん」など、身近にある材料を使ってできる簡単で面白い20種類の実験を収録。市岡元気先生のYouTube撮影の裏側も紹介。

プロフィール

市岡 元気

市岡 元気(いちおか げんき)

東京学芸大学初等教育教員養成課程理科選修を卒業。2019年、YouTubeチャンネル「GENKI LABO」を本格始動。現在登録者数40万人超。同年、株式会社GENKI LABO設立と同時にCEOに就任。数々のサイエンスライブ、実験教室を全国各地で開催。最近ではオンラインを活用した実験教室も人気に。世界中のどんな実験でも再現可能ということで2021年5月4日には1日で300の実験をライブで披露した。バラエティー番組などで、罰ゲームやドッキリ企画の実験・監修をするほか、YouTubeでは「QuizKnock」「水溜りボンド」「スカイピース」「すしらーめん りく」などに実験協力も。科学の面白さを多くの人に知ってもらうためにマルチに活動するサイエンスアーティスト。

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