時代の変化に適応した教育制度・人材育成を目指す「科学技術・イノベーション基本計画」とは

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これまで文部科学省や経済産業省がばらばらに取り組んできた教育や人材育成について、総合科学技術・イノベーション会議(CSTI)がワーキンググループ(WG)を設け、政府を挙げて取り組むための検討を始めました。
いま幼児を育てている保護者にとっても、無縁ではなさそうです。

この記事のポイント

「なぜ?」から始まる「新たな価値」

CSTIは、国の科学技術・イノベーション(技術革新)政策の企画立案と総合調整を担う、政府の重要会議です。

1996年度から策定されてきた「科学技術基本計画」(計画期間5年間)は、第5期(2016~2020年度)まで、研究を担う人材の育成に対象を絞ってきました。
一方、第6期(2021~2025年度)から、同計画は「科学技術・イノベーション基本計画」と銘打つことにしました。

2021年3月に閣議決定された第6期計画では、国としてSociety5.0(超スマート社会)を目指すに当たって、▽国民の安全と安心を確保する持続可能で強靭な社会▽一人ひとりの多様な幸せ(well-being)が実現できる社会……の実現を掲げ、政策の柱の一つに「教育・人材育成」を位置付けました。

そこでは、世代を問わず、新たな価値を生み出す人材を輩出するため、初等中等教育(幼稚園から高校まで)の段階から、児童生徒の「なぜ?」「どうして?」を引き出し、探究力を育成する必要性が指摘されています。

国内外で既に「同じ方向」

CSTIの下に置かれた教育・人材育成WGには、CSTIの有識者議員8人に加え、中央教育審議会(中教審、文部科学相の諮問機関)と産業構造審議会(産構審、経済産業相の諮問機関)で委員を兼ねる有識者9人も、名を連ねています。
省庁の枠を超えて認識の共有を図り、教育・人材育成の条件づくりに本気で取り組もう、というわけです。

2021年8月に開かれた同WGのキックオフミーティング(立ち上げ会合)でも、これまでSociety5.0のための人材像や資質・能力に関する提言は、第6期計画をはじめ中教審や学習指導要領、教育再生実行会議、経産省「『未来の教室』と研究会」といった政府部内はもとより、日本経済団体連合会(経団連)、経済協力開発機構(OECD)など国内外で「基本的には同じ方向を目指している」ことを確認しています。

「あるべき論」から具体化へ

その上で、もう「あるべき論」を語るのではなく、実行のための具体策を検討する段階に入っていることを強調。今後5~10年にわたり、制度改善や予算配分といった政策を整理し、オールジャパンで取り組むための見取り図を描くとしています。
取りまとめは2021年度内にも行う予定で、2021年度や2022年度の政府予算にも反映させたい考えです。

まとめ & 実践 TIPS

同WGの視野には、指導要領が入っていることも見過ごせません。新しい指導要領は2020年度の小学校を皮切りに順次、全面実施に入っており、その着実な実施のための具体策も期待されます。

指導要領は、おおむね10年に1度のペースで改訂されます。新指導要領の「次」に関しても、検討が及ぶ可能性があります。
まだ就学前の幼児を抱える家庭にとっても、将来の教育や人材育成の在り方がどうなるか、見過ごせません。

総合科学技術・イノベーション会議 教育・人材育成ワーキンググループに向けたキックオフミーティング
https://www8.cao.go.jp/cstp/tyousakai/kyouikujinzai/kickoff/kickoff.html

教育・人材育成ワーキンググループ(第1回会合)
https://www8.cao.go.jp/cstp/tyousakai/kyouikujinzai/1kai/1kai.html

プロフィール


渡辺敦司

著書:学習指導要領「次期改訂」をどうする —検証 教育課程改革—


1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。初等中等教育を中心に、教育行財政・教育実践の両面から幅広く取材・執筆を続けている。

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