日本の「才能教育」の在り方、どう考える?「最先進国」米国との違いとは

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「才能教育」の在り方について、文部科学省が有識者を集めて、検討を始めました。題して「特定分野に特異な才能のある児童生徒に対する学校における指導・支援の在り方等に関する有識者会議」。いったい、何が話し合われるのでしょうか。

この記事のポイント

1月の中教審答申を受けて検討

有識者会議の発足は、幼・小・中・高校の教育の在り方を総合的に検討した、2021年1月の中央教育審議会の答申によるものです。
答申では、特異な才能をどのように定義し、見いだし、その能力を伸ばすかの議論が、これまで十分に行われてこなかったと指摘。
遠隔・オンライン教育も活用して、実証的な研究開発を行いながら、▽知的好奇心を高める発展的な学習を充実する▽大学・民間団体が実施する学校外の学びにつなぐ……など、指導や支援の在り方を検討するよう提案しました。

米国では3類型

ところで「才能教育」とは、どういうものでしょうか。初会合での委員の発表から見ていきましょう。
座長も務める岩永雅也・放送大学長(教育社会学)によると、「最先進国」の米国では、「才能教育」を次のように類型化されています。

(1)早修教育
(2)拡充教育
(3)(Twice-Exceptional=2重の特異)教育

このうち(1)には、飛び級や早期入学(飛び入学)などが当てはまります。これに対して(2)は、在籍する学校や学級はそのままで、個人指導や特別なブログラム、コンテスト参加など、能力を伸ばすチャンスを別に与えるものです。
さらに近年では、特異な才能があるだけでなく、発達障害などを併せ持つ(3)への対応も注目されているといいます。

松村暢隆・関西大学名誉教授(発達・教育心理学)は、知能指数(IQ)の高さのように一元的に判断するのではなく、才能が発揮される「領域」(特定分野)にも着目すべきだと指摘しました。その分野には特異な才能を見せても、別の分野ででているとは限らないからです。(3)のように、困難に応じたサポートが必要になる場合もあります。

「年齢主義」強い日本になじむのは…

ところで日本には、社会人になっても、学年による先輩・後輩の関係を引きずるほど、強い「年齢主義」の文化があります。高校2年生から大学に入学できる「飛び入学」でさえ、ごく一部の大学を対象とした例外措置扱いのままです。ましてや飛び級は、今も認められていません。
ただ、才能が領域ごとに発揮されるものだとしたら、必ずしも飛び級がよいとは限りません。学力的に高くても、精神的に幼く、集団になじめないなどのデメリットもあるからです。2Eの場合は、なおさらです。
松村名誉教授は、ごく一部の突出した才能ある子を取り出した「狭義の才能教育」と、すべての子どもを対象とした「広義の才能教育」に分けることを提唱しました。年齢主義の強い日本の場合、狭義の才能教育としての早修教育は、なじみにくいのが現実です。そのため、広義の才能教育として、拡充教育の機会を提供する方が合っている、というわけです。

まとめ & 実践 TIPS

私たちは「天才」というと、つい万能に秀でていることを期待しがちになります。しかし実際には、多様です。
一人ひとりの特性に着目し、よいところはどんどん伸ばし、困っている部分はしっかりサポートする。そんな基本は変わらないようです。

特定分野に特異な才能のある児童生徒に対する学校における指導・支援の在り方等に関する有識者会議(第1回)会議資料
https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shotou/169/siryo/mext_00004.html

プロフィール


渡辺敦司

著書:学習指導要領「次期改訂」をどうする —検証 教育課程改革—


1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。初等中等教育を中心に、教育行財政・教育実践の両面から幅広く取材・執筆を続けている。

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