『大学入学共通テスト』記述式や民間英語試験の活用断念をどう考える?

2021年1月から大学入試センター試験に代わって行われている「大学入学共通テスト」をめぐって、文部科学省は近く、記述式の導入と、民間英語資格・検定試験の活用を、今後も断念することを、大学などに通知します。有識者や大学・高校関係団体の代表者などを委員とした「大学入試のあり方に関する検討会議」の提言を受けたものです。この問題を、どう考えればいいのでしょうか。

この記事のポイント

大学入試の「原則」に照らして

共通テストの二つの「目玉」ともみられた記述式と民間英語試験は、実施1年余り前の2019年末になって、萩生田光一文部科学省が、相次いで見送りを決断しました。一方、新しい学習指導要領で学んだ高校生が受験する2025年1月以降の共通テストで、これら二つをどう扱うかは、検討会議の議論に委ねていました。
検討会議の提言では、「大学入学者選抜に求められる原則」として、
(1)受験する大学に必要な能力・適性などの判定
(2)形式的公平性の確保、実質的公平性の追求
(3)高校教育と大学教育を接続する教育の一環としての実施
があることを確認しました。
その上で、原則に照らすと、50万人規模が受験する共通テストでは、②の公平性や公正性が確保できないとして、導入や活用の断念を提言したのです。

問うなら各大学の個別試験で

注意したいのは、記述式で問おうとした思考力・判断力・表現力や、民間英語試験で見ようとした総合的な英語力の育成を、決して否定していないことです。逆に、高校教育や大学教育で、更に伸ばすことを求めています。
そこで提言は、共通テストと各大学の個別試験で、役割分担をするよう求めました。記述式や英語民間試験で問える力を入試で課したいのなら、個別試験でしっかり出題するべきだとしたのです。

高校と大学の「教育」で伸ばす必要

そこで、(1)や(3)の原則が注目されます。
思考力・判断力・表現力や、総合的な英語力は、高校の新しい指導要領でも、育成が重視されているものです。また、多くの大学にとっても、社会に有為な人材を送り出すためには、不可欠になります。
提言では、「望ましい能力・適性の全てを大学入学者選抜で問おうとすることは現実的ではない」とさえ述べています。学生を送り出す高校側と、そうした学生を引き受けた大学側の、双方の教育で、しっかり伸ばすことを求めているのです。

まとめ & 実践 TIPS

高校教育と大学教育、そして、その間にある大学入試の3者を、一体で改革しようというのが、「高大接続改革」のそもそもの狙いです。
その一環として構想した共通テストは、導入前に、出題方法でつまずいてしまいました。しかし出題方式は、あくまで入試の技術的な問題にすぎません。
受験生にとっても、受験科目に振り回され過ぎず、まずは高校のどの授業もしっかり受け、大学入学後の学習に生かす姿勢が求められるでしょう。

大学入試のあり方に関する検討会議 提言
https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/koutou/103/toushin/mext_00862.html

プロフィール

渡辺敦司

渡辺敦司

1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。連載に「『学力』新時代~模索する教育現場から」(時事通信社「内外教育」)など。

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