「ブラック校則」見直しのプロセスは子どもの「主体性」を育成する機会になる?!

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他のクラスへの出入り禁止、髪の毛が茶色の場合は地毛証明書を提出……。現在では合理性を欠くような「ブラック校則」の存在が、改めて注目されています。一方で、生徒の声をきっかけに校則を見直すだけでなく、校則見直しのプロセスそのものを学習機会にする動きもあります。今どきの校則問題を、どう考えればよいのでしょうか。

この記事のポイント

文科省は絶えず見直し求める

校則には、法令上の規定があるわけではなく、集団生活の場に必要な一定の決まりとして、伝統的に設けられているものです。

文部科学省は、生徒指導の基本を示した「生徒指導提要」で、校則の内容は「社会通念に照らして合理的とみられる範囲内」で学校が決めることができるとする一方、しつけや道徳、健康など細かいところまで規制するのではなく、教育目標や、児童生徒の主体的な取り組みに任せるべきだとの考えを示しています。

さらに、校則に基づいて指導を行う場合でも「児童生徒の内面的な自覚」を促すことが重要だとして、規則を守らせることのみの指導に陥らないよう注意を促しています。
その上で、以下のような事項などから、絶えず積極的に見直すよう求めています。

  • ・児童生徒の実情
  • ・保護者の考え方
  • ・地域の状況
  • ・社会の常識
  • ・時代の進展

プロジェクト化の動きも

さらに生徒指導提要では、児童会・生徒会や学級会で考えさせる機会を設けることで、自主的に校則を守るようになるだけでなく、学習面や部活動で成果を上げるようになった事例を紹介しながら、校則の見直しが「児童生徒の主体性を培う機会」にもなると意義を強調しています。

近年では、外部と連携した取り組みも出てきました。認定NPO法人カタリバは、経済産業省「未来の教室」実証事業の一環として、私立安田女子中学高校(広島市)など3校で「ルールメイカー育成プロジェクト」を実施しています。ここで開発された手法は、全国の学校で実施可能だといいます。

国際機関も提唱する考え方と共通

校則見直しの意義を考える上で、参考になる考え方があります。経済協力開発機構(OECD)が提唱する教育モデル「ラーニング・コンパス(学びの羅針盤)」の中で掲げた「エージェンシー」(変革を起こすために目標を設定し、振り返りながら責任ある行動をとる能力)です。

OECD出向中にアナリストとして携わった文科省の白井俊・教育制度改革室長は、学級運営はもとより、家庭生活や、地域コミュニティーなどに何らかの課題があれば、自分ができることやすべきことを考え、行動していくことが求められるものだと説明しています(『OECD Education2030プロジェクトが描く教育の未来』、ミネルヴァ書房)。

まとめ & 実践 TIPS

新学習指導要領では「主体的・対話的で深い学び」(アクティブ・ラーニング)が求められ、大学入試でも「主体性を持って多様な人々と協働して学ぶ態度(主体性・多様性・協働性)」が評価されます。何より「主体的に社会の形成に参画」する態度を養うこと(教育基本法)は、教育の目標の一つです。
先行き不透明な社会に乗り出す子どもたちに、そうした主体性を育む機会として、校則の見直し問題を考えてはどうでしょうか。

生徒指導提要
https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/seitoshidou/1404008.htm

プロフィール


渡辺敦司

著書:学習指導要領「次期改訂」をどうする —検証 教育課程改革—


1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。初等中等教育を中心に、教育行財政・教育実践の両面から幅広く取材・執筆を続けている。

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