地方国立大学の定員増へ! 学費の安い国立大学に進学するチャンスが増える?!

政府は、地方国立大学の定員を2022年度にも増やす方針を決めました。身近で学費の安い国立大学に進学するチャンスが増えることは、地元の保護者にとっても朗報です。ただし、定員増が認められるには、さまざまな条件が付きそうです。そもそも文部科学省は、これまで原則として、国立大学の定員増を認めてきませんでした。なぜ今回、方針を転換することになったのでしょうか。

この記事のポイント

地方創生のため限定的に

今回の方針は、2020年7月に閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)2020」と「まち・ひと・しごと創生基本方針2020」を受けたものです。これらをもとに、内閣官房に「地方創生に資する魅力ある地方大学の実現に向けた検討会議」が設けられ、20年12月に取りまとめを行いました。つまり、地方国立大学の定員を増やすのは、政府が進める「地方創生」の観点からです。
しかも、取りまとめでは「極めて限定的な場合に」「特例として」認められるべきだとしています。

地域全体に弱体化の恐れ

大学をめぐっては、主な入学年齢である18歳の人口が年々減少しており、学生の確保が難しくなっています。日本私立学校振興・共済事業団の調査を見ても、定員を満たせない私立大学が3割を占めています。内閣官房の取りまとめでも、2030年までに定員500人程度の中堅大学が160校も減る可能性がある、という試算を紹介しています。

一方、地方国立大学は、2004年度に法人化されて以降、十分な予算が確保できないなど「体力はかなりがれ、疲弊している」(取りまとめ)のが現状です。私大もそうですが、地方国立大学までも弱体化してしまっては、学生となる若者が地域から離れるだけでなく、地域が「知の拠点」を失い、経済的・社会的価値を損なう恐れがあります。

デジタル革新などの拠点化を期待

検討会議は、各地域で、国公私の別を越えた大学間の連携と、とりわけ国立大学には、「痛みを伴う」こともいとわない、徹底した大学改革を求めています。

さらに、定員増の要件として、地方創生に資するものであることが前提だとしています。具体的には、デジタル化によって社会にさまざまな革新をもたらす「デジタルトランスフォーメーション」(DX)のハブ(拠点)として機能することなどを想定しています。

まとめ & 実践 TIPS

いま地方大学には、地域に対する貢献が、いっそう求められています。それも、地方創生のためには、地域の大学を自然に任せるのではなく、自治体や産業界とも連携しながら、大学間で役割を分担するなどして、一緒に地方を盛り立てていこう、という考え方からです。
そのため、定員増といっても、全学問分野が対象となるわけではなさそうです。地域における役割の見直しに伴い、学部・学科改組なども、いっそう進むことでしょう。そうした点にも留意しながら、地元の国立大学が今後どこに向かおうとしているのか、その動向を見ていく必要がありそうです。

大学分科会(第158回) 配付資料
https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo4/siryo/1422495_00009.html

プロフィール

渡辺敦司

渡辺敦司

1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。連載に「『学力』新時代~模索する教育現場から」(時事通信社「内外教育」)など。

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