奨学金返済、企業が肩代わり? 日本学生支援機構(JASSO)の新制度 企業の代理返還制度とは?

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私立大学の入試が本格化しています。保護者にとっては、期待が膨らむ半面、学費や仕送りの捻出に頭が痛くなる時期ではないでしょうか。
2020年度から「高等教育の無償化(修学支援新制度)」が始まっていますが、対象は住民税非課税世帯と、それに準じる世帯の学生に限られています。それ以外の世帯で頼りになるのは、やはり日本学生支援機構(JASSO)などの奨学金です。ただし卒業後の返済が心配で、利用を控える動きも強まっています。そうした中で広がっているのが、就職後の企業が、返済の全部や一部を肩代わりする動きです。
JASSOでは、そんな企業の後押しをしようと、2021年度から「企業の奨学金返還支援(代理返還)制度」を始めます。

この記事のポイント

所得税の非課税扱い、企業も損金算入

企業が奨学金の返済を肩代わりするのは、優秀な人材を集めるためです。卒業後に安定した就職先が得られるか心配な学生にとっても、安心して奨学金を利用して、勉強に打ち込むことができます。

これまでは、各企業が社員に直接支援する方法しかありませんでした。そうなると給与の増額扱いとなり、社員にとっては、所得税を多く払わなければなりません。企業にとっても、「過大な使用人給与」だと判断されれば、損金に算入できない恐れもあります。
JASSOが始める支援制度では、企業から直接、奨学金返還の送金を受け付けます。これにより、所得税が非課税扱いになり得る(個別の事例による)とともに、給与として損金算入できます。

制度を利用する企業は、希望すればJASSOのホームページ(HP)に企業名を掲載でき、イメージアップやPRにもつながるメリットがあります。

教育コスト増大で授業料高く

今や高校生の2人に1人が、4年制大学に進学しています。私立大学にとっては、授業料などの学生納付金が、主要な財源です。
一方、大学には近年、グローバル化への対応やアクティブ・ラーニング(AL、高等教育界では「能動的学修」と訳す)など、手厚い教育が求められています。その分、教育のためのコストが掛かり、納付金も高騰しています。
なお、大学生活を送るには、授業料などだけでなく教科書代や実習費がかさむ他、自宅外の場合はアパート代や食費なども必要になります。

コロナ禍で心配、社会全体で支援を

JASSOの2018年度調査によると、学費と生活費を合わせた「学生生活費」は、平均で年間191万円余りに上っています。ただし当時は、景気が回復基調にあり、家庭の年収や、学生本人のアルバイト収入にも、余裕が出始めていました。
しかし、新型コロナウイルス感染症の拡大が続けば、家庭も本人も苦しくなり、大学生活に支障が出かねません。

まとめ & 実践 TIPS

日本は今後、人口減少が進み、労働力人口も縮小していくことになります。一人ひとりが最大限の能力を発揮してもらい、生産性を高めなければ、社会が立ち行きません。そのためにも、多くの人に高い教育を受けてもらうことが、社会全体にとっての利益にもなります。
給付型奨学金の拡充はもとより、JASSOの新制度により、ますます安心して高等教育を受けやすい環境が整うことを期待したいものです。

※JASSOの「企業による奨学金返還支援(代理返還)」に関する詳細情報や支援を実施する企業名などは、今後JASSOのWebサイトで発表される見込みです。
詳細はJASSOのWebサイトでご確認ください。

出典
日本学生支援機構「企業による奨学金返還支援(代理返還)に係る対応について」
https://www.jasso.go.jp/about/information/press/jp2020122201.html

同 2018年度学生生活調査結果
https://www.jasso.go.jp/about/statistics/gakusei_chosa/2018.html

プロフィール


渡辺敦司

著書:学習指導要領「次期改訂」をどうする —検証 教育課程改革—


1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。初等中等教育を中心に、教育行財政・教育実践の両面から幅広く取材・執筆を続けている。

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