増える若い先生、採用倍率の低下で心配される「質」問題。「育成」の視点も必要

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2021年度文部科学省予算案では、公立小学校の全学年を、5年間かけて、40人学級から35人学級に引き下げることが盛り込まれています。これに伴って、学級数が増える分、先生の採用も増やす必要があります。ただ近年では、若い先生が増えているだけでなく、採用倍率も低下しており、「教員の質は大丈夫か」とも危ぶまれています。この問題を、どう考えればよいのでしょうか。

この記事のポイント

採用倍率の低下で「質」心配

文部科学省の調べによると、2019年度の公立学校採用試験で、小学校の採用倍率は2.8倍でした。3倍を切ると思うような先生が選べない、というのが、採用関係者の一致した見方です。

しかも、これは全国平均です。実際に採用を行う都道府県・政令指定都市の別で見ると、3倍を切っている教育委員会は、25道県6市(小中学校を一括で採用している都府県市お及び道・県と合同で採用している指定都市を除く)を占めます。このうち8道県2市は、2倍を切っています。

どのくらいの教員を採用するかは、児童生徒数や学級数の見込みだけでなく、その年にどのくらいのベテランが退職するかによっても左右されます。
近年、第2次ベビーブーム以降に大量採用された50代が順次、定年退職を迎えています。それを補うために、新規採用数が増え、先に見たような採用倍率の低下につながりました。

大量退職は一段落するけど

文科省の2019年度教員統計調査で、公立小学校教員の年齢構成を見ると、20代の占める割合が19.2%と、3年前の前回調査(16年)に比べて2.0ポイント上昇した一方、50歳以上は33.9%と2.4ポイント低下。07年度に44.5歳まで高まった平均年齢は、42.6歳に若返りました。

文科省の推計によると、全国の公立小学校の採用は、19年度をピークに減少する見通しでした。ベテラン層の大量退職が、一段落するからです。
しかし、35人学級化で教員の需要が増えれば、さらに採用数を増やす必要が出てきます。もちろん、社会人経験のある中年層に、新たに教職についてもらう手もあります。それでも、今以上に若い教員が増えることは、避けられないでしょう。

一生、学び続けてもらうために

対策として、まず、これから教職に就こうとする人の質を上げる必要があります。そのため2019年度から、大学の教職課程の履修内容が変わりました。小学校英語はもとより、ICT(情報通信技術)教育、アクティブ・ラーニング(AL)などにも対応しようというものです。
一方で、教職課程の単位数を増やすにも、限界があります。教育現場の課題にすべて対応し、卒業後に一人前の先生として教壇に立つには、4年間では短すぎるからです。
そこで、各都道府県では、「教員育成指標」の策定が進められています。養成段階から採用段階、初任段階、中堅段階、ベテラン段階と、退職するまでのキャリアステージに応じて、資質向上を図ろうというものです。先生は一生、学び続けることが必要だ、という考えからです。

まとめ & 実践 TIPS

若い先生は、経験が不足する分、教育改革の新しい流れにも敏感であるなど、ベテランとは一味違ったメリットもあります。学校教育を活性化するには、各年齢層の良さを生かし、相乗効果を生み出すことが不可欠です。
そのためにも、今後ますます増える若い先生を、長い目で育てるような体制作りが求められるでしょう。

出典
2019年度公立学校教員採用選考試験の実施状況について
https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/senkou/1416039_00001.html

2019年度学校教員統計調査の中間報告について
https://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/31/06/1418004_00002.htm

プロフィール


渡辺敦司

著書:学習指導要領「次期改訂」をどうする —検証 教育課程改革—


1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。初等中等教育を中心に、教育行財政・教育実践の両面から幅広く取材・執筆を続けている。

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