小学校の「35人学級」、今後の影響と課題は? 中学校では定員引き下げ見送りに

2021年度の政府予算案で、5年間かけて公立小学校の全学年を35人学級とする方針が決まりました。対象となるのは、20年度の1年生からです。原則40人という学級編成基準が改められるのは40年ぶりで、画期的なことに間違いはありません。ただ、手放しで喜んでばかりもいられないようです。

この記事のポイント

学校にとっては先生が増える

子どもや保護者にとって、40人学級が35人学級になるということは、それだけ1人の先生が見る児童の数が少なくて済み、子ども一人ひとりへの手厚い指導につながることが期待されます。

一方、先生の数を決める仕組み(教職員定数)にも、大きな影響を与えます。
たとえば1学年に80人の児童がいたとすると、40人学級なら2クラス(40人+40人)ですが、35人学級なら3クラス(26人+27人+27人)となり、学級担任も1人増えます。

昔に比べると、全国的に学校のクラス数が減っています。それだけ先生の数も減るわけですが、1校当たりの校務の量は、それほど変わるものではありません。先生の働き方改革のためにも、学級編成基準の見直しは歓迎されるものです。

実は9割が既に35人以下

ただ、引き下げの効果は限定的かもしれません。
既に小学1年生は、民主党政権下の2011年度から、35人学級になっています。2年生も、法的には40人学級のままですが、指導の充実のために配当されていた先生の増員分(加配定数)を使うことで、実質的に35人学級が実現しています。

さらに、地方自治体が独自の判断で、中学校も含めて40人を下回る学級編成を行っているところが少なくありません。

また、1学年で35人を下回っているような学校にも、恩恵はありません。
文部科学省の統計によると、小学校では、既に9割の学級が、35人以下となっています。36人以上の割合が1割を超えるのは、東京都や愛知県、大阪府など、大都市圏が中心です。

1クラス分の負担は変わらず

1人の先生にとっても、1クラス分の授業や学級運営にかかる労力が減るわけではありません。
しかも近年では、ベテラン層の大量退職が続いてきたことから、若い先生の採用が増えています。慣れない初任時代には、担任が1人で1学級の子どもの教育に丸ごと責任を持つことに、相当な負担を感じるかもしれません。

一方で、35人学級の実現のために、加配定数を回すことも検討されています。学校全体で見て、先生に余裕がなくならないかも心配です。
もっと指導が大変な中学校では、全学級の4分の1が36人以上と、小学校より多くなっています。しかし今回、中学校の引き下げは見送られました。

まとめ & 実践 TIPS

今回の学級定員の引き下げは、新型コロナウイルス感染症の拡大防止の必要性から、急きょ浮上したものです。それだけに、急ごしらえの感も否めません。
ただでさえ通常学級では、発達障害や日本語指導の必要な児童生徒の増加など、昔よりも一人ひとりに丁寧な指導が必要になっています。
小学校の35人学級が実現したことに、喜んでばかりはいられません。中学校も含め、今の時代にふさわしい学級定員や指導体制の在り方をどう考えるのか、そのための財源はどうするかなど、引き続き、本格的な検討を続けることが期待されます。

出典
2021年度文部科学省予算案
https://www.mext.go.jp/a_menu/yosan/r01/1420672_00002.htm

教育再生実行会議 初等中等教育ワーキング・グループ(2020年9月)関連参考資料
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/kyouikusaisei/jikkoukaigi_wg/syotyutou_wg/dai1/sankou4.pdf

プロフィール

渡辺敦司

渡辺敦司

1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。連載に「『学力』新時代~模索する教育現場から」(時事通信社「内外教育」)など。

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