小中学校で1人1台の端末が整備される2021年 課題は授業をどう変えるか

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2021年を迎えました。20年を振り返ると、新型コロナウイルス感染症の拡大防止のため、臨時休校が最長3か月に及びました。その間、学習を少しでも補おうと、学校と家庭を結ぶ「オンライン授業」の必要性が、強く認識されました。新年度は、ほとんどの小中学校、で1人1台の端末が整備される「1人1台元年」となります。そんな時代の授業は、どう変わるのでしょうか。

この記事のポイント

「オンライン授業か、対面か」ではなく

中央教育審議会(文部科学相の諮問機関)は、年明けの答申に向けて、議論の詰めを行っています。そこでは、1人1台や、高校も含めて高速大容量の通信ネットワークを整備する「GIGAスクール構想」により環境整備が進むICT(情報通信技術)を、これからの子どもたちに必要な資質・能力を育む「スタンダード(標準)」のツールとして、最大限活用すべきだとしています。
その際、「オンラインか対面・オフラインか」といった二分法に陥ることなく、対面指導とオンライン授業のよさを適切に組み合わせる「ハイブリッド化」で、教育の質を向上させることを求めています。

家庭でのオンデマンド学習も

普段の授業でICTを活用することは、新しい学習指導要領(小学校は2020年度から、中学校は21年度から、高校は22年度入学生から全面実施)で、すべての学習の基盤になる「情報活用能力」を育成するためにも、不可欠です。
中教審委員で、情報教育の第一人者である堀田龍也・東北大学大学院教授は、日本が人口減少社会に向かう中で、一人ひとりの生産性を高めるには、ICT活用が不可欠だと強調しています。2020年11月に開かれた中教審の特別部会では、教室での対面学習や、同時双方向でのオンライン学習だけでなく、録画された動画を家庭などで視聴する「オンデマンド学習」も重視すべきだとの考えを示しました。「人生100年時代」には、必要に応じて学び足すことが生涯にわたって必要になることから、自分で主体的に学習を計画して実行する「自己調整学習」が、ますます求められるからです。

あくまで技術に振り回されることなく

中教審は、答申案のメインタイトルを「『令和の日本型学校教育』の構築を目指して」としています。日本型学校教育とは、学習指導だけでなく、生徒指導なども含めて知・徳・体を一体で育み、すべての子どもたちに全人教育を保障しようとするものです。
先の特別部会では、国立教育政策研究所の白水始・総括研究官(東京大学客員教授)も発表し、「ペダゴジー(教授法)ファースト、テクノロジー(技術)セカンド」の必要性を、重ねて訴えました。ICTなどの技術は、あくまで指導の充実を第一に活用すべきものであって、ますます発展する技術に振り回されてはいけないことを戒めたものです。

まとめ & 実践 TIPS

単に知識を教えるだけでなく、考える力や表現力、仲間と協働する力といった、多様な力を同時に育んできたのが、日本型学校教育の特長です。それを、ICTの助けを借りながら「令和」版にバージョンアップし、ますます先行き不透明になるコロナ後の社会を生き抜く力を、子どもたちに付けさせることが求められています。
そのために授業をどう変えていくか、各学校や先生一人ひとりが十分検討し、実践に移してもらう環境を整えることが、1人1台元年である2021年の大きな課題だと言えるでしょう。

中央教育審議会 初等中等教育分科会(文部科学省ホームページ)
https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo3/index.htm

同分科会「新しい時代の初等中等教育の在り方特別部会」(同)
https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo3/083/index.htm

プロフィール


渡辺敦司

著書:学習指導要領「次期改訂」をどうする —検証 教育課程改革—


1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。初等中等教育を中心に、教育行財政・教育実践の両面から幅広く取材・執筆を続けている。

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