各国の授業をビデオ撮影で比較調査! 「粘り強さ」が低い日本が1位になったものとは 【経済協力開発機構(OECD)報告書より】

経済協力開発機構(OECD)が、各国の授業を比較した「グローバル・ティーチング・インサイト(GTI、授業ビデオ研究)の結果を、報告書にまとめました。テストやアンケート(質問紙調査)といった従来の手法だけでなく、実際の授業をビデオ撮影して分析し、各国の指導の実態や学習の状況を客観的に見よう、という新しい試みです。日本はどうだったのでしょうか。

この記事のポイント

8か国・地域の二次方程式をビデオで分析

調査には日本の他、チリ、コロンビア、英国、ドイツ、スペイン、メキシコ、中国の計8か国が参加。それぞれ、二次方程式を指導する85人以上の数学教員を抽出しました。日本からは、静岡市や埼玉県熊谷市・戸田市の全公立中学校など、73校の教員89人が参加しています。

分析の観点としては、(1)授業運営 (2)社会的・情緒的支援 (3)対話(談話) (4)教科内容の質 (5)生徒の認知的取り組み (6)生徒の理解に対する評価と対応……という、幅広い領域を設定しました。ここには、「粘り強さ」<2>、「現実世界とのつながり」<4>、「学習のためのソフトウェアの利用」<5>なども含まれています。
具体的な評価方法としては、教員1人につき、二次方程式の授業を2回撮影。2人の分析者が、細かく分析しました。

分析に当たっては、50分間の授業を16分間や8分間の「セグメント」(区切り)に分割。先の観点が1セグメントの間に行われた頻度によって、1から4のスコアを付けました。

「粘り強さ」低く、トップ項目でも他国が迫る

それによると、日本の「授業運営」<1>領域の平均スコアは3.81と、中国(3.75)などを抑えてトップでした。

「社会的・情緒的支援」<2>も3.26と、スペイン(3.24)などを上回っています。ただし、細かく見ると、「粘り強さ」は1.45で、ドイツ(1.91)やメキシコ(1.90)、チリ(1.70)、英国、コロンビア(ともに1.46)より低くなっています。

「教科指導」(<3>~<6>を統合)の領域は2.24と、英国(2.23)など他国を抑えたものの、「教員と生徒の対話」((2.52)はドイツ(2.54)のほうが高く、「教科内容の質」(1.70)も中国(1.97)や英国(1.76)のほうが高くなっています。

生徒に対する質問紙調査で、先生が「数学の授業で私がどのくらいよくがんばっているかを言う」と回答したのは23%で、ドイツ(14%)以外の6か国を下回りました。一方、「私の長所や短所を教えてくれる」は47%と、英国(53%)に次いで2番目でした。

先行き不透明な時代に世界中が備え

OECDは、代表的な国際学力調査である「生徒の学習到達度調査」(PISA)を実施していることで知られています。2018年のPISAで、日本の15歳の数学的リテラシー(活用能力)は、OECD加盟国中トップでした。ただし非加盟国を含めると、中国(北京、上海など)やシンガポール、マカオ、香港のほうが上回っています(統計的な有意差)。
OECDは、先行き不透明な世界で人々が幸福に暮らしていけるよう、授業の革新を求めています。これに応じて各国も、努力を続けているのです。

まとめ & 実践 TIPS

これまで授業の質が高いと評価されてきた日本も、うかうかしていられません。OECD調査により「世界一忙しい」とも言われる先生方が、理想の授業に打ち込めるよう、環境を整えていくことが求められます。

出典
OECD グローバル・ティーチング・インサイト(GTI) -授業ビデオ研究- 報告書概要
https://www.nier.go.jp/04_kenkyu_annai/div06-kokusai.html

OECD生徒の学習到達度調査(PISA)
https://www.nier.go.jp/kokusai/pisa/index.html

プロフィール

渡辺敦司

渡辺敦司

1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。連載に「『学力』新時代~模索する教育現場から」(時事通信社「内外教育」)など。

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