中所得世帯の大学進学が、実は厳しい?!学生生活調査レポートから読み解いてみる

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なかなか収束しない新型コロナウイルス感染症は、家計にも不安を広げています。一方で、かさむ子どもの教育費、とりわけ大学進学のための学費や生活費の工面は大変です。現状はどうなっているのでしょうか。

この記事のポイント

「学生生活費」も家計もアップ

独立行政法人日本学生支援機構が2年に1度行っている「学生生活調査」の2018年度結果によると、学費と生活費を合わせた1年間の学生生活費は、大学(学部)で平均191万3500円。2年前の前回調査(16年度)に比べて1.8%(2万9300円)アップしていますが、一方で、家庭の年間平均収入は862万円と、3.9%(32万円)増えていますから、あくまで全体としては、負担感が増しているわけではないようです。
また、授業期間中にアルバイトをしているのは全学生の73.2%(前回調査比4.3ポイント増)と、4人に3人に迫りましたが、収入額も40万1500円と、12.7%(4万5400円)アップ。しかも、アルバイト学生で「家庭からの給付のみで修学可能」という割合は52.0%で4.5ポイント増えています。やはり全体としては、学生生活のためにバイトに追われるという状況は近年、改善されていました。

政府は「真に必要な」低所得世帯に力

最新調査のあった18年度というと、無利子奨学金の枠が拡大されるともに、返還しなくていい「給付型奨学金制度」が17年度に始まっていました。20年度からは、「意欲と能力のある学生が経済的理由によって学業を断念することがないよう」(文部科学白書)にするため、授業料減免と給付型奨学金を充実させた「就学支援新制度」(高等教育の無償化)もスタートしています。
高等教育の無償化は、安倍晋三内閣(当時)の強い方針の下、「真に支援が必要な低所得世帯」(同)の学生に限って行われるものです。安倍内閣を受け継いだ菅義偉内閣の下でも、この方針は続くことでしょう。

「ローン回避」強まったのは…

これに対して、調査報告書に「識者見解」を寄せた濱中義隆・国立教育政策研究所総括研究官は、中所得層以上の家庭に対する支援の関心が弱まることを心配しています。
中所得世帯では、有利子奨学金だけを受けている学生の割合が26.2%と、前回調査に比べ3.5ポイント減りましたが、無利子奨学金は16.2%と、2.0ポイントしか増えていません。これについて濱中総括研究官は、奨学金を返すのが大変だという問題が報道されるなどした影響で、とりわけ中所得世帯に「ローン回避」の傾向が現れた、とみています。
しかし、国公立に比べて高額な私立大学の学費や、遠方の大学に進学した場合の下宿代の負担など、「中所得層においても経済的支援を必要とする学生の割合はかなり高い」(濱中総括研究官)のも確かです。

まとめ & 実践 TIPS

新型コロナによる景気低迷で、一番大きな影響を受けるのは、中所得世帯だと言えるかもしれません。どんな子どもも安心して進学できるようにするため、年々上がる私大の学費なども含め、まだまだ国の手厚い支援が求められそうです。

2020年度学生生活調査
https://www.jasso.go.jp/about/statistics/gakusei_chosa/2018.html

文部科学省 「学びたい気持ちを応援します 高等教育の修学支援新制度」
https://www.mext.go.jp/kyufu/index.htm

プロフィール


渡辺敦司

著書:学習指導要領「次期改訂」をどうする —検証 教育課程改革—


1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。初等中等教育を中心に、教育行財政・教育実践の両面から幅広く取材・執筆を続けている。

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