コロナ前の学校ICTはどうだった?毎年1,805億円が措置されているけど…

新型コロナウイルス感染症の拡大防止のため、3月から最長3か月間の全国一斉臨時休校がありました。その間、少しでも学習を補おうと、紙の宿題だけでなく、電子メールやホームページ(HP)の動画、オンライン授業など、ICT(情報通信技術)を使った試みも模索されたのは、記憶に新しいところです。それによって、学校のICT環境が不十分だったことも浮き彫りになりました。コロナ禍の前の状況は、どうだったのでしょうか。

この記事のポイント

「1台当たり3.6人」に遠く及ばず

文部科学省は毎年、「学校における教育の情報化の実態等に関する調査」を実施しています。対象は公立学校で、調査時点は3月1日現在です。今年2月27日に安倍晋三首相(当時)が要請したのは、3月2日からの臨時休校でしたから、最新の2019年度調査(20年3月1日現在)には、まさにコロナ禍の直前の状況が表れています。
それによると、教育用コンピューター1台当たりの児童生徒数は、4.9人でした。前年度の5.4人に比べれば大幅に改善したのですが、それでも国が目標としていた1台当たり3.6人には、遠く及ばない数字です。
普通教室での無線LAN整備率は48.3%と、前年度の41.0%より上がりました。有線も含めれば91.2%(前年度は89.9%)です。学校全体のインターネット接続率は96.3%(同93.9%)にまで達しました。ただし、100Mbps以上の超高速ネット接続率は77.8%(同70.3%)と、やはり「超高速インターネット接続率及び無線LAN整備率100%」という目標値には及びませんでした。

毎年1,805億円が措置されているけど…

目標値に及ばなかった大きな理由は、2019年度まで公立学校のICT環境整備が、地方交付税で措置されていたからです。
国としては、目標達成のため、14~17年度に毎年1678億円、18年度からは1805億円(22年度までの予定)を措置しています。
新しい学習指導要領では、情報活用能力を、言語能力や問題発見・解決能力などと並ぶ「学習の基盤」と位置付けました。各教科の授業でも、コンピューターを活用した授業の実施を求めています。そのため国は、2018~22年度の整備計画で、せめて3クラスに1クラスで、1人1台の教育用コンピューターを整備しようとしたのです。
しかし地方交付税は、一括で自治体の予算用に交付されるため、国が使い道を指定できません。自治体のほうで、学校ICTより、橋や道路の整備などが優先だと判断すれば、そちらのほうに予算が回ってしまうことも起こり得ます。そうした結果が、先の数値に表れたわけです。

「GIGA構想」で一気に整備へ

いま各地の自治体では、急速に学校のICT環境整備を進めています。「GIGAスクール構想」により、国が交付税に加え、補助金を出して、2020年度中にも一気に整備することにしたからです。
全国一斉の臨時休校中、同時双方向型のオンライン指導を実施できた自治体は、15%にすぎませんでした。もし国の目標値が達成されていれば、もっと実施率は上がっていたはずです。

まとめ & 実践 TIPS

新型コロナはなかなか収束せず、児童生徒や教職員に感染者が出た学校の臨時休校も相次いでいます。どの学校でも学びを止めないためにも、一刻も早いICT環境整備が求められます。


学校における教育の情報化の実態等に関する調査結果【速報値】について
https://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/31/08/1420659_00001.htm

プロフィール

渡辺敦司

渡辺敦司

1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。連載に「『学力』新時代~模索する教育現場から」(時事通信社「内外教育」)など。

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