「令和の日本型学校教育」とは? 中央教育審議会の中間まとめ案より

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幼稚園から高校までの「初等中等教育」の新しい在り方を検討している中央教育審議会が、2021年1月にも予定する答申に向けて、近く中間まとめを行います。小学校高学年に教科担任制を導入することや、高校の普通科に新学科を創設することなどが注目されていますが、目指すのは「令和の日本型学校教育」だといいます。どういうものなのでしょう。

この記事のポイント

「知・徳・体」は当たり前じゃない

中教審特別部会の中間まとめ案によると、明治以来の「日本型学校教育」とは、教師が学習指導だけでなく、生徒指導(生活指導)などの面でも、さまざまな場面を通じて、児童生徒の状況を総合的に把握して、指導を行うことで、子どもたちの知・徳・体を一体で育む学校教育のことです。一定の教育水準を保つ「平等性」の面だけでなく、全人教育などの面でも「諸外国から高く評価されている」としています。
そうした学校像は、日本では当たり前だと思いがちですが、文部科学省によると、国際的にはそうでもありません。諸外国の「スクール」では、先生の業務は、主に知育(教科等)に特化されており、徳育(道徳・特別活動等)は家庭や教会(宗教)で、体育(部活動等)は地域のスポーツクラブなどで行われることが一般的だといいます。学校中心の部活動も、日中韓に特有の現象です。
地域社会の中核にあるのも、日本の学校の特色です。

コロナ禍で存在感、一方で「同調圧力」も

20世紀に入ってから戦後にかけて、就学率が上がり、教育水準も向上していくにつれ、日本型教育が定着していったといいます。制度面だけでなく、とことん子どもに向き合って、全人格的な成長を促そうとしてきた、日本の先生方の努力も忘れてはなりません。
特に、新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴う最長3か月の臨時休校措置は、学校という存在の大きさを改めて浮き彫りにしました。学力を保障することはもとより、人と安全・安心につながれるという点で、福祉的な役割をも担っているのです。
一方、そんな学校が、子どもたちに「正解主義」や「同調圧力」を感じさせる場になってしまっていたことも否めません。

「個別最適な」「協働的」学びへ

中教審では、日本型学校教育のよさを維持しながらも、学習意欲の低下やいじめ・不登校、先生の忙しさといった反省点を改善するとともに、人工知能(AI)などSociety(ソサエティー)5.0と呼ばれる新たな時代に必要な力の育成も必要だとしています。そこで、目指すべき学校の在り方を「多様な子供たちの資質・能力を育成するための、個別最適な学びと、社会とつながる協働的な学びの実現」としました。

まとめ & 実践 TIPS

国内だけ見ていると、とかく日本の学校の悪い面だけに目を向けがちになります。しかし、ことわざにある通り、角をためて牛を殺すようなことがあってはなりません。
客観的な証拠(エビデンス)に基づき、日本型学校教育の「強み」と「弱み」は何かを公正に把握し、ポストコロナの「ニューノーマル」(新しい日常)にとっても必要な教育政策を立案することが、中教審に求められます。


中教審 新しい時代の初等中等教育の在り方特別部会 中間まとめ骨子案
https://www.mext.go.jp/kaigisiryo/2019/11/1422470_00012.htm

プロフィール


渡辺敦司

著書:学習指導要領「次期改訂」をどうする —検証 教育課程改革—


1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。初等中等教育を中心に、教育行財政・教育実践の両面から幅広く取材・執筆を続けている。

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