オンライン授業、経済界も求めるのはナゼ?

日本経済団体連合会(経団連)は2020年7月、小学校から高校までの教育に「リモート教育」(オンライン授業)ができるような整備を求める第1次提言をまとめました。そこには、Society(ソサエティー)5.0(超スマート社会)と呼ばれる新たな時代での生き残りを懸けた企業の立場として、学校教育に対する「人づくり」への期待が込められています。

この記事のポイント

デジタル革新、「ウィズコロナ」で急務

Society5.0とは、人工知能(AI)はもとより、あらゆるモノがインターネットとつながる「IoT」、ビッグデータの活用などの「デジタル革新」が急速に進み、世界の産業構造が劇的に変化する時代だとされています。そうした時代の人づくりとして経団連は、デジタル技術を最大限活用しながら、想像力と創造力を発揮して、さまざまな社会課題を解決して、新たな価値を生み出せるようにすることが重要だと位置付けています。
折しも中央教育審議会(中教審、文部科学相の諮問機関)では、2019年4月の諮問を受けて、Society5.0時代にも対応した「新しい時代の初等中等教育の在り方」を審議しています。そうした中で起こったのが、新型コロナウイルス感染症の拡大です。
最長3か月の長期臨時休校を余儀なくされた学校では、授業を補うため、オンライン授業を行うことも模索されましたが、もともと学校のICT(情報通信技術)環境整備はなかなか進んでいませんでした。同時双方向型オンライン指導を実施できた学校は小学校で8%、中学校で10%(文部科学省調べ)にとどまるなど、「諸外国と比べて周回遅れ」(提言)なのが現状です。

対面授業との「ハイブリッド」提案

経団連が提案するのは、「オンライン教育と学校での対面形式の教育とのハイブリッドな学習環境の構築による新しい教育様式」です。Society5.0の教育では、▽ICT(情報通信技術)やEdTech(エドテック)(教育とテクノロジーの融合)を活用した個別最適な学習▽オンラインによる、全国で学校と家庭・学習塾などが機動的に連携した、質の高い教育の提供▽探究型学習による「主体的・対話的で深い学び」(アクティブ・ラーニング=AL)の実施……などが必要だとしています。
そのために、全国でリモート教育が実現できるような環境を、緊急に整備するよう求めています。

小学校から大学までで能力育成を

そのようなハイブリッドな環境が必要とされるのは、「ウィズコロナ」の時代にとどまりません。Society5.0時代に求められる能力の育成のために必要だと、経団連は位置付けています。
Society5.0時代には、文系・理系を問わず、数理的推論・データ分析力、論理的文章表現力、外国語コミュニケーション力といった「リテラシー」(活用能力)や論理的思考力、規範的判断力をベースに、社会システムを構想・設計する力などが求められる、と経団連は考えました。そのためには大学など高等教育からでは遅く、初等中等教育から始めるべきだとしています。

まとめ & 実践 TIPS

こうした方向は、新しい学習指導要領や、中教審での議論、国が進める学校ICTの環境整備「GIGA(ギガ)スクール構想」とも、おおむね一致するものです。将来の社会で活躍できる子どもたちを育てるよう、企業を含めた社会が総ぐるみで努力するきっかけとしたいものです。


経団連「Society 5.0に向けて求められる初等中等教育改革 第一次提言~with コロナ時代の教育に求められる取組み~」
http://www.keidanren.or.jp/policy/2020/063.html

プロフィール

渡辺敦司

渡辺敦司

1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。連載に「『学力』新時代~模索する教育現場から」(時事通信社「内外教育」)など。

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