デジタルで教科書と学びが変わる!?

新型コロナウイルス感染症の影響で休校になった授業を補うため、学校と家庭を結ぶ「オンライン授業」の試みが広がりました。政府も、小中学校で1人1台の端末を整備する「GIGA(ギガ)スクール構想」を2020年度中に前倒しして、休校になった場合には、家庭にも持ち帰ることを促したい考えです。そうした中、改めてクローズアップされているのが、学習者(児童生徒)用デジタル教科書と、デジタル機器類から集めた「教育データの利活用」です。

この記事のポイント

現状は使える時間にも制限

学習者用デジタル教科書は、2018年の法改正で、正式な「教科書」と認められました。ただし、小中学校などで無償給与されるのは、引き続き紙の教科書だけです。
有償のデジタル教科書は、紙の教科書の代わりに、授業で使っていいことにしました。ただし、過渡期であることから、使えるのは各教科等の授業の2分の1未満という制約が付けられています。内容も、紙の教科書とまったく同じにするのが条件です。
それでもデジタル教科書は、拡大や縮小が自在なだけでなく、書き込みや検索もでき、音声や動画などの教材にもリンクできるなど、便利なことは確かです。とりわけ、特別な支援が必要な児童生徒にとっては、読み上げ機能や白黒反転など、学習上の困難が克服できる可能性を持っています。

既に小学校の94%、中学校の95%で

2020年度は、小学校で新しい学習指導要領が全面実施になったことから、デジタル教科書の発行が進みました。文部科学省によると、小学校教科書の94%で、デジタル教科書が発行されています。21年度から使用開始となる中学校でも95%です。
GIGAスクール構想によって、過渡期扱いだったデジタル教科書にも、見直しが必要になってきます。そこで文科省は7月、検討会議を設けました。授業の2分の1という使用制限の撤廃などが、課題に挙がっています。小学校の教科書が改訂になる2024年度に合わせて、制度を改正したい考えです。
同じ日に、「教育データの利活用に関する有識者会議」も発足しました。学習履歴や校務情報などから得たデータを、児童生徒の指導に役立てるだけでなく、データを匿名化するなどして、研究や、教材開発にも活用できるようにしたい考えです。当面は、学習指導要領の項目に数字を振り(コード化)、教科書や教材などと連動できるようにすることが課題です。

他教科や校外との連動も可能に

デジタル教科書と、コード化が進むことによって、学びの可能性も広がります。教科書以外のデジタル教材に、すぐ飛ぶことができるだけでなく、以前の学年で学んだ内容や、関連する他の教科の内容ともリンクできますから、学び直しや、教科の枠を超えた授業も、しやすくなります。場合によっては、校内だけでなく、民間を含む校外の教育機関のデータとも連動させることもできます。

まとめ & 実践 TIPS

これまで先生方がアナログで作り上げてきた授業も、教育ビッグデータを活用した科学的なメスが入ることにより、バージョンアップできる可能性も秘めています。今後の検討を通して、指導要領が目指す資質・能力を確実に伸ばし、「多様な子どもたちを誰一人取り残すことのない」学びを実現してほしいものです。


デジタル教科書の今後の在り方等に関する検討会議
https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shotou/157/index.html

教育データの利活用に関する有識者会議
https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shotou/158/index.html

プロフィール

渡辺敦司

渡辺敦司

1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。連載に「『学力』新時代~模索する教育現場から」(時事通信社「内外教育」)など。

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