小学校に教科担任制、高校普通科を多様化…どうなる「初中改革」

小学校から高校までの「初等中等教育」改革について、中央教育審議会の部会が8月20日から、中間まとめに向けた審議に入ります。新型コロナウイルス感染症の経験を踏まえた「ポストコロナ」時代も見据え、初等中等教育を今後どう変えていこうとしているのでしょうか。

この記事のポイント

義務教育の「9年間」教えられる先生に

中教審は2019年4月に、当時の柴山昌彦文部科学相から諮問を受けて、「新しい時代の初等中等教育の在り方」の審議を行っています。

論点の一つが、小学校の高学年に教科担任制を導入することです。学級担任制が原則の小学校は、全教科を教える先生にとっては、空き時間がありません。中学校につなげる高度な授業をするには、準備の時間の確保も含めて、教科担任制を取り入れたほうがよいという判断です。対象教科は当面、外国語・理科・算数を想定。教科等を横断した「STEAM(科学・技術・工学・芸術・数学)教育」も充実させたい考えで、授業の時間数を弾力化することも検討しています。

中学校の先生を小学校に配置換えすることも視野に入れており、「義務教育9年間」を指導できる先生の育成を目指します。大学での教員養成課程から、小学校と中学校の両方の教員免許を取りやすくする方策を検討します。

小学校に教科担任制が導入される背景

小学校に教科担任制が導入されることになった背景には、いくつかの事情があります。まず、小学校における教育内容が今後さらに専門化されていくということが挙げられるでしょう。外国語やプログラミングなど、これまではなかった教科が加わることで、従来の学級担任制で対応するのが難しくなります。そこで、教科担任制を取り入れて適切に教育しようという狙いがひとつにはあるのです。
次に、複数の教師を授業に参加させることで多角的に児童の気持ちを理解し、心のケアを図るという目的が挙げられます。学級担任制では基本的に1人の教師としか児童が関われないため、児童に対する見方が偏る恐れがあります。複数の教師とつながることで効果的に児童の心を保護するというのが教科担任制の目的のひとつです。
また、新教育課程では小学校の総授業時間数が35時間増え、高学年の場合は980時間から1015時間になります。この授業数の増加によって、すでに多忙な教員の負担がさらに大きくなることは明らかでしょう。教科担任制には、教員の負担を分散する効果が期待されています。
そして、小学校から教科担任制を導入しておけば、中学校との連携が強化できます。各児童の苦手分野なども小中学校で共有でき、中学校への移行がスムーズになるのです。

小学校の教科担任制はいつから導入される?

小学校の教育体制に大きな変化がもたらされる教科担任制の導入。いつから始まるのか気になるという保護者の方も多いのではないでしょうか。
中教審は、「令和4年度(2022年度)を目途に小学校高学年からの教科担任制を本格的に導入すべき」との方針を公表しています。令和4年度に高学年になる子どもがいる場合は、教科担任制に備えておくのが良いといえるでしょう。
ただし、この時期はあくまでも目安であり、必ずしも令和4年度から教科担任制が始まるわけではありません。反対に、兵庫県など、すでに教科担任制を導入している自治体も存在します。実際に導入するかどうかは自治体や学校の判断に委ねられるため、令和4年度はあくまでも目安だと考えておきましょう。

小学校に教科担任制を導入するメリット

小学校に教科担任制を導入することは、児童にとってどのようなメリットがあるのでしょうか。
まず、専門的な指導を受けられるようになるということが最大のメリットでしょう。授業内容の専門性が次第に高まっていく中で、学級担任が全教科をカバーするのは困難だといえます。教師の能力によって授業の質も変わってくるため、不公平な環境が生まれる可能性もあるでしょう。教科担任制を導入すれば、専門的な知識を持った教師から等しく教育が受けられるので、児童や保護者の不満も防ぐことができます。
次に、学級担任と相性が悪い児童が、他の科目で力を発揮できるようになるというメリットもあるでしょう。教師も人間であり、すべての児童を公平に扱うことはできません。学級担任と相性が悪く、不当な扱いを受けている児童も、教科担任制で複数の教師と関わるようになれば活躍できる機会が多くなります。

小学校に教科担任制を導入するデメリット

小学校で長らく学級担任制が採用されてきたのは理由あってのことです。教科担任制を導入することで失われるものもあるということを知っておきましょう。
まず、授業時間を柔軟に調整できなくなるというデメリットが挙げられます。学級担任制の場合、ある教科で授業時間が足りなくなっても、他の進んでいる教科の授業時間をそちらに充てることが可能です。授業を弾力的に運用し、総合的に教育の質を高めることができるのです。一方、教科担任制は授業ごとに教師が変わるため、授業時間の調整が難しくなります。
児童の実態を把握しにくくなるということも教科担任制の課題です。児童と1日中付き合うことになる学級担任制と違い、ぶつ切りの時間でしか児童と関われない教科担任制では、実態を把握するまでに時間がかかります。
そして、教員不足の問題で、そもそも教科担任制の全面的な導入が難しいということが改革の大きな壁となっています。

各高校の「役割」から授業づくりへ

高校は、20・30年後を見据えて、各高校の存在意義や社会的役割を見直し、目指すべき学校像を「スクール・ミッション(学校の使命)」として再定義。大学のように三つの「スクール・ポリシー」(卒業認定方針、教育課程編成・実施方針、入学者受け入れ方針)を策定し、カリキュラムや授業のレベルにまで落とし込むことを義務化したい考えです。
そうなれば、生徒の7割が通う普通科も、自然と多様化してくるはずです。その上で、(1)学際科学的な学びに重点的に取り組む学科 (2)地域社会の課題解決に向けた学びに重点的に取り組む学科……という、探究学習を中心とした学科を、普通科の枠内に新設する方向です。特に(2)は、中山間地域や離島など、放っておけば統廃合の対象になりかねない地域にも高校を残すことで、地方創生の核としての役割を期待しています。

遠隔・オンライン含め授業を「ハイブリッド化」

新型コロナで休校も続いた「ウィズコロナ」時代の経験を踏まえ、「ポストコロナ」時代の学びも検討しています。
1人1台の情報端末を整備する「GIGAスクール構想」により、遠隔・オンライン教育を含めたICT(情報通信技術)活用を進めることで、学校での対面授業はもとより、家庭や地域での学びとも連携した「ハイブリッド化」を目指します。

まとめ & 実践 TIPS

ウィズコロナの学校では、身体的距離(フィジカル・ディスタンス)を取るため、1クラスを半分に分けた分散登校なども行われました。そうでなくても、小学校の教科担任制を含め、初中教育の充実には、一人ひとりの先生に余裕を持たせることが不可欠です。「少人数編成」を実現する教員の増員も、今後の焦点です。
休校が続いたことで、逆に、学校という場に集まって対話することの重要性が、改めて認識されました。知・徳・体を一体で育む「日本型学校教育」の良さを大事にし、発展させるような改革であってほしいものです。


出典:
中教審 初等中等教育分科会 新しい時代の初等中等教育の在り方特別部会
https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo3/083/index.htm

プロフィール

渡辺敦司

渡辺敦司

1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。連載に「『学力』新時代~模索する教育現場から」(時事通信社「内外教育」)など。

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