大学生の生活、なぜ苦しくなった? 新型コロナの陰で

新型コロナウイルス感染症の拡大は、大学生の生活も直撃しました。学生団体「高等教育無償化プロジェクトFREE」によると年度当初、13人に1人が大学をやめることを検討していたといいます。なぜ大学生が、こんなに苦しむことになったのでしょうか。

3人に1人がバイト必須

国の奨学金事業などを実施する独立行政法人日本学生支援機構は、隔年で「学生生活調査」を実施しています。このほどまとまった2018年度の調査結果は、コロナ禍の以前から、高額な家庭の負担と、学生自身の大変な生活があったことを改めて浮き彫りにしています。
それによると、大学(昼間部)の学生生活費は191万3,500円で、前回(2016年度)に比べ約3万円増えています。内訳は、学費が120万8,800円(前回比1万5,400円増)、生活費が70万4,700円(同1万3,900円増)となっています。もちろん、大学によって学費に差があり、平均でも国立が152万3,200円、公立が143万4,700円、私立が203万3,600円です。
自宅か自宅外かによっても当然、生活費に違いが出ます。自宅から通う学生の平均が171万4,000円なのに対して、アパートなどに住む学生は222万1,000円となっています。
そもそも学費だけでも、早くからローンを積み立てなければならないなど、家計の負担は大変です。その上、学生本人も相当な負担を覚悟しなければなりません。
1年間にアルバイトをしたことがある者は86.1%を占めていますが、「家庭からの給付のみで修学可能」と答えたのは52.0%と2人に1人だった一方、「家庭からの給付のみでは修学不自由・困難及び給付無し」も34.1%ありました。つまり3人に1人以上は、バイト収入なしに大学生活が難しいのです。

緊急対策はあるけれど…

新型コロナの影響による経済活動の停滞は、そんな学生のバイトも失わせることになりました。おまけに大学ではリモート授業が広がり、通信費も含めパソコン環境をそろえる負担がのしかかっています。
政府は、家庭から自立してバイト収入で学費などを賄っている大学や短大、専門学校などの学生が中退をしないよう、約43万人に、20万円(住民税非課税世帯の場合)か10万円(それ以外)を支給することにしています。他にも、2020年度の第1・2次補正予算で、各大学が困窮学生の授業料を減らしたりできるよう、計160億円(公立を除く)を計上しました。ただし、対象に選ばれるかどうかは各校の審査にかかっている上に、金額や人数が十分とも限りません。
2020年度は、消費増税を財源とした「高等教育の無償化」措置が本格的にスタートし、20年度の本予算には、授業料の減免や、給付型奨学金に、5,823億円が計上されています。これ自体は画期的なことですが、「真に必要な子どもたちに限って」(安倍晋三首相)の措置で、住民税非課税世帯と、それに準じる、低所得世帯の出身学生にしか適用されません。
文部科学省の調査を見ても、2018年度の授業料は国立大学で標準額53万5,800円、私立大学では平均90万4146円と、保護者世代に当たる30年前(1988年度)と比べ1.7~1.8倍になっています。「ウィズコロナ」の緊急対策は不可欠ですが、そもそも学生に目いっぱい勉強させようという政策を進めながら、バイトをしなければ学生生活が成り立たないような現状を放置したままでいいのか。「ポストコロナ」の在り方も問われます。

(筆者:渡辺敦司)

※2018年度学生生活調査
https://www.jasso.go.jp/about/statistics/gakusei_chosa/2018.html

※国公私立大学の授業料等の推移(私立大学等の学生納付金等調査結果・参考資料)
https://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/shinkou/07021403/1412031_00001.htm

プロフィール


渡辺敦司

著書:学習指導要領「次期改訂」をどうする —検証 教育課程改革—


1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。初等中等教育を中心に、教育行財政・教育実践の両面から幅広く取材・執筆を続けている。

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