WITH・ポストコロナの教育とは

新型コロナウイルス感染症の収束までには、どうやら長期戦を覚悟しなければならないようです。感染拡大の第2波・第3波が到来すれば、学校も再び臨時休校になる可能性があります。社会全体でも、「新しい生活様式」が求められる「WITH(ウィズ)コロナ」(コロナとともに)の時代とともに、感染症が収束したあとの「ポストコロナ」(コロナ後)の社会像をどう描くかの模索も始まっています。学校教育も例外ではありません。WITHコロナ・ポストコロナの教育は、どうなるのでしょうか。

長期休校で再認識された「学校の役割」の重要性

文部科学相の諮問機関である中央教育審議会では、新型コロナの感染拡大が始まる前から、新しい時代の初等中等教育(小、中、高校など)の在り方を検討していました。そうした中でのコロナ対応は、まさに「新しい時代」の学校教育の課題を突き付けました。
ただし、まったく新しいことが求められるわけではないようです。2020年6月11日に開催された中教審の特別部会に文部科学省が示した検討用資料によると、初等中等教育はもともと、家庭の経済的な状況や地域などにかかわらず(1)学習機会を保障する (2)社会の形成者としての全人的な発達・成長を保障する (3)身体的、精神的な健康を保障する安心安全な居場所・セーフティーネット(安全網)……という役割を担っています。新型コロナによる臨時休業が続いたことで、逆に、そうした学校の役割の重要性が再認識されたというわけです。

さらに、人工知能(AI)の発達に代表される「Society(ソサエティー)5.0」(超スマート社会)の時代にこそ、対面の授業や学び合いが必要だとしています。「協働的な学び合いの中で行われる」のが初等中等教育の特質であり、それはWITHコロナであろうと、ポストコロナであろうと変わることはありません。

対面とオンラインの「ハイブリッド」で

その上で検討資料は、必要に応じて臨時休業などが行われるWITHコロナの段階で、教師による対面指導と、遠隔・オンライン教育の組み合わせによる「新しい教育様式」を実践すべきだとしています。
そうした経験を踏まえ、ポストコロナの段階では、学校での対面指導と、家庭や地域社会と連携した遠隔・オンライン教育等とを使いこなす「ハイブリッド化」によって、教師が協働的な学びを展開するとしています。

文科省が同12日に公開した「『学びの保障』オンラインフォーラム」では、兵庫県尼崎市・大阪府箕面市・京都府の3自治体が事例を発表しました。いずれも休校中、少しでも子どもの学びを補おうと、オンライン授業などを工夫したところです。しかも「『AFTER(アフター)コロナ』を見越した学びを諦めない」(京都府教委の橋本幸三教育長)というように、WITHコロナの時にも協働的な学びを意識していたといいます。

さまざまな集団活動の中で多様な他者と関わり、対話を通して人を育てる、という特質は、WITHコロナでも、ましてやポストコロナではなおさら、大事にされなければなりません。WITHコロナで試みられたオンライン学習なども、決して非常時の代替手段などではなく、ポストコロナのハイブリッドな学びに向けた試行の時期だった、と前向きに捉えるべきでしょう。

(筆者:渡辺敦司)

※「新型コロナウイルス感染症を踏まえた、初等中等教育におけるこれからの遠隔・オンライン教育等の在り方について(検討用資料)」(「新しい時代の初等中等教育の在り方特別部会」第9回会議資料)
https://www.mext.go.jp/kaigisiryo/2019/11/1422470_00006.htm

※「学びの保障」オンラインフォーラム(文部科学省サイト「子供たちの『学びの保障』」)
https://www.mext.go.jp/a_menu/coronavirus/1411020_00004.html#manabi

プロフィール


渡辺敦司

著書:学習指導要領「次期改訂」をどうする —検証 教育課程改革—


1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。初等中等教育を中心に、教育行財政・教育実践の両面から幅広く取材・執筆を続けている。

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