高校の授業は「自前主義」から抜け出そう ICTで他機関との連携や「遠隔授業」の活用を

文部科学相の諮問機関である中央教育審議会は現在、小中高校などの在り方を検討しています。このうち高校のワーキンググループ(WG)では、一つの学校で教育活動を全部やろうとする「自前主義」から抜け出そう、という案が検討されています。いったい、どういうことでしょう。

都市部でも地方でも事情に応じ

高校WGでは、生徒の約7割が集まる普通科の改革や、地域・高等教育機関(大学など)との協働など、2019年4月の諮問で出された「宿題」がテーマ。新型コロナウイルスの感染拡大が心配される中でも、ウェブ会議方式で会合を重ねています。20年6月に行われた第8回会合では、それまでの議論を踏まえた論点整理の「イメージ」が示されました。
その中で、20年後・30年後の社会や地域を見据えた時に、「自前主義」から脱却することが必要だ、と打ち出しています。ただし、これには多様化する高校によって、幾つかのパターンがあります。
まず、都市部を中心とした高校です。将来の社会を引っ張る人材を育てるためには、国内外の大学や企業の協力を得ながら、文系・理系にかかわらず高度な学びを提供する必要があり、他機関と連携した教育を行う必要があると位置付けました。
これに対して、中山間地域や離島などの高校は、地域全体の存続のためにも学校を残したい一方、生徒数が少なくなってしまっては、配置される教員の数も減らされ、多様な教科・科目を開設できません。地域との協働はもとより、離れた高校から授業を配信する「遠隔授業」などの手法を使って、自前主義から脱する必要がある、というのです。

社会的役割を果たすため

高校は義務教育ではないといっても、ほとんどの生徒が進学しています。一人ひとりの学習意欲を引き出して最大限伸ばし、将来の社会で活躍してもらえる教育を行うには、単に教科書をこなすだけの授業では、十分ではありません。そのため高校WGでは、各校が期待されている社会的役割(スクール・ミッション)を定義し直して、大学のように、入学者の受け入れから卒業まで一貫した学校の方針(スクール・ポリシー)の策定を求めることを検討しています。「自前主義」からの脱却は、スクール・ミッションを実現するためのカリキュラムに、地域や大学などの力を借りようというわけです。

また、多様な興味・関心を持つ生徒に、さまざまな教育活動を提供したくても、学校の規模によって、開設できる教科・科目に限りがあることも少なくありません。中山間地域や離島なら、なおさらです。これに対し、2015年4月から、その学校に免許を持った先生がいなくても、遠隔授業によって教科・科目を開設できる制度が改正されています(教室には教科を問わず先生が必要)。
新型コロナウイルス感染症の影響で休校が続いたことから、オンライン学習などICT(情報通信技術)教育の必要性が高まりました。遠隔授業はもとより、地域や大学の専門家から教えを受ける場合にも、ICTが効果を発揮します。

少子化が進行する中、全国どこの学校でも、多様な教育を展開してもらうことが、地域はもとより日本全体の活力につながります。そのためにも各高校は、すべて自前で教育活動を行える時代ではなくなっているのです。

(筆者:渡辺敦司)

※中教審 初等中等教育分科会「新しい時代の高等学校教育の在り方ワーキンググループ」第8回配付資料
https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo3/084/siryo/1421594_00006.htm

※同 新しい時代の初等中等教育の在り方について(諮問)
https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo0/toushin/1415877.htm

プロフィール

渡辺敦司

渡辺敦司

1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。連載に「『学力』新時代~模索する教育現場から」(時事通信社「内外教育」)など。

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