オンライン学習、今後どう付き合う?疲れないための対策法も

新型コロナウイルス感染症の影響で、最長3か月間にもわたった、学校の臨時休校措置。少しでも授業を補うため、家庭でのオンライン授業を模索する動きが広がりました。しかし、文部科学省の調べでは、2020年4月16日現在で「同時双方向型のオンライン指導を通じた家庭学習」を実施できた教育委員会は、5%にすぎません。感染防止に長期戦を覚悟しなければならない中、政府や自治体は環境整備を急いでいます。今後どのように、オンライン学習と付き合っていけばいいのでしょうか。

オンライン学習を経験済みの高校生は勉強姿勢が備わる

日本では、学校の授業でさえ、児童生徒がパソコンやタブレットなどの端末を使って学習を行う機会が、十分ではありませんでした。家庭学習では、なおさらです。
独立行政法人国立青少年教育振興機構が2019年9~11月に行った国際比較調査によると、オンライン学習をしたことがある高校生の割合は、日本48・8%、米国70.8%、中国58.3%、韓国72.4%と、日本が最も低くなっています。「先生はインターネットを利用する宿題を出す」のも各26.6%、91.9%、65.3%、57.2%となるなど、そもそも学校からの指導が低調なのですから、当然の結果とも言えます。
一方で、オンライン学習を経験した日本の高校生は、「勉強した内容を理解するために、教科書以外の本を読んだりする」16.9%(未経験者は9.7%)、「先生や友達と勉強について話し合う」26.8%(同16.7%)、「授業の内容を復習する」22.6%(同16.0%)、「自分で学習の計画や目標を立てる」25.8%(同17.1%)と、自ら進んで勉強する姿勢が強まっています。
もちろん、オンライン学習がそれほど一般的でない中での経験者ですから、もともと学習に積極的だったとみることもできます。逆に、うまく導けば、自律的な学びの姿勢を引き出すこともできそうです。今後、オンライン学習が広がる中で、配慮する必要があるでしょう。

長時間の疲れには注意 特に低学年は疲労度が高い

オンライン学習の広がりで心配になるのは、端末に長時間向き合うことによる、疲れです。とりわけ日本では、スマートフォン(スマホ)が普及しており、小さい画面では疲れがさらに増す恐れがあります。
伊藤賢一・群馬大学教授らの調査・研究プロジェクトが2020年5月、小学生の保護者を対象に行ったウェブ調査では、オンライン学習の時間が長くなるほど、高い疲労を起こしている可能性があることが裏付けられました。特に低学年で、疲労度が高くなっています。端末別で疲労度が最も高いのは、やはりスマホでした。
政府が進める「GIGAスクール構想」では、小中学校に1人1台端末と、高校も含めて高速通信ネットワークを整備するとともに、家庭に端末を持ち帰らせることも奨励しています。通信環境の整っていない家庭には、モバイルルータなどを貸し出せるようにしたい考えです。
たとえ緊急時にあっても、誰一人取り残すことのないような学習環境の整備が求められます。各家庭でも、学校側の整備に合わせて、子どもたちが当たり前のようにオンライン学習に取り組めるよう、支援してあげたいものです。

オンライン授業で疲れないための対策方法

根を詰めてオンライン授業に長時間取り組んでいると、疲労が蓄積して肩が凝ったり、目が疲れたりします。集中力の低下にもつながるので、適度に休息を取ることを心がけましょう。目安としては、30~60分授業を受けたら5~10分程度の休憩を確保するのがおすすめです。休憩中は椅子から立ち上がり、家事やストレッチなどをして体を動かすと、ストレス発散に効果があります。
また、長時間画面を見続けないように気を付けることも重要です。特に、成長過程にある子どもが画面を見続けると近視を発症しやすいので注意してください。20分おきに少し離れたところにあるものをしばらく見つめるなどの工夫で、定期的に目を休めることが大切です。同時に、授業中はブルーライトカットメガネをかければ目の負担を減らすことができるでしょう。
そして、オンライン授業では自宅の椅子に長時間座ることになるので、使用する椅子選びにも気を配る必要があります。長時間座っても快適な椅子を用意して、腰を痛めないようにしましょう。同様に、机についても高さなどにこだわって使い心地が快適になるように工夫してください。机や椅子の快適性が高まれば、授業に集中できるようになるというメリットも生まれます。

オンライン授業で「疲れ」以外に気を付けたいこと

「疲れる」ということ以外にも、オンライン授業では気を付けたいポイントがいくつかあります。まず、対面での授業よりモチベーションの維持が難しいということが挙げられるでしょう。オンライン授業では実際に教師と顔を合わせるわけではないので、どうしても子どものやる気が失われがちです。モチベーションを上げる方法として、毎朝その日の学習の目標を設定すると良いでしょう。目標を達成すれば遊んでもいいといったルールを作れば、子どもも集中して勉強に取り組めるはずです。その他、生活のルーティンを決めてメリハリをつける、オンライン授業専用のスペースを設けるなどの工夫がモチベーション維持の役に立ちます。
また、オンライン授業ではIT端末の操作が必須です。そのため、パソコンなどの端末を操作するための知識が多少なりとも必要になるということは覚えておきましょう。子どもが悪質なサイトなどにアクセスしないように、セキュリティ対策についても最低限の知識を身に付けておくことが重要です。

オンライン授業では疲れないための対策を工夫しよう

場所を選ばず、効率的に指導が受けられるオンライン授業は今後も広まっていくことが予想されます。オンライン授業に慣れていないうちは、子どもが疲れてしまわないように配慮することが大切です。適度に休憩を取らせ、ストレスを発散させてあげましょう。また、毎日のルーティンを決め、子どもがオンライン授業に打ち込める環境を整えてあげることも重要です。

(筆者:渡辺敦司)

※高校生のオンライン学習に関する意識調査報告書-日本・米国・中国・韓国の比較
https://www.niye.go.jp/kenkyu_houkoku/contents/detail/i/145/

※コロナ臨時休校中の小学生メディア接触実態調査報告~小学生のオンライン学習/ゲーム・動画と疲労度の関係~
https://www.gunma-u.ac.jp/information/74374

プロフィール


渡辺敦司

著書:学習指導要領「次期改訂」をどうする —検証 教育課程改革—


1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。初等中等教育を中心に、教育行財政・教育実践の両面から幅広く取材・執筆を続けている。

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