ウィズコロナにおける新しい家庭学習の取り組み 4つのヒント ベネッセ教育総合研究所が子どもの生活・学びの困りごとに応えるシリーズ(16)

新型コロナウイルス感染症の影響による“非日常”が続き、子どもの生活リズムが乱れたり、学習が進まなかったり…。不安を覚えることが少なくないと思います。そこで、ベネッセ教育総合研究所/チャイルド・リサーチ・ネット(CRN)の木村治生主席研究員が、主に小・中学生の子どもを持つ保護者のかたに向けて、10回にわたって子どもたちの生活と学びについてお話しします。今回は、その最終回です。

●生きる力を育むためにできる4つのこと

ウィズコロナと言われる今、学校では分散登校や行事の縮小などが行われ、塾や習い事なども以前とまったく同じというわけにはいかなくなりました。こうした環境では、必要な学習が不足したり、友達との学び合いや、豊かな体験が不足したりすることが心配されます。しかし、家庭で過ごす時間が増えたことを利用し、ちょっとした工夫で学習の不足を補い、今まではできなかった“新しい家庭学習”を実現できるかもしれません。

今は、新しい技術や価値観がどんどん生まれ、変化のスピードが速い時代です。どれだけ多くの知識・技能を身につけたかよりも、それらを使いながらいかに思考・行動できるかが求められます。高校入試や大学入試も、思考力・判断力・表現力が問われるようになりました。そうした力を高めるために、ウィズコロナの今だからこそ家庭でできる4つの学びについて、お伝えします。

●(1)ニュースに学ぶ

新型コロナウイルス感染症への対応では、たくさんの社会課題が表れました。例えば緊急事態宣言の解除についても、感染防止と経済回復のどちらを優先させるかという課題が表れ、置かれる立場によって賛否はさまざまでした。このように世の中には唯一の正解があることは少なく、たくさんの可能性のなかから最適な解決策を議論して見い出す必要があります。その際に、多様な意見に触れたり、信頼がおけるエビデンスを参考にしたりしながら、自分の意見や価値観をつくることが重要です。ご家庭でも、「このニュースどう思う?」など、親子で互いの考えを話し合ってみてはどうでしょうか。

●(2)生活の変化に学ぶ

今回の事態は、子どもの生活にも大きな影響を及ぼしました。そこで、「外出自粛によって身近な生活がどう変化したのか」を、親子で話すことを提案したいと思います。例えば、休校の影響を考えることは、子ども自身が学校の学びの重要性を再確認する機会になるかもしれません。習い事ができなくなったことからは運動や芸術の大切さを、お店に行けなくなったことからは地域経済へのマイナスを、マスクが不足したことからは健康や公衆衛生の問題を考えるきっかけが生まれました。保護者のかたのなかには、生活や仕事の環境が大きく変化したかたもいらっしゃると思います。そうしたご自身への影響も、お子さまと一緒に考えたり、保護者のかたの考えを伝えたりしてみるといいと思います。

●(3)家の手伝いから学ぶ

掃除や洗濯、料理などの家事の手伝いは、効率よく進めるための段取りを考える必要があり、主体的に学ぶアクティブラーニングの機会になります。また、家族の役に立つ達成感も得られます。ぜひ、楽しく自立に必要な力を高められるように、ほめたりはげましたりしながらサポートしてあげてください。

●(4)趣味や遊びに学ぶ

遊びと学びは表裏一体であり、遊びのなかで試行錯誤したり、知識や技術を磨いたりしていくようなプロセスからは、じつに多くのことが学べます。また、趣味があることは、生活を豊かにもしてくれます。生活や健康などに支障が出ない範囲であれば、その対象はなんでも構いません。家庭で過ごす時間が長い今は、好きなことに没頭するチャンスとも言えます。

いかがでしょうか。“机に向かい、時間を区切って問題集をやる”ということだけが、子どもの学びではありません。勉強以外の活動も成長につながることを意識できれば、手伝いや遊びだって学びになります。この機会にぜひ、ご家庭で多様な学びのありかたについて考えてみてください。

上記記事はベネッセ教育総合研究所が運営するチャイルド・リサーチ・ネット(CRN)に掲載した動画をもとに作成したものです。
チャイルド・リサーチ・ネット(CRN)は「子どもは未来である」という理念を掲げ学際的、国際的な活動を推進する、インターネット上の「子ども学」研究所です。ベネッセ教育総合研究所の支援のもと運営されています。

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チャイルド・リサーチ・ネット(CRN)は「子どもは未来である」という理念を掲げ学際的、国際的な活動を推進する、インターネット上の「子ども学」研究所です。
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プロフィール


木村治生

https://researchmap.jp/hrkmr/

これまで、子ども・保護者・教員を対象にした調査に携わり、子どもの生活や学びとそれにかかわる周囲の大人の意識・行動に関する研究を行う。
上智大学大学院(教育学修士)、東京大学社会科学研究所客員准教授(2014~17年)・客員教授(2021~22年)、追手門学院大学客員研究員(2018~21年)、横浜創英大学非常勤講師(2018年~23年)。

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