全国学力・学習状況調査、将来はパソコンで1?

文部科学省が、全国学力・学習状況調査(以下、全国学力テスト)をコンピューター使用型テスト(CBT)にできないか、検討を始めました。2020年度の全国学力テストは、新型コロナウイルス感染症の影響で中止になってしまいましたが、皮肉なことに、それが調査を飛躍させる、大きなきっかけになるかもしれません。

国際的にも「CBT」に移行

全国学力テストは、全国の小学6年生と、中学3年生に、国語と算数・数学を出題する他、3年に1度程度、理科(2012年度より)や中学校英語(2019年度より)も行われています。国や教育委員会が学力の状況を把握して施策に生かすとともに、各学校で指導の充実にもつなげてもらうためです。
テストが毎年4月(第3週ごろ)に行われるのには、結果を受けて、個々の児童生徒にも、しっかりと学力を付けさせて卒業してもらおう、という願いもあります。ただ、全国一括で採点する関係から、返却がどうしても夏ごろになってしまい、学校や教委にとっては大変なスケジュールなのも事実です。
一方、代表的な国際学力調査は、3年に1度行われるPISA(ピザ)(経済協力開発機構=OECD=の「生徒の学習到達度調査」、15歳対象)が2015年調査から、全分野でCBTに移行。4年に1度行われるTIMSS(ティムズ)(国際教育到達度評価学会=IEA=の「国際数学・理科教育動向調査」、日本では小4と中2が対象)も、次回の23年調査からCBTに完全移行を予定しています(eTIMSS)。

「GIGA構想」で現実味

日本でも、文科省の専門家会議が2017年3月、全国学力テストのCBT化を検討するよう提言していました。一方、2019年度に行われた中学校英語のテストは、音声を録音するパソコンなどが不十分などの理由により、「話すこと」の調査が434校で行えませんでした。背景には、自治体によってICT(情報通信技術)環境の整備に大きな格差が開いてしまっていることがあります。
そうした中、政府は2019年度補正予算で、小中学校に1人1台環境を実現する「GIGAスクール構想」を打ち出しました。さらに今回の新型コロナで全国的に臨時休校が続き、オンライン学習で授業を少しでも補う必要性が浮上したことから、2020年度補正で予算額を上積みして、2020年度中に整備を一気に進めることにしたのです。これなら英語はもとより、国語や算数・数学なども、全面的にCBTで行える可能性が出てきます。
全国学力テストの実施を担う国立教育政策研究所の担当者は、このほど発足した専門家会議のワーキンググループ(WG)で、CBT化によって (1)解答→採点→データベース化が合理化・効率化できる (2)解答のログ(データの履歴)を取ることで、答え(結果)だけでなく、どうやって考えたか(思考過程)も「見える化」できる可能性がある (3)新しい類型の問題が出せることで、筆記型では取りにくいデータも得られる……という利点があると報告しました。
検討はまだ始まったばかりですが、新型コロナで、仕事もテレワークで行う時代になりました。GIGA構想が進展すれば、将来的には全国学力テストはもとより、家庭学習から定期テストまで、全部ICTを使って行う時代が来るかもしれません。

(筆者:渡辺敦司)

※全国的な学力調査のCBT化検討ワーキンググループ(第1回)配付資料
https://www.mext.go.jp/kaigisiryo/2020/03/mext_00078.html

※全国的な学力調査(全国学力・学習状況調査等)
https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/gakuryoku-chousa/index.htm

プロフィール

渡辺敦司

渡辺敦司

1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。連載に「『学力』新時代~模索する教育現場から」(時事通信社「内外教育」)など。

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