オンライン学習のICT、家庭に届く?

新型コロナウイルス感染症の影響で臨時休校措置が長引きましたが、ようやく全国的な学校再開となりました。しかし依然として「3密」(密集、密閉、密接)を避けることが求められる他、今後、第2波、第3波が来て、再び休校措置が取られる可能性があることも、想定しておく必要があります。対面の授業を少しでも補うため、一部学校で取り入れられたオンライン学習の環境を、どの学校にも一刻も早く整えなければなりません。家庭への環境整備は、どうなるのでしょうか。

臨時休校中の双方向指導は公立の5%のみ

文部科学省のまとめによると、2020年4月16日現在で、臨時休校中に「同時双方向のオンライン指導を通じた家庭学習」を実施した公立学校は、5%にすぎませんでした。他に「教育委員会が独自に作成した授業動画を活用した家庭学習」は10%、「デジタル教科書やデジタル教材を活用した家庭学習」は29%ありましたが(複数回答)、教科書や紙によるのと同様、多くの地域では、オンライン学習への取り組みを、子ども自身や家庭任せにせざるを得ないのが現状です。
背景には、まず、地域や学校によって、ICT(情報通信技術)の環境整備に格差があったことが挙げられます。都道府県平均でさえ、教育用コンピューター1台当たりの児童生徒数は、1.9人から7.5人の開きがあります(2019年3月現在、文科省調査)。いつでも授業で使いたい時に使えるようにするには、1台当たり3.6人(3クラスに1クラス分程度)に引き上げることが必要ですが、依然として全国平均で5.4人というのが現状です。これでは、家庭への持ち帰り用に機器を貸し出す余裕もありません。
その上、家庭の通信環境にも違いがあります。端末と通信は、セットで整備する必要があるのです。

2割の家庭にルータ貸し出しへ

そこで政府は、2019年度の補正予算以来、「GIGA(ギガ)スクール構想」を打ち出し、国公私立を通じて、小中学校で「1人1台端末」を整備するとともに、高校も含めて高速大容量の通信ネットワークを備えるICT環境整備を、一気に進めることにしました。
とりわけ2020年度第1次補正で注目されるのが、「緊急時における家庭でのオンライン学習環境の整備」(154億円)です。Wi-Fi環境が整っていない小中学生の家庭に、モバイルWi-Fiルータなどを貸し出せるよう、学校への整備を支援することが主な柱です。文科省は、これにより家庭の2割にルータが貸し出せるようになるとしています。
GIGAスクール構想では、端末も、機能を絞ったシンプルで安価なものにするとともに、通信ネットワークもクラウドを活用することで、「全く新しいICT環境」を目指すとしています。
ただし注意しなければならないのは、環境整備を行うのは、あくまで自治体や学校法人など、学校の設置者だということです。たとえば公立学校向けには、現在も年間1,805億円の地方交付税が措置されているのですが、整備状況は先に見た通り、お寒い状況です。
文科省の担当者は、5月11日にウェブ上で行った説明会で「使えるものは何でも使って、できることから取り組んでほしい。今やろうとしないのは、子どもに対する罪だ」と訴えました。非常時にも「学びを止めない」ため、関係者の努力が求められます。

(筆者:渡辺敦司)

※GIGAスクール構想の実現について(文科省ホームページ)
https://www.mext.go.jp/a_menu/other/index_00001.htm

※学校の情報環境整備に関する説明会(2020年5月11日)
https://oetc.jp/ict/511/

プロフィール

渡辺敦司

渡辺敦司

1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。連載に「『学力』新時代~模索する教育現場から」(時事通信社「内外教育」)など。

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