新学習指導要領のSDGsで新型コロナに打ち勝て!

新型コロナウイルス感染症には、1~2年間は対策を続ける必要があるという専門家の指摘もあります。国内も大変ですが、パンデミック(世界的大流行)により、先進国も途上国も困難な状況に置かれています。新型コロナが収まったとしても、いつまた新たな感染症が出てこないとも限りません。

これからの時代を生きる子どもたちが、予測不能な事態に備えるためには、どんな教育が必要なのでしょうか。カギを握るのが、新しい学習指導要領に盛り込まれた「持続可能な社会の創り手」です。

「持続可能な開発目標(SDGs)の担い手」になること

新指導要領は、新たに設けた前文の中に「一人一人の児童が、自分のよさや可能性を認識するとともに、あらゆる他者を価値のある存在として尊重し、多様な人々と協働しながら様々な社会的変化を乗り越え、豊かな人生を切りひらき、持続可能な社会の創り手となることができるようにすることが求められる」と明記。

すべての教育活動に関わる「総則」でも、「豊かな創造性を備え持続可能な社会の創り手となることが期待される児童に、生きる力を育むことを目指す」ために、各教科などで(1)知識・技能(2)思考力・判断力・表現力等(3)学びに向かう力・人間性等……という三つの「資質・能力」をどのように育むのかを明確にするよう求めています。

ここで言う「持続可能な社会の創り手」とは、「持続可能な開発目標(SDGs)の担い手」になることと理解すればよいでしょう。SDGsは2030年までの国際目標ですが、新指導要領も、30年ごろの社会を見据えて改訂されています。
新型コロナで社会の在り方にも揺らぎが隠せない中、SDGsは世界にとっても、これからの時代を担う子どもたちにとっても、不可欠だと言うことができるでしょう。

非政府組織(NGO)の一般社団法人SDGs市民社会ネットワークは、新型コロナに世界各国が緊急対策を打ち立てる際に、SDGsを参照して、
(1)未来世代を含めた「誰一人取り残さない」経済的・社会的包摂のための施策の導入
(2)隔てられた物理的距離をつなぐ連帯と包摂
(3)透明性と公開性を担保し、民主主義と法的手続きを遵守した政策形成と対応……を提言しています。

具体的には、17あるSDGsの目標(ゴール)のうち、 (1)にはゴール1(貧困)と3(健康)、4(教育)、5(ジェンダー)、8(持続的成長と雇用)、10(格差)、11(持続可能な人間居住)、 (2)にはゴール16(参画)と17(パートナーシップ)、(3)にはゴール16(ガバナンス=統治)と、幅広いゴールが関わるとしています。

新指導要領では、「持続可能」という言葉が、前文や総則はもとより、小学校の家庭科や道徳科、中学校の社会科や理科、技術・家庭科などにも明記されています。さらに、主権者教育、法教育、海洋教育、環境教育、防災教育といった「現代的な諸課題」を扱うに際して、教科横断的な教育を行う「カリキュラム・マネジメント」(カリマネ)を勧めており、これらの中にも「持続可能」が入っています。

新型コロナのような世界的な感染症に立ち向かい、どの国の人々とも協力して持続可能な開発を続けていくには、SDGsの視点が欠かせません。教育は17のゴールのうちの一つですが、他のゴールすべてに関わるものとも位置付けられています。ぜひ早期に学校の教育活動を正常に戻し、SDGsの視点に立った教育活動を展開してほしいものです。

(筆者:渡辺敦司)

※新学習指導要領
https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/new-cs/1384661.htm

※SDGs市民社会ネットワーク
https://www.sdgs-japan.net/

プロフィール


渡辺敦司

著書:学習指導要領「次期改訂」をどうする —検証 教育課程改革—


1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。初等中等教育を中心に、教育行財政・教育実践の両面から幅広く取材・執筆を続けている。

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