小中高の教育ビッグデータ、どう活用する?

政府は、全国の学校を高速大容量の通信ネットワークで結び、小中学校などには1人1台の端末を整備する「GIGA(ギガ)スクール構想」を進めています。これに伴って期待されるのが、教育ビッグデータの活用です。既に医療分野では、個人情報が匿名化されたビッグデータの活用計画が先行しています。教育分野では、何が期待されるのでしょうか。

保護者にも進路指導のメリット

日本学術会議は、早稲田大学で「第2回ラーニングアナリティクスによるエビデンスに基づく教育に関するシンポジウム」を開催しました。本来は公開で行われるはずでしたが、新型コロナウイルスの感染拡大を考慮してライブ動画配信となりました。

ラーニングアナリティクス(LA、学習分析)とは、教育や学習に関わるデータを集めて分析し、教育や学習に役立てようという研究分野です。大学で先行しており、退学リスクの高い学生を高確率で予測することも可能になっているといいます。中でも先進的な取り組みを行っている九州大学では、2013年4月の新入生からBYOD(私物端末の利用)方式によるパソコンの必携化をスタートさせ、16年にはLAセンターを設置して、大学全体で学習履歴データ(学習ログ)の利活用に取り組んでいます。

学術会議は2018年から、「教育データ利活用分科会」を設置。教育・学習関連データの収集や利活用に関する現状把握と、問題点や役割の整理を行うことにしています。

シンポジウムで京都大学の緒方広明教授は、国全体でデータを集めることで▽最適な学習方法や教材の推薦(学習者)▽データに基づく進路指導(保護者)▽データに基づくカリキュラムの最適化(教育機関)▽教育に関する諸問題を、エビデンス(客観的な証拠)を基に議論できる(市民)……などのメリットがあると説明しました。

予測困難な時代に対応した学校へ

GIGAスクール構想は、学校単独の整備にとどまりません。大学など研究機関向けの学術情報ネットワーク「SINET(サイネット)」と結ぶことで、小、中、高校などが高速大容量通信を活用できるだけでなく、学校現場の教育情報を大学が活用し、新たな知見を得て現場に返す、という好循環が期待できます。

経済産業省は「未来の教室」と銘打って、教育(Education)と技術(Technology)を融合させたEdTech(エドテック)の実証事業を行っています。同省サービス政策課の柴田寛文課長補佐(教育産業室室長補佐)は、次世代人材のキーワードとして▽知識を活用し自分で考える▽失敗を恐れずに挑戦▽倫理観、芸術観▽情報を正確に読み解く▽数学・統計・生命科学等の基礎知識……などを挙げ、2020年を「GIGAスクール元年」とすることで学びの自立化と個別最適化を実現するよう訴えました。

文部科学省の桐生崇・学びの先端技術活用推進室長も、「VUCA(ブーカ)」(変動性、不確実性、複雑性、曖昧性)と呼ばれる予測困難な世界を迎えるに当たって、1人1台の端末整備とデータ利活用によって教育を充実させる意義を強調しました。

新型コロナウイルスの感染防止に伴う全国一斉休校措置で、ICTを活用したオンラインでの学習・生活支援や「学活」に取り組んでいる先進例もあります。この機会にICT環境を一気に整備するとともに、官民学を挙げたデータの利活用によって教育を充実することが求められます。

(筆者:渡辺敦司)

※日本学術会議「第2回ラーニングアナリティクスによるエビデンスに基づく教育に関するシンポジウム」(2020年3月15日)開催報告
http://eds.let.media.kyoto-u.ac.jp/?p=2968

プロフィール

渡辺敦司

渡辺敦司

1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。連載に「『学力』新時代~模索する教育現場から」(時事通信社「内外教育」)など。

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