高校から大学までの教育費は平均939万円

新学期は子どもにとって希望にあふれる時期ですが、保護者にとっては何かとお金の掛かる頭の痛い時期かもしれません。高校入学から大学卒業まで、今どきの教育費は、どれくらい掛かるのでしょうか。

私大の理系なら1,070万円

「国の教育ローン」を取り扱う政府系金融機関の日本政策金融公庫は、毎年「教育費負担の実態調査結果」をまとめています。2019年度の調査(各都道府県100人、計4,700人の回答を基に統計処理)では、世帯の平均年収は863万9,000円となっており、前年度より約50万円増えています。ただし、国の教育ローンを利用したことのある世帯に限ると644万5,000円で、5万円余りの増にすぎません。

さて、子ども1人当たりの入学費用(入学しなかった学校への納付金も含む)は、高校が30万3,000円、大学が82万8,000円などとなっています。大学を詳しく見ると、国公立71万4,000円、私立文系86万6,000円、私立理系84万5,000円です。一方、その後の1年間の在学費用は、高校72万8,000円、大学151万9,000円などでした。

これを累積すると、高校入学から大学卒業までに計939万1,000円掛かることになります。前年度より14万3,000円少なくなっていますが、それでも7年間で900万円を超える教育費支出を想定しておかなければなりません。ちなみに大学の進学先が国公立の場合は748万1,000円ですが、私立文系は965万7,000円、私立理系は1,070万4,000円。もちろん学部によって違いますが、1,000万円前後の支出は覚悟しなくてはならないようです。

自宅外に子どもを進学させる場合は、さらに大変です。自宅外通学を始めるための費用(アパートの敷金や家財道具の購入費など)は、入学者1人当たり39万1,000円となっています。

低所得世帯の負担重く

気になる結果もあります。世帯年収に占める在学費用(子ども全員分)の負担割合は、全体の平均で16.3%と、前年度より0.6ポイント上昇しました。年収別に見ると、これまで低減傾向にあった「200万円以上400万円未満」世帯の負担割合が、前年度の32.1%から、今回は37.5%に跳ね上がりました。

貧困世帯に育った子どもが大人になっても貧困から抜け出せない「貧困の連鎖」から抜け出すには、質の高い教育を受けることが有効だと言われています。しかし今回の結果を見ると、低所得世帯では逆に負担が重くなった、というわけです。

教育費の捻出方法を三つまで挙げてもらったところ、子ども本人がアルバイトをしているという回答が22.9%と、増大傾向にあります。アルバイトが学生生活の充実のためというより、もはや教育費の確保策として当てにされている、ということでしょう。「奨学金を受けている」という回答が減っているのも、卒業後の返済にしり込みして利用を手控えているのだとしたら心配です。

高校の授業料は私立も年収目安が約590万円未満世帯で実質無償化され、大学などの高等教育機関も「真に支援が必要な低所得者世帯の者」(文部科学省資料)に対して2020年度から授業料減免と給付型奨学金支給を合わせた措置が始まるなど、支援策の充実が図られています。しかし調査結果を見ると、まだまだ手厚い支援策が求められそうです。

(筆者:渡辺敦司)

※日本政策金融公庫 教育費に関する調査結果
https://www.jfc.go.jp/n/findings/kyoiku_kekka_m_index.html

※大学・大学院、専門教育 奨学金事業の充実(文部科学省ホームページ)
https://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/shougakukin/main.htm

プロフィール


渡辺敦司

著書:学習指導要領「次期改訂」をどうする —検証 教育課程改革—


1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。初等中等教育を中心に、教育行財政・教育実践の両面から幅広く取材・執筆を続けている。

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